2017.10.15 秋といえば…
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なんでしょう……?
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ハロウイン限定妄想バンド 『ペッポン♡コア☆キャンデイ&ハッピー・ナイトメア・オブスキュア』でーす!
モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ
11話 「海水浴大作戦 夏だ! 海だ! 時限爆弾だ!」

「♪渚に立てば聞こえてくる~ それは大きな海の言葉~」

運転席の平川が歌う調子外れな歌ではあったが、つられるように普段は大人しい紀緒彦、留依子、真樹太らが合唱に加わった。
神名川県葉山にある黒荊家の別荘へ向かう道中、まさにそのタイミングでようやくお待ちかねの海が見えてきた。
「うっひょー!」
「わー!」
「海だ! 海だー!」
「きゃー! きゃー! 海っ! 海―!」
林檎子を除く皆のテンションは夏の高気圧の上昇気流のごとくいっきにオーバーハイになった。
車から流れる背景も海沿いのそれっぽくなり、広い海と高い空が果てしなく遠くにまで開けていった。
「林檎子、海だよ。亡魂帝国の海は初めてだよね」
紀緒彦が林檎子に語りかけた。
「ああ、そうね……」
林檎子は気怠そうに言葉を返しただけだった。
今日の今、このヴァカンスに参加したことを少し後悔していた林檎子は、ただただ眠そうに海岸通りの棕櫚の並木を見送っていた。
事実、昨日は寝ずにいたのですこぶる眠かった。
その林檎子が大切そうに抱えている夏向きの麦わら帽子。そのワンポイントの向日葵のアクセサリーには、林檎子が徹夜で作ったとある装置が仕込まれていた。
とある装置、それは小型の時限爆弾であった。これは今回の林檎子が計画した極秘の作戦に欠かせないものであった。

作戦名 「紀緒彦お兄様とチュウする作戦 オン ザ ビーチ」

作戦内容 ①海水浴場で紀緒彦お兄様とボートに乗る
     ②あらかじめボートに小型の時限爆弾をセットしておく
     ③海上でボート爆破、紀緒彦お兄様は泳げないので溺れる
     ④アタシこと林檎子は水泳はわりと得意、溺れた紀緒彦お兄様を岸まで救助する
     ⑤浜辺で人口呼吸(医者として当然のこと)、一命を救ってチュウ完了(キャッ!)

翌日冷静に考えると、死にたくなるほどアホらし恥ずかしく、我ながらどうかしてるとしか思えなかった。
その実、最近林檎子は、紀緒彦のことと悪夢の林檎子(ダーク)とが悩みの種のダブルスタンバイとなり、割とマジにどうかしていたのかもしれない。

海鳥が鳴く小高い岬の上に黒荊家が所持する無駄に広い敷地の別荘があった。
母屋は南欧風の白壁の館で、音羽ケ谷の荘厳なお屋敷とは違い、海へと続くテラスがあったりで、解放感溢れるリゾートに相応しい造りであった。
先に到着していたコック長の富岡田が冷たい飲み物をもってみんなを出迎えた。
見た目アイスコーヒーだったその飲み物は麦茶で、西洋暮らしの長い林檎子はそれを違和感といっしょに飲み込んだ。
この後即水着に着替えて海へ泳ぎにいく流れとなった。
部屋で留依子に手渡された水着を見たとき、あまりの可愛いらしい柄すぎて、これを着るかと思うと林檎子は思わずその場で気絶しそうになった。
と同時にこれをチョイスした留依子に殺意すら覚えた。
気力を振り絞り、なんとか気合いでその可愛いい水着を装着した。
「林檎子お嬢様! とても可愛いーです!」
「(はあーっ……)」
ヘンクツな林檎子は他人から「可愛い」といわれるのが何故か苦痛に感じた。
でも心のどこかで紀緒彦だけには「可愛い」と嘘でも言われてみたい気持ちもあるにはあった。
テラスに繋がる階段を下り浜辺へ出てみると、強烈な太陽に焼かれた砂に夏の本気を思い知らされた。

浜辺には愛しの兄紀緒彦と童貞とチャラいおっさんが待っていた。
他の海水浴客は誰もいない。そこは黒荊家のプライベートビーチであった。
水着の林檎子は男どもの視線が痛い様なくすぐったい様な感じであった。
意識すると留依子が水着になると豊満で隣に並ぶのが何かヤだった。
紀緒彦は自分と留依子のどちらをどんな目で見ているのだろう? なんて確かめることは少し恐ろしくてできなかった。

