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いろいろなニャンを描いてみたい衝動
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10月9日大阪大会のファイナルは『神崎 嶺』と『夕月鶴子』のビッグカードが組まれた。現在人気実力No.1と呼び声高い神崎と、社長『上原五十鈴』の片腕でベテラン実力派の夕月鶴子は実力伯仲でイイ勝負が期待された。スピードと打撃が得意の神崎と寝技の頭脳派テクニシャンの夕月は性格もスタイルも対照的で、打撃戦になれば神崎、グランドに持ち込めば夕月が勝利すると考えられた。上原の持つWWWBのベルトを狙う神崎は、そのステップとなるこの夕月戦を制し、女王上原に挑戦状を叩きつけたいところ。しかし神崎は先ほどの第三試合「新宮&葛西&キャットVS.ヘルファイア&レクイエム&ムザン」戦に乱入し、ヘルファイアと場外乱闘を繰り広げた際、右手の中指と薬指の関節にダメージを負ってしまった。本人の責任といえば責任なのだが、予期せぬハンディを負ってしまった。そして選手入場。先ずはクラブ系のハイテンションミュージックで神崎入場、続いて和楽器アレンジのイマドキ演歌風テーマ曲で夕月もリングイン。試合前、今回ばかりは真剣で神妙な神崎と、沈着冷静ながらも憎らし気に神崎を凝視する夕月との間の張り詰めた空気に客席の期待と緊張感は否が応にも高まった。また神崎のセコンドについた『日向明美』も今回は対戦者に下品な挑発もせず、大人しく固唾を飲んで見守っている。「夕月!」、「神崎ー!」、「夕月さーん!」、「嶺サマー!」両ファンの絶叫と嬌声の大声援が場内にこだました。――カーン! ゴングと共に試合開始。少しずつ距離を詰める両者。腕を構えたまましばらく二人の間合いの取り合いが続く。時折けん制で掌底、ロー、ミドルキックを放つ神崎。低い体勢であくまでもタックルを狙う夕月。試合は初戦から膠着し、なかなか大きくは動かなかった。キリキリと張り詰めた空気だけが時間を支配した。そして試合開始10分経過、神崎の囮の大振りな右のハイキックが空を切った。冷静にかわした夕月に間髪入れず、神崎の左ミドルキックが放たれるが、これを本命と読んだ夕月はミドルをギリギリでかわすと、神崎の脚が戻る極一瞬の隙を突いてタックルを強攻。しかしこれが正に神崎の罠で、即右膝をタックルにきた夕月の顔面にブチかます、という作戦であったが、何故か神崎ほんの瞬間で気が変わり、夕月の頭を脇に抱えフロントチョークスリーパーに持っていく。そしてのまま夕月のテイクダウンに身を任せ、両者グランドへ。神崎は仕掛けたフロントチョークで攻めにいく。「おおおおおおおー」観客は一気に沸いた。「嶺サン、なんで寝技にいくかな~」と日向がリング下であちゃーという顔に。倒れながらのフロントチョークは今だ完全ではなく、冷静な判断とテクニックで夕月、ここは手堅くエスケープ。そしてくんずほぐれつの神崎と夕月の激しいグランドの攻防が始まった。スピーディでアクティブな上下前後左右のポジション、五体の取り合いが展開された。だが最後は経験値で上まわる夕月が手数で優位に。苦しそうにエスケープし続ける神崎のコスチュームの腹部の格子状のベルトを強引に掴んでバランスを崩すと同時に相手の右腕を完全に抱え込み、瞬時に腕ひしぎ逆十字を極めた夕月。「うわあーーーーっ!」観客は大盛り上がり。「ヤバイ、ヤバイ!」と日向は騒然。「ぐはあん!」さしもの神崎も激痛に呻き声をあげる。並みの選手なら夕月の関節技に5秒ともたないであろう。さらに腕を締め上げ「ギブアップ」を要求する夕月。神崎は極限の痛みにも屈せず尚もギブアップ拒否。神崎もがきにもがくもロープまでは逃げられない距離。神崎の右腕が悲鳴を上げ激痛に目が眩む。「ギブアップしなければ、このまま腕を折りますよ!」と凄む夕月。「折ってみろよ! この陰湿年増っ!」と気合いで負けない神崎。ここで夕月キレて本当に神崎の腕を折りそうになるも冷静に我慢で大人の対応。一度アームロックを外し、すばやく体勢を変え、背後から両腕を神崎の首筋にまわし交差。今度は絞め技のチョークスリーパに移行。いつもは不敵な神崎の表情に終始苦悶と焦燥の色が浮かぶ。技から逃げようと激しく身悶えする神崎の内腿に両足を絡め夕月は完全にチョークスリーパの形態に。「うおおおおおお!」観客またも大盛り上がり。「…………っ」日向ここで言葉を失う。時間が止まったかのように重なりあったニ人の動きが停止する。レフリーが盛んに神崎の手を取り彼女の意識を確認する。神崎の瞳が恍惚の光を宿す。――神崎が目を覚ますと日向明美の涙ぐんだ笑顔があった。あたりは大歓声の余韻に包まれていた。勝者の夕月があふれる祝福と喝采を浴びていた。そして大成功に終わった大阪大会のフィナーレが始まろうと、選手や関係者がリングに集まりだした。神崎「アケ……、一応聞くけど、勝負はどうなった。この空気からして私は負けたってことか?」 日向「ぶっちゃけこの試合、嶺サンの負けっス、スリーパで落とされてそのまま……」「そうか、私は負けたのか、自覚すらないなんてザマアねーな……」「でも、でも嶺サン超カッコよかったっス!」「……そうか、私カッコよかったか! ならばよしとするか……。WWWBのベルトは少し遠のいたけどな」「また挑戦すればいいんじゃないスか、次は絶対勝ちますって!」「ありがとな、アケ、じゃっ、このまま飲みに行くか、タクシーで六本木へ」「了解ッス! あっ、でも嶺さん、ここ大阪なんすスけど……」「……そうか」 神崎&日向「キャハハハハハ……!」 かくして波乱の大阪大会は終了した。 
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名前、年齢---ヘルファイア業火(37)
ニックネーム-暴虐の煉獄女王
身長、体重---169cm/108kg 
BWH----------96/122/115cm
血液型-------B型
所属---------フリー・煉獄党
得意技-------メギド・デストロイ・バーン、エルボードロップ、煉獄突き
出身地-------群馬県
スタイル-----プロレス(ラフファイト)
人物---------フリーのヒールユニット『煉獄党』のヘッドにしてヒールのトップに君臨する。
煉獄党の仲間に『レクイエム小野田』、『ダークブレイド・ムザン(結城明日香)』らがいる。
性格は凶暴で戦闘的。日ごろから血と火が見るのが大好きと周囲に語る。趣味はBBQ。
モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ
8話 「留依子と真樹太と筋肉隆々兄貴ーズ」

