2023.03.30
似顔絵(コレジャナイ) 八木沢三姉妹
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2023.03.26
似顔絵(コレジャナイ) 三博士
2023.03.12
似顔絵 峰のぞみさん
2023.03.05
魔少女旋風 ナハト×マギカ 第35話 「魔少女怪獣ファイナルバトルエンゲージ」
魔少女旋風 ナハト×マギカ
第35話「魔少女怪獣ファイナルバトルエンゲージ」
「それでは我々は失礼します。ご武運を!」
「有難うございます。私たちならもう大丈夫です。軍人さんたちもお元気で!」
桐島と肝田はマギカとキララに別れを告げ羊鳴館を後にしました。
強力な光の魔法を授かった今のキララなら、この場を任せられるし、エレメンタルデストロイヤーによる黒魔法キャンセル装置もとうにキララが無力化したため、間もなくマギカも魔法力を回復すると確信してのことでした。
桐島、肝田の帝国軍人の両隊員は、本部からの緊急指令で、突如帝都に出現した怪獣ギラザギの対応に向かわなければならず、また行方がわからなくなっていたナハトのことも気掛かりでありました。
そして今は沈黙しているギラザギですが、いつ再活動するのかもわからず、それに先ほどの犬神卿の暴露によると、この機に乗じ黒林檎十字会が何か大規模なアクション(破壊活動)を起こすかもしれない、との看過できない予断もありました。
いえ、既にこのとき、その黒林檎十字会(原案企画 蛇墓場苺子)が企む恐怖のカタストロフィはもう始まっていたのです。
――ダミガン乱用者超凶暴化
それはまさにこのタイミングで仕組まれていたかのような一大事でした。
どういう訳かこの数時間の間で、抗魔法少女症薬ダミガンを大量に摂取したと思しき人々が、皆一斉に我を失い、精神が錯乱したかのように超凶暴化し、そのままパワー系の暴徒となって建物や車などの器物を壊し始め、同時に近くにいた人を無差別に襲い始めたのでした。それも帝都を中心に広い範囲で。
もともとダミガンは中毒性が高く、これを乱用すると激しい暴力、性的衝動が副作用として問題視されていたのですが、今回のそれはそんな生易しいレベルではなく、完全に人間を辞めちゃったレベルの豹変、いえそれはもはや人間以外の他属性への変身(怪人化、吸血鬼化、鬼化)ともいうべき変わりようでした。
これは後に分かったことですが、怪獣ギラザギの叫び声が彼らダミガン乱用者の精神に干渉し、暴走化、バーサーカー化のスイッチとなっていたとのではという仮説が有力とされました。
そしてこの凶暴化した破壊衝動発症者らは、巷で「テリブルパーソンズ」と呼ばれ、略して「テリパ」と呼称されるようになりました。
その戦闘力は常人を越え、悪の組織の下級怪人ないし上級戦闘員クラスでした。
そんなテリパらがすでに何千~何万人単位で暴虐の限りを尽くしていたのです。
彼らが金品強奪、婦女暴行、器物損壊、快楽殺人といった、いわば悪行の数え役満を躊躇いなく行えるのも、人間の原初のカルマにある野蛮な部分、負の精神のマイナスエネルギーといった、人が人として理性と感情で抑えていた最も悪魔的な部分が解放されたにほかならず、それはもはや闇の眷属ガチ勢の最たるもの、「悪魔」に他なりませんでした。人間マイナス理性・善悪・慈愛=悪魔なのです。
もはや今日のクリスマス・イブは悪魔たちが血と血で乾杯する狂気の宴、さながら滅世の魔王の誕生祭の様でした。
「さあ、マギカ行こう! 今の二人なら、どこへだっていける。新しい世界はエリコシュオンだけではないよ。ね♡」
そういってキララは新しい光の魔法で、自分とお揃いのプリプリキュートな魔法のドレスを、いまだ全裸のマギカに強制着衣メイクアップパワーしました。
「………………」
マギカはそのドレスのもつ輝きのオーラとハッピーポテンシャルを感じ、少し戸惑い顔になりました。
キララは続けました。
「マギカも分かっていると思うけど、今の私たちではこの状況で人間たちを救うことはムリ……。 例の邪神とその手先の黒林檎十字会に対抗するには魔法少女二人だけでは不可能でしょ。ここは一度人間社会から身を隠して、マナとMPを蓄え、同士を集め機を待ちましょ。それになにも攻撃魔法で戦うだけが問題解決の手段ではないと思うの。例えば私たちが愛と平和の尊さを歌やリリックなんかで人間たちに布教し、優しい人間のお友達をいっぱい増やし、憎しみや争いを失くすなんてどうかな! 魔法少女の笑顔とハートで世界を救う! って、だからマギカも笑って! 今は人間と魔法少女のとびきりハッピーな未来を信じて!」
「………………、ごめんねキララ」
「え?」
シュボボボボボウ!