みんな一斉に海に駈けだした。
シャパ! シャパ! シャパーーーン!!
「わー!」
「きゃー!」
「うひゃひゃひゃはひゃ! 冷たい、冷たい」

「ドッザブーーーーーーーン!」

とそこに突然大きな波がきて、みんな頭から海水をかぶり、波打ち際にしばし身を縮めた。
鼻と耳に海水がしこたま入った林檎子はいつもの不敵な笑顔は消え、憮然とした顔で陸に上がってきたが、それはそれで悪い気分ではなかった。

しばらくみんなフリーで夏の海を満喫した。
留依子と真樹太はご主人様そっちのけで、お互い波をかけ合ったり、浮き輪で沖にでたりで全力で正しい海水浴をエンジョイしていた。
平川は顔以外の全身を砂に埋め昼寝としゃれこんでいた。お約束のカニが平川の鼻を狙っていたのには気付かなかった。
富岡田は浜辺に出店を作り、焼きそばや焼きトウモロコシ、ラムネやカキ氷などを制限なしの食べ放題飲み放題で提供した。
林檎子は一人で黙々と波うち際に砂の城(ナバロンの要塞)を作っていた。
紀緒彦はビーチパラソルの中でここにきて詩集や兵法の書などを読みだし始めた。

林檎子の砂の城は緻密で塹壕や砲塔や火薬庫や指揮官用の居住区なども実に合理的にレイアウトされ作られていた。
同時に頭の中では例の計画「紀緒彦お兄様とチュウする作戦~」をさてどうしたものかとダブルタスクで思案していたりもした。
当該の時限爆弾の麦わら帽子ををかぶったまま……。
そして砂の城は超時空要塞ばりに巨大になっていった。

立派なシンデレラ城だね。
いつの間にか紀緒彦が近づいてきて砂の城を拵えるのを手伝っていた。
林檎子は無言であった。心臓の鼓動の高鳴りが彼女の言葉を奪っていたからだ。

そのとき強い風が吹いた。

林檎子の麦わら帽子が飛ばされた。

紀緒彦はすぐさま捕まえようとしたが、その手をすり抜けた麦わら帽子は空高く舞い上がりひらひらと海の沖まで飛んで行った。

林檎子は目を丸くし大切なものを失くしたといった少し寂し気な表情になった。
それを察した紀緒彦は、
「ボートがあるから、追いかけよう」
「む無理よ!」
「いこう、大丈夫だよ!」
「……」
林檎子の手を引いて紀緒彦は駆け出した。
「いいってば! 別に……」
林檎子も口ではそういってみたが、その実少し嬉しかった」

紀緒彦は林檎子と二人でボートに乗り込むと、勢いよく海原へ漕ぎ出した。
ボートは意外と速度が出て、浮き輪から手を振る留依子と真樹太がすでに遠くに流れていくかに見えた。
ことのほか林檎子の麦わら帽子は早い段階で発見された。
紀緒彦はそれを拾い上げると林檎子へ渡した。
林檎子は半ばあきらめていた(例の計画も含め)ため、あまり感謝も喜びもないまま「ありがとう」とぼそりと小声でいった。
ずぶ濡れの帽子を乾かすため林檎子はそれを船尾のロープに括り付けた。
辺りを見渡すと随分沖へ来ていた。砂浜が波間の遥か先のまた先にあった。
しかも岬の反対側に来てしまったようで目印となる別荘も見当たらなくなってしまった。
紀緒彦はボートを漕ぐのを止め、彼方の陸地を眺めながら何やら思案していた。帰りの方向を検討しているのであろう。
林檎子は逆にどこまでも続く海原の先の水平線を眺めていた。何も考えず、何もかも忘れてしまいたかったかのように……。

広い海の上を小舟で漂う二人。
今、林檎子の眼にあるのものは太陽、波の光、紀緒彦、のみであった。

長いのか短いのかわからない二人っきりの時間が無言のまま過ぎた。
先ほどまでドキドキしてしょうがなかった胸が今はとても落ち着いていた。
絶対似合わないと思っていた水着もとうに紀緒彦の前でさえ気にならなくなっていた。
ふと紀緒彦の顔を覗いて見た。
「……ん?」
紀緒彦はいつもの笑顔でいた。
「べ、別に……」
林檎子はいつもの通りの対応をした。