――堀部留依子

「おはようございます! 林檎子お嬢様! 本日のお召し物はいかがなさいますか?」

服ぐらい自分で脱ぐし、着もすると何度言っても彼女は分かってくれない。
貴族の慣習とはいえ、林檎子はどうしてもコレには慣れなかった。
しかも朝昼晩と一日3回も4回も着替えをさせられる。
しかもこのところ留依子がまるでおせっかいな嫁、あるいは着せ替え人形で遊ぶ女児のように変な熱を帯びて意欲的、献身的に林檎子の着替えをエスコートしてくるのであった。
おまけに父才蔵がお金に糸目をかけずに林檎子の服を留依子に一任し調達させるので、日を追うごとに洋服やアクセサリーが倍増していった。
おかげでクローゼットにはまだ袖も通してない服が溢れ返り、今にも内部破裂するかと思えるほどである。
これを次々に着させられるかと思うと林檎子は眩暈を覚え、なるほど京都の着倒れの「着倒れ」なんて言葉の意味が想像できるような気がした。
そこで林檎子はいつもより増して素っ気なく答えた。
「今日は外で身体を動かしたいから、動きやすい服がいいわ……」
「かしこまりました林檎お嬢様! でしたら、こちらをこうして、こちらをああして、こちらをあしらえてもいいかもしれませんね!」
「ふう……、ああそう、まかせるわ」

林檎子は着替と朝の支度を完了し、朝食を済ませると、時間を見計って正門の庭へと出歩いた。
その後を留依子がちょこんと追ってきた。
すると大きなトラックが屋敷前に停車していた。
黒煙とエンジン音を辺りに垂れ流し、その荷台から小屋ほどもある大きなコンテナがクレーンで吊り降ろされていた。
林檎子は「来た、来た!」と事前に分かってたかのようにニヤニヤしながら近寄ると、家令の野上や家政婦長の岩木ら使用人の長らを初めとする多くの召使やメイドらがこの積荷を訝し気に見物していた。
ズシーンとコンテナが地面に降着した。
人だかりを掻き分けそのまん前に立ち止まった林檎子が「パチン!」と指を鳴らすと、

バキ! ドガ! グシャーン!