そういうとマギカはせっかくのピカピカキラキラ魔法少女コスを青緑の焔で消し去り、いつものダークな黒魔法少女の下着姿になりました。
「………どうして?」
「私には色々とムリ、笑顔とか、ハッピーとか、……可愛いドレスも、似合う訳ないし」
「ええー、そんなことないよ、マギカは可愛いし、スタイルもいいし、笑顔も素敵だし、魔法少女のスーパーアイドルだよ。だからもっと自信もって前向きになって欲しい、かな……」
マギカは俯いて首を振ると、
「私は貴方とは違うわ、私は黒魔法少女、光の魔法少女にはなれない、だって私は罪と罰を負って、身体も穢れてしまってから、そうよキララ、貴方とは違うのよ」
「そんな、黒魔法少女とか光魔法少女とか、マギカとアタシは……、私だってもう穢れてしまったけど、今そんなことどうだっていいじゃん!」
「いいえ、キララはそうじゃない、貴方は生まれ変わったのよ、穢れた黒魔法少女から新たな光の魔法少女へ、だからあなたは無垢で綺麗、太陽のように宙高く光り輝く尊い存在。私は穢れたまま地の底を這う闇の眷属、住む世界が違い過ぎるわ、だからもう行って頂戴! 私には今のあなたが眩し過ぎて辛いのよ。一緒にいると私が惨めになってココロが潰れそう、これは本音、正直あなたが羨ましくて……、私なんか……、だってあなたはみんなに祝福された存在、私は生まれたときから呪われた……」
「ハイハイ、わかりました! やならアタシは消えますよ。なによウジウジしちゃって! マギカのそういう処、ホントに陰キャブスなんだから!」
「誰が陰キャブスですって? 何よ! そういうキララこそ自分都合で自分勝手のワガママお嬢チャマはまんまそのままじゃない!」
「いぃーだ! 拗らせパッツン女!」
「いったわね、お団子プリプリ娘!」
「フン!」
「ヘン!」
「(………………………………)」
「(………………………………)」
そしてキララは瞬間移動魔法でふいに姿を消しました。
その場に残されたマギカは静かにうつむきました。ただその瞳には、どこか、これで良かったんだと満ち足りた色さえ浮かんでいました。
最後の生き残りの魔法少女マギカとキララのお別れは、ごゴメンねもさよならも言わずじまいでありました。
でもそれは感情的な喧嘩別れといった寂しい空気ではありませんでした。
お互いに何も言わないそのワケも、また二人はいつか必ずどこかで会えるという、確かな心頼みからくるものでしょう。
そのまた巡り逢えるときが、いつか二人が生まれ変わって、または別の次元にループし、たとえそれが途方もない長い時間であっても、奇跡に頼るような僅かな確率だとしても……。
帝都上空を漂うキララは、問題のテリパ達の冒涜的な雄叫びや、様々な破壊音、か弱き被害者たちの悲鳴、嬌声、嗚咽を聴き、この狂気と怨嗟が渦巻く街の暗闇を見つめ、ひたすら今はどうすることもできない己の無力を悔やむのでした。
「人間たちよ、見てるから、アタシは今は見ててやるから、人間たちが愛と優しさを取り戻して明るい未来を作るその日まで、こうして見続けてやるから!」
そしてキララが別れたマギカを思い虚空につぶやきました。
「あのね、マギカ……、私だってわかってるんだよ。私も同じ陰キャブスだから……、こんないかにもなキラキラ魔法少女ドレスは私も似合わないってことくらい。できることならアタシはずっとマギカと一緒にいたかった。穢れて呪われた黒魔法少女でもよかった。マギカと一緒なら。……だから光の魔法少女なんてなりたかったわけじゃないの。でも、でもね、アタシは今、光の魔法少女に生まれ変わって、私のなすべきことを知ってしまったの。それは光の魔法少女の使命。マギカが罪と罰を背負うなら、私もこのクソ重苦しい祝福という宿命を胸に抱くわ。だからマギカとはお別れ、また逢う日まで、必ず逢えるその日を信じて、ああ、親愛なるマギカ。アタシの永遠の友達……」
そしてキララは白いフクロウに身を変え、闇夜の彼方へと飛び去っていったのでした。
再び天涯孤独となったマギカ。そのマギカの受難は尚も続くのでした。
羊鳴館のの周りに、野獣か淫獣のような目をしたテリパたちがどこからともなくマギカの位置情報を嗅ぎつけ集まってきたのです。
魔法少女マギカとイッパツヤリたい♡ ハメたい♡ お情けが欲しい♡ あるいはマギカを憎むあまり暴行を加えてブチコロしたい! などといったシンプルな欲望が爆発的な瞬発力をもって行動に直結するのがテリパたちなのでした。
そのマギカとのH行為や、強い殺意に執着するテリパは、元々アンチ黒魔法少女派のマギカスレイガーあがりのマギカと因縁のある連中が多くでしたが、中には狂信的なマギカ信者であったはずのマギシタン男子の中で、例のマギカと犬神卿とのベッド流出事後写真や結婚疑惑報道を知って幻滅、落胆、嫌悪、憤慨、激昂、逆上を経て、神聖なアイドル魔法少女であったマギカに裏切られたといったコアなファン心理から、打って変わって超アンチとなりマギカに激しい憎しみと恨みをもって攻撃側に転ずる者も少なくなかったのです。
さらにテリパ発症してない健常者男子も、その話を嗅ぎつけ、健康(ただし頭は不健全)な男子ならではのシンプルなエロ目的でとりあえずタダならひとつ並んでみるか、といった便乗組も多数参加し、かなりの行列ができたのでした。
ここで不思議と列にならんでいる凶暴なテリパたちは、特に他のお客さんらとトラブルを起こすことなく、静かに順番を待っていたといいます。
既にこの事態とエロな身の危険を魔法少女のカンで察知したマギカでしたが、それでもマギカは姿を隠すこともなく、シャワーを浴びて心の準備とを整え、再び全裸でベッドに横たわり、悩ましげな笑みとポーズでこれらお客が来るのを待ち構えりました。
そして行列のトップはマギカがいる部屋の前まで迫っておりました。
ガンガンガンガンガン!!
「マギカさーん! 開けてくださーい! そこにいるのわかってるんですよ! ひとつお願いがあるのですが、一度お願いしたのですが♡ グヒヒヒヒ!」
「頼みます、単刀直入にやらせてください!」
「おら! マギカ! 出て来い! オメーのぐちょぐちょま〇こにオラのギンギンチ〇ポブチこまさせろ!」
「マギカさん、よくも裏切ってくれましたね! あなたは淫乱売女パパ活エロ娘ではないですか、全国の魔法少女ファンと僕に謝ってくださし! そして死ねやあああ! 殺したらあああああああ!(泣)」
ギイ! バタン!
どどどどどどどどどど!!!