そして林檎子はもう一度夏の凄まじい光熱に揺らめく水平線を一望し、
やがて眩しそうに眼を閉じ紀緒彦の方に姿勢を正すと、

「紀緒彦お兄様、キスしてくださらない?」

と自然かつ穏やかな口調でそう言えた。
平素の林檎子なら信じられない台詞であったが、このときはまるで当たり前のように言えてしまった。
紀緒彦は一瞬驚いたような目をしたが、すぐににっこり微笑むと、

「ああ」

と頷いた。

多分、紀緒彦は林檎子からのキスの理由を、よく欧米人が身内にするコミュニケーションと捉えていたのであろう。
林檎子としては結果オーライであった。

ゆっくり紀緒彦の顔が接近してきた。一度林檎子は指で紀緒彦の鼻先を押し返すと、すくっとボートの上に立ち上がった。
紀緒彦も不安定そうにボートに立ち上がると、林檎子はキスを待つ顎の角度を紀緒彦に合わせた。

「―― tyu」

その1秒に満たない触れるか触れないかの僅かな瞬間のキス(チュウ)は今後の林檎子の人生で忘れられない秘密の思い出となった。
この後、林檎子に訪れる人生の苦難や困難も今日この日の紀緒彦とのキス(チュウ)の思い出があればそれだけで乗り越えていける気がした。
この思い出を胸に前向きに生きていけるし、もはやこの思い出だけで林檎子の人生は空虚なものでは無いことが決まったかのようであった。
「アタシはたった今生まれ変わりました。紀緒彦お兄様のことはこれで忘れます。鬼畜にもなりません。これからは私と関わるすべてのみんなと仲良く日々を大切に生きていきます。ツンデレでサイコパスなアタシにさようなら。平凡で平穏なアタシの人生よこんにちは……」
……のあと、二人の兄妹が眩しさを堪えて見上げた高い雲の果てはどこまでもどこまでも続いていたが、今の二人が頑張って背伸びをすればなんだか届きそうにも思えるのであった。
(完)





とモモコ2nd ダブルピンチスタンバイのお話はこんな平和な結末のまま終わりにしたいところです。作者の願望のパラレルワールドとしてはここで最終回もアリなのですが、私の一存でそうもいかないのです(涙)。
こればっかりは作者としても制御不能の不確定理論なのです。なので本来のストーリーをお送りしなければなりません。話は少し戻って。林檎子と紀緒彦がチュウする直前。

ゆっくり紀緒彦の顔が接近してきた。一度林檎子は指で紀緒彦の鼻先を押し返すと、すくっとボートの上に立ち上がった。
紀緒彦も不安定そうにボートに立ち上がると、林檎子はキスを待つ顎の角度を紀緒彦に合わせた。

「ボカーー―ン!!」

突如ボートの後ろ半分が粉微塵に吹き飛んだ。そう、麦わら帽子の小型時限爆弾がジャストタイムで仕事をしたのだ。
爆風で林檎子と紀緒彦は吹きとばされ、海中に投げ出された。
「ゴボボボボ。。。」
ここで林檎子も当初の計画のスイッチが入り、まずは泳げない紀緒彦を背後から裸締めで失神KOに、そして全速力で紀緒彦を抱え陸まで泳ぎきる。

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、……お兄様しっかり! お兄様!」
陸に揚げた紀緒彦は意識もなく呼吸をしているようには感じられなかった。
蘇生するには人口呼吸が必須であった。まさに林檎子の計画通りとなった。
林檎子は紀緒彦の寝顔に内心「紀緒彦お兄様いただきます」と目を輝かせながら。
まずは心臓マッサージをし、気道を確保、いざマウストゥマウスの人口呼吸をするため紀緒彦の口に自分の口をもっていこうとする林檎子であった、が。
「…………」
できないのである。なぜかできないのだ。紀緒彦の顔を目の前に、ただ林檎子は固まってしまうばかりであった。
下心としてのチュウはともかく、医者として、身内の妹として、人間として、それをしなければ命に関わる重大な場面であるのに。
「…………。(できない、何故、なんでチュウできないのアタシ?)」
先ほどは本人に直接キスの要求までできたくせにである。
時間がない……。
「…………、んむむむ!」
唇を無理やりチュウの形にするが、紀緒彦の唇に重ねることが寸前でできない。