とその木製のハコの中から、壁を強く打撃するような大きな衝撃音が響いてきた。
どうやら中に何者かが入っていて内側からコンテナを破壊しているのであろう。
その直後、コンテナの側面や上面の壁の木片が吹き飛び、中にいた者の手足がにゅうと突き出てきた。
「イヤーエアアー!!」
と叫び声とともに数人の半裸の男性、それも異国の人種、かてて加えて全員かなりの背丈と体格の良い男の一団がわらわらと顔を出してきた。
「ひゃあああ!」
「うおう、何と!」
「お嬢様! こ、これは一体?」
と周りの使用人が一斉にわめき立てた。
驚いた留依子はきょとんとしたままその場に固まってしまった。

「ああ、これね。これはアタシが某国よりお取り寄せた私専属の下僕よ。奴婢、サーバント、悪の組織の下っ端戦闘員といったところね」
林檎子の説明に岩木が反論し、その岩木を野上が加担した。
た。
「お嬢様! 下僕とおっしゃいますと、使用人のことでございますか? しかし当家の使用人の採用はすべて大奥様の許可がいるのがしきたりです。いくらお嬢様でも大奥様の許可もなしにそのようなご勝手は……。第一にお嬢様の召使でしたら、女性のメイドでないといろいろ不都合がおありかと……。見たところ逞しい殿方ばかりではございませんか? でしたら大奥様にお取次ぎするまでもなくこの場で早々にお引き取り願うしか……」
「フムフム、確かに、確かに、、岩木女史の仰せの通り……、如何せん男のメイドというのは前例がないですからなあ、今回のところはご縁が無かったということで!」
ここで彼ら、林檎子お取り寄せの下僕の輩(兄貴)たちは、何故かニっと笑い各々がボデイビルダーのようなポーズでそのムキムキな筋肉をアピールしだした。
使用人たちは訳もわからず皆困惑ムードとなった。
林檎子は林檎子で面倒くさくなってきたとみえ、
「わかった、わかったから、三輪子お母様にはアタシから説明しておくとして、何だっけ、その前に女性のメイドならいいのかしら。では、彼らには下僕改め女性のメイドになってもらおうかしら。……いいかお前ら、今すぐ女になれ、生物学的にだ! わかるな! さすれば今すぐもいで来い! そう物理学的にだ!」

「(もいで来い???)……ハッ!?」

と気づいた輩たちが手で股間を抑えると、ひどく狼狽し始めた。*1これが後の『筋肉隆々メイド隊』(モモコ一期参照)の前身である。
他の使用人らはもはや訳が分からずあっけにとられていた。
そして林檎子は先ほどから随分不安げな目をしていた留依子のほうに振り向くと、
「あ、そうだ留依子!」
「は、はいっ……」
「というわけでアナタは今をもって用なしよ。つまりクビだから、とっととアタシの前から消え失せてちょうだい! ……まっ、とはいえアナタには何かとお世話になったわけだし、相応の手切れ金なら用意してやるわ。それを元手に銀挫にでもアナタの大好きな洋服屋でも開いて、少しは夢のある人生を好き勝手に歩むっていうのも悪くないんじゃないかしらん」

「……、ひ、ひえええええええええええええええん!!」

それまで熱い眼差しで林檎子を凝視していた留依子であったが、その両の瞳を涙でいっぱいにし、その華奢な外見に似合わず凄烈な大泣きの叫喚をブチまけた。

「な、何故泣く! 悪い話じゃないだろ……! お金は十ニ分にやると約束する。銀挫に洋服屋どころか百貨店がおっ立つたつほどくれてやろうと思ってたんだけど……」

「ひ、ひ、ひえ、ひええん、えん…、えん、ぐっ、ぐわ、私は、お嬢様にお仕えするのが……、一番の幸せで、ぐ、……い、一番の生き甲斐なのです。ぐ、ごお、お、お金なんてこれっぽっちもいらないのです!! 私は、私は、ただお嬢様のお側で……。いつまでも……、お嬢様と、ひえええええええええええええええん!!」