先着のテリパが扉をガンガン叩き、今にもドアが壊れそうになったとき、ふいにマギカが魔法で開錠すると、いきり立ったテリパのお客サマがいっせいに流れ込んできました。
マギカはそれを笑顔さえ浮かべ待ち構えていたのです。
「はーい! みんな、いらっしゃーい♡」
初見で殿方たちは一糸まとわぬマギカの姿を見て、先走り液より先にフィニッシュの白い液をだしてしまい果ててしまうものが多数でしたが、中にはマギカに最接近し、kissをしたり、えっちなトコに手をのばしたり、ぺろぺろしたりする我慢強いエロ上級者もおりました。
ただマギカはそんなテリパの狼藉に一切の抵抗さえすることなく身を任せ、むしろ慈愛と奉仕の精神をもってこれに応じていたようにも見えました。
そこにはもちろんマギカに何か考えがあってのことでした。
このときマギカは得意とするとある秘術で、暴徒化した彼らへの改心、魂の浄化を図っていたのです。
それはマギカが転生前の人間だった時代から不思議な異能力として備わっていた「チュウチュウ悪魔さん出てらっしゃい」という秘術でした。これは黒魔法とはまた違ったメソッドで、その昔R子の悪魔成分を見事に抽出分離したといわれる天性のスキルでありました。
ここにきてマギカはこのスキル(略して「チュウ出し」)をさらに改良を加え洗練させて、直接口吻での吸入でなくとも、皮膚や粘膜(性器などH部位)の接触、または被験者の射精時による精液との同時抽出も可能にせしめ、各種のエロ行為から暴徒らの悪魔成分を乖離、抽出し凶悪化したテリパらの心身を正常化(賢者化)させていったのです。
マギカはダミガンの乱用で負の感情と精神錯乱とが業のように心身に蓄積され、高濃度になっていった人間のマイナスエネルギーを、マウストゥーマウスや、マウストゥーペニス、マン〇トゥー〇ンポなどの性的な身体の密着や結合などでそれをマギカの体内に吸収し魔法の力でろ過、解毒、除染していったのです。
たくさんの辛抱堪らぬ様子のお客相手にマギカは、指やお口やDカップおっぱいの谷間や、本命の下のお口や、その隣のもうひとつの穴ポコと、あとマニア向けに髪の毛、脇の下、足裏などを総動員してのまさに体を張った性&悪魔成分処理ボランティアでした。そしてそれは結構な高負荷の重労働でした。また自浄に必要なMPもかなりの消費量に及びました。
そのマギカの懸命なチュウ出しの構図は、傍からみるとのオゲレツな集団乱交ものAVそのもので、ここはマギカもサービスの演技なのか、素の快楽なのか判別でき兼ねる表情と声音で、
「アン、アアン……、いいわー、うれしー、もっとちょうだい、もっとだして~♡」などとエロエロボイス全開をヘビーリピートし、ぶっかけられた液汁まみれの光りぬめるカラダをクネクネさせ、エロ堕ち調教済み非処女メス顔全開で気前よく次々に訪れるお客(患者?)のお相手をいたしておりました。
ただマギカをよく知る者は、その行為の根底には、人間に対する深い憐憫の情と、真の救済を望む一念による尊い自己犠牲であると解釈されましたし、またそう信じたいところでもありました……。
少なくともマギカの「チュウ出し」で、悪性リビドー共々悪魔成分を体外に放射出し、マギカに吸収されることで心魂洗われし者は、スッキリと精神的に昇華されて敬虔ともいえる面持ちになり、またはその頬に改心の涙さえ流し、マギカをまるで菩薩か女神のように礼讃し崇め奉り、また新たにマギカファンとして彼女に帰依、改宗することうけあいだったそうです。
そして悪魔成分をヌかれた賢者たちは、皆我に返るとそのままお家へと帰っていかれました。
しかしこの末世の狂騒にインスパイアされたテリパの数はあまりにも膨大で、孤軍奮闘のマギカにはとてもではないキャパオーバーでした。さらにマギカがその身に吸収した多くの悪魔成分もすでにマギカが体内で自浄できる処理量や許容量といったものをオーバーフローしていたのでした。その結果マギカの身体に分解できなかった悪魔成分がリアルに質量を伴った瘴気となり、それが高濃度で凝縮されていき、次第にマギカの身体に深刻な影響を及ぼすようになっていったのです。
ただマギカもこの亡魂帝国の終末的な事態を収めようと必死であり、すでに自身の罪と罰との自責で我が身がどうなろうと構わないといったブレない覚悟が彼女を突き動かしていたのでした。
今度こそ、人間たちと戦わずに役に立てる。その思いがマギカのすべての救いでした。
ここでマギカが受けた悪魔成分の過剰摂取は、その代償としてマギカの肌に醜いアザのような染みをいくつか浮かばせました。
そして彼女の柔肌に悪魔的な紋様がまるでタトゥーのように連なり広がっていきました。
やがてそれらが全身を覆い、ついにマギカの全身が漆黒に染まると、今度はそこに醜いイボやらコブやらがブクブクと表れていき、さらにその上に硬質化した皮膚が、まるで蟲類の甲羅のような外骨格を形成していきました。
同時に少女のスタイルの良い体型もムキムキとゴツク変化し、最終的にマギカの顔にも瘴気の影が差し、その美少女の面影さえ失い始めたのです。
彼女の目が金色に変化し、口が裂け無数の牙を剥き、耳は大きく尖り、奇怪、醜悪、というよりはガチな悪魔そのものの姿へと変っていったのです。
まさに人外、黒魔法少女の真の姿ともいうべき化け物へと変わっていったのでした。
それは以前チェンジした『ヴァルプルギス・ゲシュタルト (闇魔性形態)』よりもさらに恐ろしい頽廃的、冒涜的な終末の獣の形への変化でした。
そしてその体は人間たちから集めた悪魔成分のマイナスエネルギーによりパンパンに膨満し、身体の内側からみるみるとマギカの嵩を巨大化させていったのです。
マギカはその急速に膨張するサイズ感をもって部屋の天井を突き破ると、背中に蝙蝠のような大きなウイングを広げて身を浮かせました。そしてそのまま上昇し帝都の上空500m付近でホバリング状態を維持しました。
そこでさらにマギカは巨大な口を広げ、スーと大きく息を吸い込むと、今度は眼下に集まるテリパの悪魔成分を非接触型サイクロン方式での吸引を開始しました。
帝都にいまだ大勢いる暴徒化パーソンズは、何故か異形化したマギカのもとへと集まり出し、羊鳴館の先客同様みるみる悪魔成分をヌかれ、へなへなと地に腰をつけて穏やかな賢者へと戻っていくのでした。懺悔の涙と、事後のお汁でパンツを濡らしながら。