とそのとき、
「うっ、ゴホ、ゴホ、ゼー、ハー、ハー」
紀緒彦は自力で蘇生し呼吸を再開した。
「……ほっ」
林檎子は安堵したやら、ガッカリしたやらで複雑な気持ちになった。
同時に「紀緒彦お兄様とチュウする作戦~」はチュウ止となった。

「林檎子ありがとう、君は命の恩人だ」
「べ、別に……、私は何も……」
汽車の窓越しに紀緒彦が選別のお菓子とともに手を握ってくれた。
時刻は夕方、仕事上林檎子はその日の夜行列車で関西は神戸に向かうことになっており、みんなで横濱駅まで彼女を見送りにきていたところだ。
「ジリリリリリー」ベルが鳴り汽車がゆっくり動き出した。
「いってらっしゃいませ、林檎子お嬢様ー!」
と両手に旗や「林檎子お嬢様万歳」との横断幕をもってまるで出征兵士のように平川や富岡田、留依子、真樹太らが大げさにたかが2泊3日の出張の林檎子を送り出した。
林檎子はそれらには一切目もくれず、しばしのお別れである紀緒彦の目を見えなくなるまで直視していた。

しばらく汽車は海岸線を走った。心地よい夜風が睡魔を誘った。

「パーン! パーン! パパパー――ン」

するとどこからともなく打ち上げ花火の音が聞こえ、七色の光が車窓に明滅した。
普段はまったくをもって関心もない花火であったが、この日に限り林檎子は夢見心地でしばらく見惚れていた。
「パーン! パーン! パパパー――ン、パーン! パーン! パパパー―――――ン!!」
次第に花火の音と光が大きくなっていった。まるで汽車が空中を走り、花火の間をすり抜けているかのようであった。

「幸せそうね? 何かいいことでもあった?」
「……!」
いつのまにか向かいの座席にもう一人の自分がいた。
しかしどういう訳か今日は比較的嫌な気はしなかった。

「もしかして、紀緒彦お兄様とチュウでもしたとか?」
「……、どうかしらね。うふ」
「えっ、何よその反応、まさか本当にチュウしちゃったとか! 嘘っー! いやいやいや、それはあり得ないわ! ないない! だってアナタは……」
「アナタは何?」
「アナタは……、本当は……、アナタの本当の願望は……」
「アタシの本当の願望? って何よ?」
「アナタの本当の願望は……、チュウではなく、……紀緒彦の死じゃないの?」

とだけ言い残しもう一人の自分の姿が消えた。
同時に辺りがいきなり水を打ったかのように静まり返った。

いつの間にか外の花火は終了したかのように沈黙し、真っ暗闇の世界のみが夜汽車の車両を包んだ。
――光も音もない深淵の闇。
この闇は果てしなく続く、それはまるで出口のないトンネルのような気がしてきた。

「そうかもしれない……」

と言い残し林檎子は心地よい孤独に身を委ね、そして暗闇と同化していく不穏な平穏からも目を閉じた。

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チュウ♡未遂のまま試合終了! 林檎子の短い夏が終わる…
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名前、年齢---モッコス・よかっぺ(28)
ニックネーム-リアルオッサン
身長、体重---162cm/72kg 
BWH----------88/90/92cm
血液型-------O型
所属---------亡魂女子プロレス・正規軍
得意技-------性的嫌がらせ、放屁
出身地-------香川県
スタイル-----不明
人物---------肥後モッコス(熊本)と、よかっぺ(茨城)をミックスさせた
リングネームだが、出身はいずれの県でもなく、まったく別の四国の香川県。
得意技のセクハラはコミカル系のネタなのか本気なのかよく分からない。
また本当に女子なのかオッサンなのかも、よく分からなくなってきている。
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野望計画表の仲田 静 様よりイラストを描いて頂きました。
亡魂☆サナトリュームをキャラデザした素敵な一枚です。
軍服といい、額の星印(帽子でないところが)といい、指のポーズの悩ましさといい。
なんとも怪しい女の子。……こういうのとてもツボです。
以前より仲田様のセンスはスゲーなと思うとりました。
今回の一枚はもう「わああーーーい、嬉しいよおおう!!」の一語です。
仲田 静 様本当にありがとうございました。(天)