酷薄クールな林檎子もこの時ばかりは、この意外な留依子の激情ともいえる号泣に圧倒され、ついには「あわわ」とたじろいでしまった。
次第に留依子の哭き声は激しくなり、この世の終わりかと思えるほどの悲痛さを纏い、不思議と林檎子の胸(薄い)に深々と突き刺ささってくるのであった。
場にいた他の者たちはどうしたものかと、耳を塞ぎ関係ないふりでこの事態を見守るしかなかった。
ついに林檎子も耳を押さえながら、いよいよ限界で、ここは留依子に服するより選択の余地はないと判断した。

「あ、わ、わっ、わ、わかった、わかった……! わかったから! 今の言葉はナシ! ナっシよ! 撤回、廃案、取り消そう! 留依子はこれからもアタシの専属メイドとして仕えておくれよ! お願いよ……、ね! いやマジで……、いいわね! 留依子っ!」

すると、その瞬間。

「……、ハイ、林檎子お嬢様! (にこにこ)」

「……!?」ズルッ(林檎子コケる)

感情が一変した留依子がピタッと泣き止み、いつもの屈託のない笑顔を林檎子に向けた。
林檎子はそれと引き換えに、凄まじく疲れた顔で、腰回りについた地面の埃を払うと部屋へ戻ると告げ場を去っていった。
「お待ちください、林檎子お嬢様ー!」とことのほか元気よく留依子が続いていった。
他の使用人たちも、ようやく我に返ると事もなげな様子で「仕事、仕事……」と解散しそれぞれの持ち場へ戻っていった。
残された筋肉隆々な兄貴たちは、尚もムキムキのポーズをとり続けるも、まるで行き場のない置物のようにその場に長時間放置という結果になった。


――堀部真樹太

その日の午後、天気は急に下り坂になり、早めの梅雨の水滴が繁茂した庭木に生彩をあてがっていた。
小雨のなか。ガラスの温室内で花卉の手入れに独り勤しむ黒荊家古参の使用人堀部吉兵衛の倅、また双子である留依子の弟、堀部真樹太がふとした胸騒ぎにガラスの外を見やると。
異様な一団がこちらに近づいてきた。何やら荷を大事そうに抱えた半裸の男性たちと、彼ら従えた美少女、お屋敷の令嬢林檎子であった。
「入るわよ!」
林檎子は温室の扉を無遠慮に開けると、何やら男たちに指示を与えた。
すると男たちは各自両手に持っていた荷物、それは鉢植えの植物(共にコンテナでお取り寄せと思われる)をいったん地べたに置くと、
代わりにもともとそこに置かれていた様々な草花の鉢植えをバケツリレーの要領で扉の外へ運び出し、そのまま乱暴にも次々と庭へ投げ捨てていった。
それを見た真樹太が憤慨し、大きな声を上げた。

「何をなさるのですか! このお花たちは黒荊家の大切な財産にして、心の宝物ですよ!」

「はあ!?」

林檎子が真樹太に反応し詰め寄った。

「えっと、その前に誰あんた?」
「園丁見習いの、ほ、堀部真樹太です!」
「堀部……、ああ、あなたが留依子の双子の弟ね。で、花がどうかしたって?」
「こちらの花や木は侯爵様を始め、黒荊家の皆様がとても大切に慈しんでいらっしゃるものばかりです。ですから私たち園丁も懸命にひとつひとつ大事にお世話をさせて頂いてるのです。なにより花や草木はどれも命ある生き物です。乱暴にしたら可哀そうじゃないですか!」
「はああ、お前もまためんどくせえタイプだな。花が可哀そうとか、さしずめ童貞だな」
「? ドウテイとは何ですか?」
「……、後で留依子にでも聞いとけ、……って、あああ、調子くるっちゃうわー、留依子といいこいつといい何なの!?
 わかったよ、アタシが悪かったわよ。さっき捨てたの花は元に戻すから、確かにお花は大切にしなくっちゃよね」
林檎子は顎で半裸の筋肉の者どもに合図で指示を送った。彼らは笑顔と全身のポーズで了解の意を表したかに見えた。