また素に戻った人たちはそんな異形化マギカを見て、こんどは恐れおののきました。
「おわああー、何だアレは?」
「化物だ! 悪魔だ! 逃げろー!」
「この世の終わりだ! 世界の終末がはじまるぞ!」
と大声をあげ、蜘蛛の子を散らすように逃げまどいました。
それもそのはず、そこにいる元マギカだった恐怖の異形は、すでに慈愛に満ちた清く正しい聖母や魔法少女のオーラを失い、ただ邪悪と破滅の象徴ともいうべき怖ろしい怪物が中空から凄まじい狂気の圧を放ち君臨していたのです。
既にマギカの心のほとんどが悪魔成分に支配され、マギカのピュアに澄んでいたソウルコアはどす黒い高濃度瘴気が充満し汚染されていったのでした。
それでもまだマギカは人間たちの悪魔成分を吸収し続け、身体がどんどん巨体になっていくのでした。そしてその異形の怪物の中の人マギカは自身のリアルな最後を悟るのでした。
「ココロが消えていく、このまま私が私ではなくなってしまう。私はこのまま本当の闇のダークネスパワーを解放して、真の終末の獣となり、この地上を破壊蹂躙しつくすかもしれない……、っ、誰か、私を止め……」
とそのとき、マギカは光のイメージの中で、ある者の姿を認めました。その者は両手を広げ、いまにも崩壊しそうなマギカを呼んでいるような気配を感じました。
そしてマギカは最後の希望を頼ってか、おもむろにその者の胸へと身を預けました。
その者はマギカの身体を受け止めると、優しく抱きしめました。
その者は少女でした。マギカが昔から良く知る少女と思えました。
「………マギカ、大丈夫?」
「この香り、懐かしいわ………。あなた、R子ちゃん、ゴコちゃんなの?」
奇跡的な何かの力か、マギカは最後の最後のこの場に及んで、自分が良く知る少女、それはその昔大変仲良しであったR子と思われる少女との邂逅に運命的なものを感じ、すこし心が解かれるような感じになりました、が……。
「えっとジブン、ゴコちゃんはゴコちゃんなんですけど、残念ながらマギカのいうゴコちゃんと違くって、ごめん♡」
「はっ……!?」
その答えを聞いた瞬間、再びマギカのココロが萎えて凍てつきました。
「蛇墓場苺子!」
「やっとアタシのものになってくれるんだね♡」
そのR子と思われた者は、イメージの解像度が上がると、概念が実体化し、邪神蛇墓場苺子の姿になりました。
「マギカちん、やっぱりアナタは最初から限界因果少女だったのよ♡ そしてこの後この世を滅ぼす滅世主となるんですが……。さあはやくその真の姿を見せてよ! そしてイチゴコのためにクソ人間どもを一匹残らず滅ぼしちゃってくださいな♡」
そういうと蛇墓場苺子はマギカの身体をギュウと抱きしめました。さらにピンク髪の無数の蛇を使い、マギカの喉元や手足など全身に隈なく巻き付け、これらを邪神のバカ力で締め上げました。
「うぐぐぐ、そうはいかないわ! あなたの思い通りには、まだあの子が。ぐふ……」
「くーっ、マギカちゃん♡ ハアハア!(歓喜)」
愉悦に忘我した苺子のギュウと抱いた腕と髪の毛蛇がフルパワーの限界を超えると、
パリン!
確かにマギカの中で何かが壊れてしまったのです。
それは魔法少女の命というべきソウル・コアでした。マギカの命と記憶や感情のすべて、それはマギカそのもの。
「(……あああんっ!)」
そして魔法少女マギカは喘ぐような断末魔をあげ、その命の活動を永久に停止しました。
このとき、どす黒い高密度瘴気が充満したマギカのソウル・コアは、邪悪成分による腐敗と内部圧で極めて脆くなっており、既に崩壊寸前だったのです。その彼女の最後が苺子により少し早く訪れてしまいました。
苺子は満面の悪い笑顔をしてマギカの身体を中空に放りました。
マギカの最後の理性、というよりは真のマギカ自身であるマギカのココロが消え、抑制されていた邪悪放射性成分が連鎖的に核分裂し、膨大な邪悪エネルギーを獲得し、結果、異形をも超越した闇の眷属の最終形態たる破壊神がマギカの身体から目覚めるのでした。
――マギカ怪獣化
地面に落下したと同時に死んだはずのマギカの身体から、夥しい火柱と瘴気の煙が立ちあがり、その黒煙の内から最終的に全長7、80メートルはあろうかという巨大な獣が現れました。
それは怪獣ギラザギを二回りでかくしたような大怪獣で、その怪獣化マギカは、当該組織魔少対より「モンスターβ マギュラ」と命名されました。
当然マギュラは魔少対から駆除殲滅対象として直ちに軍事部隊に攻撃命令が下されたのです。
未だ沈黙中の「モンスターα ギラザギ」の後処理もままならぬタイミングで、新たな脅威マギュラ出現に帝都は混乱の倍掛け状態へと陥りました。
ほどなくし対怪獣特別チームのHMAP(ヒュマップ)の戦闘機ヒュマップピジョン3機が現地に到着し、マギュラに対し先制攻撃を開始しました。
また付近で待機していた陸軍と海軍の旧式の戦闘機や戦車も、上位機関のHMAPに指揮権を委ね、本作戦に参加しました。
実に都市部人口密集地域にも関わらず、圧倒的な火線がマギュラに集中しました。
これにより一度夕日が落ちたはずの帝都の空は攻撃軍の砲火により、再び赤く染まりました。
マギュラは敵機の集中攻撃にも微動だにせず、硬い外皮でそれらのダメージをすべて無効化しました。
そしてマギュラは頃合いで反撃に転じ、目から熱線ビーム、爪からロケット弾、羽根の内側からミサイルのような無数のトゲを放出し、展開するHMAP戦闘機やその他陸海軍の主力兵器を次々に火を噴く鉄屑にしていったのでした。
次にマギュラは何を目指してか、前途にあるビル群を踏み倒して帝都を南下していきました。
そして魔少対からの次なる緊急要請で、現在海軍横須賀基地でメンテ中のある対魔法少女最終決戦用トンデモ兵器が再起動しました。それは当局が誇る対怪獣、魔法生物の切り札ともいえるものでした。
――対魔法少女最終決戦用ヒト型超電磁重機動マグネ空爆ロボ 三式機獣メカニ・ガンドロウ
「いやなのですー、もうあれには乗りたくないのです!」
そのトンデモ兵器の適性搭乗者である浄閑寺詩穏は対魔法少女決戦型兵器メカニ・ガンドロウに乗るよう担当軍医数名から無理矢理腕を引かれ搭乗を強要されていたのです。
「ったく根性ナシのヘタレガキが! 乗れったら! 乗んなさいな! てめえの親の仇くらい、てめーで仇討ってこいってーのっ!」ガス!
「ぐえふ!」
凄い力で踏ん張るシノンに業を煮やした担当指揮官佐治洲塔子(モモコ2nd登場の親衛隊士官)は、非常にも詩穏にマジな腹パンを食らわせると、そのまま体をくの字にまげ蹲る詩穏のスカートを捲り上げ、おパンツずり下ろすと怪しい髑髏マークのケースから注射器を数本取り出し、激しくお尻ぺんぺん後、無防備となった詩穏のお尻たぶにヤバめな色をした薬を数本分お注射したのでした。
すぐさま弛緩した詩穏が白目を剥き、声にならないうわ言を発しているのもおかまいなしに、脱がせたおパンツの代わりにパイスーを装着させると、エレベータからメカニ・ガンドロウのコックピットへと足蹴で押し込みました。
「メカニガンドロウ緊急スタンバイ! 第一カタパルトへリフトアップ後、第二兵装で射出シロ!」
次に詩穏が目を覚ますと帝都上空でした。そこで飛翔体形態のオートマチックは解除され、脚部を伸ばし、着地体勢をとるメカニ・ガンドロウでした。
その着陸地点数百メートル先にはマギカの成れの果ての巨大怪獣の姿があり、それはパイロットの詩穏にもアラーム表示と共にモニターで確認されました。
薬物により詩穏は半ば人としての意識と感情を失っている様子であり、このときは目の前の魔法少女怪獣を倒すマシーンと化していて、メカニ・ガンドロウとほぼ完ぺきにシンクロシングしていたのです。
空爆飛行形態からヒト型戦闘形態にちょい変形したメカニ・ガンドロウは、夥しい土砂を巻き上げながら地面に着地すると、「パッパカパッキャーオーーーーーン!」と勇ましく雄叫び(戦闘モード起動音)を上げ、ファイティングポーズを決めると、標的である怪獣マギュラと絶妙の間合いでエンゲージしました。
バババババリバリバリバリバリバリバリバリリーーーーン!
ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュルルーーーーン!、
すかさずメカニ・ガンドロウは、腕部の連装ロケット砲と、脚部のミサイルランチャーを斉射しました。
ほぼ全弾が見事ターゲットに命中しましたが、実際はマギュラの皮膚の重装甲に阻まれ、攻撃の効果は皆無でした。
次にメカニ・ガンドロウは両腕をグーの鉄拳にして怪獣に向けると、これをロケットのように飛ばしました。
するとマギュラは手前にバリア(魔法少女の結界のような光の壁)を展開しこれを阻みました。
ズッガガガーーーーーーーーーーーーーーーン!
放たれたロケットパンチは強烈で、ナパーム弾の5、6倍はあろうかという爆発に周囲のビルが吹き飛び瓦礫となって倒壊しました。
しかしバリアに守られたマギュラは無事でした。
硬い装甲と謎バリアでマギュラの防御力は計り知れないものでした。
ただ、これを見た佐治洲塔子ら後方指揮官は、緒戦はまあまあそんなもんそんなもんだろう、などと割とお気楽といった感じでモニター越しにメカニ・ガンドロウを監視してました。
そして次にメカニ・ガンドロウの背中の巨大な砲塔が展開し、マギュラに向けられると、佐治洲塔子が「よっしゃ! 勝った!」とニンマリ呟くと同時に、詩穏がマギカ千夜一夜城を粉砕した件の必殺兵器、収束メガエレメンタル・デストロイヤーキャノン砲のトリガーを弾きました。
ンギュドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!
凄まじい熱量と衝撃波を伴った極太ビームが怪獣マギュラの全身に浴びせられました。
マギュラは幾分目付きが厳しくなったように見えましたが、致命的なダメージを受けているような様子はありませんでした。
そればかりか、黒魔法少女の結界バリアと同性質かと思われていた怪獣の謎バリアはちゃんと仕事をし、収束メガエレメンタル・デストロイヤーキャノンに破砕されることなくビーム粒子を弾き返していたのです。
「な、何いいい?」
佐治洲塔子ら指揮官たちから余裕の顔色が消え失せました。
すでにマギュラの本質は魔法少女マギカ由来の黒魔法のエレメントスとはまったく異なった性質のダークネスエレメントスに変異していたのでした。
それはもはやマギカとは別次元の魔法生命体というべき証でした。
またマギュラに魔法少女マギカのリベンジの念があるのか、恨みのこもったような咆哮をメカニ・ガンドロウに向けると、その叫び声が次第に破壊衝撃音波となり、メカニ・ガンドロウの機体の随所に火花と小爆発を誘発させたのです。
「はっ!」
この謎音波でようやく正気に戻った詩穏は、目の前のマギュラを見て絶叫しました。
「きゃあああああああああ! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!」
次にマギュラは体を真横に回転させると、長い尻尾の先でメカニ・ガンドロウの首筋を掠めました。するとその鋭利な尻尾の先はコクピットがある頭部を一刀両断しました。
首からもげた頭部は回転しながら品川ふ頭沖に着水しました。眼をグルグル回しながらもパイロットの詩穏は無事でした。
その後メカニ・ガンドロウはマギュラの眼ビーム、羽根ミサイル、口吻破壊超音波、腹部最終破壊粒子砲のフルコースを受け、鋼鉄の全身が盛大な爆発とともにバラバラに崩れ落ちていき、重度の損傷を経て大破、修復不能の全損したのでした。
そして帝国軍ならび帝国政府の関係者は、燃える帝都の街をバックにそそり立つマギュラを見て、焦燥と絶望に一切の言葉を失いました。
ギィエーーーーーーーーーン!!