「お嬢様! わかって頂けて大変嬉しゅうございます。さすが黒荊家のお嬢様です」
「うん、よくわかったから、ところでお花好きなキミに一つお願いがあるのだけど……」
「はい、僕にできることでしたら何なりと!」
「今アタシが持ってきたこの花、まだ蕾のままだけどお花が咲いて実がなるまで一つ面倒見てちょうだい!」
「はっ、畏まりました。ところでお嬢様このお花の名前は何というのですか? 枝葉を見たところ実に奇妙な形をしておりますが……」
「ふふん、これはアタシが品種改良と遺伝子組み換えで作った新種だからまだこれといって名前はないけど、
 そうね、この際『享楽の実がなる花』とでも命名しておこうかな」 *2『享楽の実』イイ気分になるヤバイ薬の原料、中毒性があり多用すると遺伝子がヤバくなり、最悪家畜人化する(モモコ一期参照)
「きょうらくの実? ですか?」
「『享楽の実』の性能や威力は極秘だけど、もし然るべき市場で売買したら莫大なお金が動くでしょうね。リアルで金の成る木ってトコかな。なんでしっかり世話しなさいよね!」
「は、はい、誠心誠意お世話します。きっと綺麗なお花が咲いて、美味しい実が成るのでしょうね……」
とここでちらりと林檎子を見遣った真樹太であった。
次の瞬間林檎子と目が合ってしまった。
「(うわあっ!)」心臓が高鳴り、ごくっと大きく息をのむ。林檎子の瞳に吸い込まれた。
そうなのだ。大多数の男性がそうであるように、ここで真樹太、美少女中の美少女の林檎子の別次元の魅力に胸キュン瞬殺KO負けしてしまう。
真樹太の動揺を知ってか知らずか、林檎子は真樹太にかなり接近すると、彼の顎をクイと指で持ち上げた
「うふふ、そうよ、それは綺麗な花が咲いて、美味しい実がなるのよ……」
「……うううっ」
真樹太の背景が少女漫画風の花と星でいっぱいに。そしてBGMにはメロドラマ風の魅惑の旋律が流れてきた。
林檎子の顔がさらに近づいた。すぐ目の前に林檎子の妖しい花弁のような唇が迫った。
マキタは心臓の暴走が臨界に達し、全身の血が沸騰爆発するかと思うほどに未体験の興奮を覚えた。
「あなたにもアゲルわ……」
彼女が言葉を発する度にうねるリップラインの残像が鮮烈に頭の中に焼き付いた。
そのとき真樹太は何だかとてもいけない観念に捕らわれたような気がしていた。同時に意識が一瞬遠のいた。

「うふふ、頼んだわよ。じゃあね!」

気が付いたらすでに林檎子が数歩先に離れていった。
去り際林檎はちらりと笑顔であった。また兄貴たちも全員にっこりと笑顔であった。

心の衝撃の反芻を沈めたかった。ガラス越しの薄暗い雨空が甘い余韻と、得体の知れない不穏を誘った。
恍惚、陶酔、憧憬、思慕、劣情、希望、後悔、精進、背徳、高潔、自己愛、自己嫌悪、諦観、達観、神妙などなどといった漠然たる思惑がループした。
また、真樹太の身体の外では、まだ自分の知らない粘液が気付かぬうちに下着の内側に秘密の染みを拵えていた。
その証の意味する処を後々知るならば、初めての不埒な衝撃と青臭い罪悪感を味わうことだろう。
しかしそれが人生における祝福の一つと気づくにはかなりの年を経る必要があるのだ。

「林檎子お嬢様……、か……」(鼻の下を伸ばしながらアホみたいな顔)

顔を左右に激しく振った。
何故だか無性に雨に打たれたくなり、直線ダッシュで外へ出でた。
そしてしばらく真樹太はこの生ぬるい雨にほんのり火照った目元と頬を打せながらまるで無機物のように立ちすくんでいた。
後ろでは傘を持った双子の姉瑠衣子が掛ける声さえ失い弟真樹太を見守っていたが気付く様子はなかった。
さらに後ろの水溜まりには先ほどの捨てられた鉢植えの花(兄貴たちが片付け忘れた)が転がっていた。
そんなレイニーアフタヌーンがレイジーブルーな青春ビギニングであった。
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…わりとマジで勘弁してほしい(林檎子)
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そんな五月は好きですか…