業火の中で怪獣マギュラは帝都のある方向に咆哮しました。
まるでそれは獣の遠吠えのように、同族へ呼びかけるかのようにも思えました。
その叫びは愛宕山の倒壊した帝都タワーで活動をやめたギラザギのもとにも届きました。
するとそれに呼応するかのようにギラザギの巨躯がピクリと反応しました。
正確に言うとギラザギの体内に宿る何かに……。
突如、その怪獣ギラザギの外皮に隈なくヒビが入り、分厚い皮膚や鱗が崩れ始めました、そしてさらに驚くことに中から謎の巨大な黒い影がそれを突き破り出現したのでした。
蛹のなかから新たな成虫が出現するかのように、それもまた怪獣の姿形をしていました。
それは紛れもなくギラザギの中から現れた別固体の新たな怪獣だったのです。
――新怪獣出現
その怪獣は全身黒い身体をした、オーソドックスな恐竜型のタイプでした。
グゥオーーーーーーーーーーン!!
その怪獣はマギュラのいるであろう方向を見据え、大きく咆哮し、何かに導かれるかのように歩き出しました。
「あれ、ナハトさんじゃあ……」
現場でその怪獣の出現をその目で見た肝田が呟きました。
「ナハトさん……、なのか……?、あの怪獣が……」
肝田の憶測になんの根拠もなかったのですが、また桐島もそれを否定する言葉もありませんでした。
ただ怪獣の目というか雰囲気がなんとなく、いなくなった忍者処女ナハトの面影があるようで、このとき二人にはそんな風に見えもしたのでしょうか。
新怪獣は「モンスターγ ナヴァドン」と命名されました。

次回最終回! 大怪獣化ナハト×マギカの最終決戦 魔少女たちの終末のカタストロフィの行方は?
第35話「魔少女怪獣ファイナルバトルエンゲージ」
「それでは我々は失礼します。ご武運を!」
「有難うございます。私たちならもう大丈夫です。軍人さんたちもお元気で!」
桐島と肝田はマギカとキララに別れを告げ羊鳴館を後にしました。
強力な光の魔法を授かった今のキララなら、この場を任せられるし、エレメンタルデストロイヤーによる黒魔法キャンセル装置もとうにキララが無力化したため、間もなくマギカも魔法力を回復すると確信してのことでした。
桐島、肝田の帝国軍人の両隊員は、本部からの緊急指令で、突如帝都に出現した怪獣ギラザギの対応に向かわなければならず、また行方がわからなくなっていたナハトのことも気掛かりでありました。
そして今は沈黙しているギラザギですが、いつ再活動するのかもわからず、それに先ほどの犬神卿の暴露によると、この機に乗じ黒林檎十字会が何か大規模なアクション(破壊活動)を起こすかもしれない、との看過できない予断もありました。
いえ、既にこのとき、その黒林檎十字会(原案企画 蛇墓場苺子)が企む恐怖のカタストロフィはもう始まっていたのです。
――ダミガン乱用者超凶暴化
それはまさにこのタイミングで仕組まれていたかのような一大事でした。
どういう訳かこの数時間の間で、抗魔法少女症薬ダミガンを大量に摂取したと思しき人々が、皆一斉に我を失い、精神が錯乱したかのように超凶暴化し、そのままパワー系の暴徒となって建物や車などの器物を壊し始め、同時に近くにいた人を無差別に襲い始めたのでした。それも帝都を中心に広い範囲で。
もともとダミガンは中毒性が高く、これを乱用すると激しい暴力、性的衝動が副作用として問題視されていたのですが、今回のそれはそんな生易しいレベルではなく、完全に人間を辞めちゃったレベルの豹変、いえそれはもはや人間以外の他属性への変身(怪人化、吸血鬼化、鬼化)ともいうべき変わりようでした。
これは後に分かったことですが、怪獣ギラザギの叫び声が彼らダミガン乱用者の精神に干渉し、暴走化、バーサーカー化のスイッチとなっていたとのではという仮説が有力とされました。
そしてこの凶暴化した破壊衝動発症者らは、巷で「テリブルパーソンズ」と呼ばれ、略して「テリパ」と呼称されるようになりました。
その戦闘力は常人を越え、悪の組織の下級怪人ないし上級戦闘員クラスでした。
そんなテリパらがすでに何千~何万人単位で暴虐の限りを尽くしていたのです。
彼らが金品強奪、婦女暴行、器物損壊、快楽殺人といった、いわば悪行の数え役満を躊躇いなく行えるのも、人間の原初のカルマにある野蛮な部分、負の精神のマイナスエネルギーといった、人が人として理性と感情で抑えていた最も悪魔的な部分が解放されたにほかならず、それはもはや闇の眷属ガチ勢の最たるもの、「悪魔」に他なりませんでした。人間マイナス理性・善悪・慈愛=悪魔なのです。
もはや今日のクリスマス・イブは悪魔たちが血と血で乾杯する狂気の宴、さながら滅世の魔王の誕生祭の様でした。
「さあ、マギカ行こう! 今の二人なら、どこへだっていける。新しい世界はエリコシュオンだけではないよ。ね♡」
そういってキララは新しい光の魔法で、自分とお揃いのプリプリキュートな魔法のドレスを、いまだ全裸のマギカに強制着衣メイクアップパワーしました。
「………………」
マギカはそのドレスのもつ輝きのオーラとハッピーポテンシャルを感じ、少し戸惑い顔になりました。
キララは続けました。
「マギカも分かっていると思うけど、今の私たちではこの状況で人間たちを救うことはムリ……。 例の邪神とその手先の黒林檎十字会に対抗するには魔法少女二人だけでは不可能でしょ。ここは一度人間社会から身を隠して、マナとMPを蓄え、同士を集め機を待ちましょ。それになにも攻撃魔法で戦うだけが問題解決の手段ではないと思うの。例えば私たちが愛と平和の尊さを歌やリリックなんかで人間たちに布教し、優しい人間のお友達をいっぱい増やし、憎しみや争いを失くすなんてどうかな! 魔法少女の笑顔とハートで世界を救う! って、だからマギカも笑って! 今は人間と魔法少女のとびきりハッピーな未来を信じて!」
「………………、ごめんねキララ」
「え?」
シュボボボボボウ!
そういうとマギカはせっかくのピカピカキラキラ魔法少女コスを青緑の焔で消し去り、いつものダークな黒魔法少女の下着姿になりました。
「………どうして?」
「私には色々とムリ、笑顔とか、ハッピーとか、……可愛いドレスも、似合う訳ないし」
「ええー、そんなことないよ、マギカは可愛いし、スタイルもいいし、笑顔も素敵だし、魔法少女のスーパーアイドルだよ。だからもっと自信もって前向きになって欲しい、かな……」
マギカは俯いて首を振ると、
「私は貴方とは違うわ、私は黒魔法少女、光の魔法少女にはなれない、だって私は罪と罰を負って、身体も穢れてしまってから、そうよキララ、貴方とは違うのよ」
「そんな、黒魔法少女とか光魔法少女とか、マギカとアタシは……、私だってもう穢れてしまったけど、今そんなことどうだっていいじゃん!」
「いいえ、キララはそうじゃない、貴方は生まれ変わったのよ、穢れた黒魔法少女から新たな光の魔法少女へ、だからあなたは無垢で綺麗、太陽のように宙高く光り輝く尊い存在。私は穢れたまま地の底を這う闇の眷属、住む世界が違い過ぎるわ、だからもう行って頂戴! 私には今のあなたが眩し過ぎて辛いのよ。一緒にいると私が惨めになってココロが潰れそう、これは本音、正直あなたが羨ましくて……、私なんか……、だってあなたはみんなに祝福された存在、私は生まれたときから呪われた……」
「ハイハイ、わかりました! やならアタシは消えますよ。なによウジウジしちゃって! マギカのそういう処、ホントに陰キャブスなんだから!」
「誰が陰キャブスですって? 何よ! そういうキララこそ自分都合で自分勝手のワガママお嬢チャマはまんまそのままじゃない!」
「いぃーだ! 拗らせパッツン女!」
「いったわね、お団子プリプリ娘!」
「フン!」
「ヘン!」
「(………………………………)」
「(………………………………)」
そしてキララは瞬間移動魔法でふいに姿を消しました。
その場に残されたマギカは静かにうつむきました。ただその瞳には、どこか、これで良かったんだと満ち足りた色さえ浮かんでいました。
最後の生き残りの魔法少女マギカとキララのお別れは、ごゴメンねもさよならも言わずじまいでありました。
でもそれは感情的な喧嘩別れといった寂しい空気ではありませんでした。
お互いに何も言わないそのワケも、また二人はいつか必ずどこかで会えるという、確かな心頼みからくるものでしょう。
そのまた巡り逢えるときが、いつか二人が生まれ変わって、または別の次元にループし、たとえそれが途方もない長い時間であっても、奇跡に頼るような僅かな確率だとしても……。
帝都上空を漂うキララは、問題のテリパ達の冒涜的な雄叫びや、様々な破壊音、か弱き被害者たちの悲鳴、嬌声、嗚咽を聴き、この狂気と怨嗟が渦巻く街の暗闇を見つめ、ひたすら今はどうすることもできない己の無力を悔やむのでした。
「人間たちよ、見てるから、アタシは今は見ててやるから、人間たちが愛と優しさを取り戻して明るい未来を作るその日まで、こうして見続けてやるから!」
そしてキララが別れたマギカを思い虚空につぶやきました。
「あのね、マギカ……、私だってわかってるんだよ。私も同じ陰キャブスだから……、こんないかにもなキラキラ魔法少女ドレスは私も似合わないってことくらい。できることならアタシはずっとマギカと一緒にいたかった。穢れて呪われた黒魔法少女でもよかった。マギカと一緒なら。……だから光の魔法少女なんてなりたかったわけじゃないの。でも、でもね、アタシは今、光の魔法少女に生まれ変わって、私のなすべきことを知ってしまったの。それは光の魔法少女の使命。マギカが罪と罰を背負うなら、私もこのクソ重苦しい祝福という宿命を胸に抱くわ。だからマギカとはお別れ、また逢う日まで、必ず逢えるその日を信じて、ああ、親愛なるマギカ。アタシの永遠の友達……」
そしてキララは白いフクロウに身を変え、闇夜の彼方へと飛び去っていったのでした。
再び天涯孤独となったマギカ。そのマギカの受難は尚も続くのでした。
羊鳴館のの周りに、野獣か淫獣のような目をしたテリパたちがどこからともなくマギカの位置情報を嗅ぎつけ集まってきたのです。
魔法少女マギカとイッパツヤリたい♡ ハメたい♡ お情けが欲しい♡ あるいはマギカを憎むあまり暴行を加えてブチコロしたい! などといったシンプルな欲望が爆発的な瞬発力をもって行動に直結するのがテリパたちなのでした。
そのマギカとのH行為や、強い殺意に執着するテリパは、元々アンチ黒魔法少女派のマギカスレイガーあがりのマギカと因縁のある連中が多くでしたが、中には狂信的なマギカ信者であったはずのマギシタン男子の中で、例のマギカと犬神卿とのベッド流出事後写真や結婚疑惑報道を知って幻滅、落胆、嫌悪、憤慨、激昂、逆上を経て、神聖なアイドル魔法少女であったマギカに裏切られたといったコアなファン心理から、打って変わって超アンチとなりマギカに激しい憎しみと恨みをもって攻撃側に転ずる者も少なくなかったのです。
さらにテリパ発症してない健常者男子も、その話を嗅ぎつけ、健康(ただし頭は不健全)な男子ならではのシンプルなエロ目的でとりあえずタダならひとつ並んでみるか、といった便乗組も多数参加し、かなりの行列ができたのでした。
ここで不思議と列にならんでいる凶暴なテリパたちは、特に他のお客さんらとトラブルを起こすことなく、静かに順番を待っていたといいます。
既にこの事態とエロな身の危険を魔法少女のカンで察知したマギカでしたが、それでもマギカは姿を隠すこともなく、シャワーを浴びて心の準備とを整え、再び全裸でベッドに横たわり、悩ましげな笑みとポーズでこれらお客が来るのを待ち構えりました。
そして行列のトップはマギカがいる部屋の前まで迫っておりました。
ガンガンガンガンガン!!
「マギカさーん! 開けてくださーい! そこにいるのわかってるんですよ! ひとつお願いがあるのですが、一度お願いしたのですが♡ グヒヒヒヒ!」
「頼みます、単刀直入にやらせてください!」
「おら! マギカ! 出て来い! オメーのぐちょぐちょま〇こにオラのギンギンチ〇ポブチこまさせろ!」
「マギカさん、よくも裏切ってくれましたね! あなたは淫乱売女パパ活エロ娘ではないですか、全国の魔法少女ファンと僕に謝ってくださし! そして死ねやあああ! 殺したらあああああああ!(泣)」
ギイ! バタン!
どどどどどどどどどど!!!
先着のテリパが扉をガンガン叩き、今にもドアが壊れそうになったとき、ふいにマギカが魔法で開錠すると、いきり立ったテリパのお客サマがいっせいに流れ込んできました。
マギカはそれを笑顔さえ浮かべ待ち構えていたのです。
「はーい! みんな、いらっしゃーい♡」
初見で殿方たちは一糸まとわぬマギカの姿を見て、先走り液より先にフィニッシュの白い液をだしてしまい果ててしまうものが多数でしたが、中にはマギカに最接近し、kissをしたり、えっちなトコに手をのばしたり、ぺろぺろしたりする我慢強いエロ上級者もおりました。
ただマギカはそんなテリパの狼藉に一切の抵抗さえすることなく身を任せ、むしろ慈愛と奉仕の精神をもってこれに応じていたようにも見えました。
そこにはもちろんマギカに何か考えがあってのことでした。
このときマギカは得意とするとある秘術で、暴徒化した彼らへの改心、魂の浄化を図っていたのです。
それはマギカが転生前の人間だった時代から不思議な異能力として備わっていた「チュウチュウ悪魔さん出てらっしゃい」という秘術でした。これは黒魔法とはまた違ったメソッドで、その昔R子の悪魔成分を見事に抽出分離したといわれる天性のスキルでありました。
ここにきてマギカはこのスキル(略して「チュウ出し」)をさらに改良を加え洗練させて、直接口吻での吸入でなくとも、皮膚や粘膜(性器などH部位)の接触、または被験者の射精時による精液との同時抽出も可能にせしめ、各種のエロ行為から暴徒らの悪魔成分を乖離、抽出し凶悪化したテリパらの心身を正常化(賢者化)させていったのです。
マギカはダミガンの乱用で負の感情と精神錯乱とが業のように心身に蓄積され、高濃度になっていった人間のマイナスエネルギーを、マウストゥーマウスや、マウストゥーペニス、マン〇トゥー〇ンポなどの性的な身体の密着や結合などでそれをマギカの体内に吸収し魔法の力でろ過、解毒、除染していったのです。
たくさんの辛抱堪らぬ様子のお客相手にマギカは、指やお口やDカップおっぱいの谷間や、本命の下のお口や、その隣のもうひとつの穴ポコと、あとマニア向けに髪の毛、脇の下、足裏などを総動員してのまさに体を張った性&悪魔成分処理ボランティアでした。そしてそれは結構な高負荷の重労働でした。また自浄に必要なMPもかなりの消費量に及びました。
そのマギカの懸命なチュウ出しの構図は、傍からみるとのオゲレツな集団乱交ものAVそのもので、ここはマギカもサービスの演技なのか、素の快楽なのか判別でき兼ねる表情と声音で、
「アン、アアン……、いいわー、うれしー、もっとちょうだい、もっとだして~♡」などとエロエロボイス全開をヘビーリピートし、ぶっかけられた液汁まみれの光りぬめるカラダをクネクネさせ、エロ堕ち調教済み非処女メス顔全開で気前よく次々に訪れるお客(患者?)のお相手をいたしておりました。
ただマギカをよく知る者は、その行為の根底には、人間に対する深い憐憫の情と、真の救済を望む一念による尊い自己犠牲であると解釈されましたし、またそう信じたいところでもありました……。
少なくともマギカの「チュウ出し」で、悪性リビドー共々悪魔成分を体外に放射出し、マギカに吸収されることで心魂洗われし者は、スッキリと精神的に昇華されて敬虔ともいえる面持ちになり、またはその頬に改心の涙さえ流し、マギカをまるで菩薩か女神のように礼讃し崇め奉り、また新たにマギカファンとして彼女に帰依、改宗することうけあいだったそうです。
そして悪魔成分をヌかれた賢者たちは、皆我に返るとそのままお家へと帰っていかれました。
しかしこの末世の狂騒にインスパイアされたテリパの数はあまりにも膨大で、孤軍奮闘のマギカにはとてもではないキャパオーバーでした。さらにマギカがその身に吸収した多くの悪魔成分もすでにマギカが体内で自浄できる処理量や許容量といったものをオーバーフローしていたのでした。その結果マギカの身体に分解できなかった悪魔成分がリアルに質量を伴った瘴気となり、それが高濃度で凝縮されていき、次第にマギカの身体に深刻な影響を及ぼすようになっていったのです。
ただマギカもこの亡魂帝国の終末的な事態を収めようと必死であり、すでに自身の罪と罰との自責で我が身がどうなろうと構わないといったブレない覚悟が彼女を突き動かしていたのでした。
今度こそ、人間たちと戦わずに役に立てる。その思いがマギカのすべての救いでした。
ここでマギカが受けた悪魔成分の過剰摂取は、その代償としてマギカの肌に醜いアザのような染みをいくつか浮かばせました。
そして彼女の柔肌に悪魔的な紋様がまるでタトゥーのように連なり広がっていきました。
やがてそれらが全身を覆い、ついにマギカの全身が漆黒に染まると、今度はそこに醜いイボやらコブやらがブクブクと表れていき、さらにその上に硬質化した皮膚が、まるで蟲類の甲羅のような外骨格を形成していきました。
同時に少女のスタイルの良い体型もムキムキとゴツク変化し、最終的にマギカの顔にも瘴気の影が差し、その美少女の面影さえ失い始めたのです。
彼女の目が金色に変化し、口が裂け無数の牙を剥き、耳は大きく尖り、奇怪、醜悪、というよりはガチな悪魔そのものの姿へと変っていったのです。
まさに人外、黒魔法少女の真の姿ともいうべき化け物へと変わっていったのでした。
それは以前チェンジした『ヴァルプルギス・ゲシュタルト (闇魔性形態)』よりもさらに恐ろしい頽廃的、冒涜的な終末の獣の形への変化でした。
そしてその体は人間たちから集めた悪魔成分のマイナスエネルギーによりパンパンに膨満し、身体の内側からみるみるとマギカの嵩を巨大化させていったのです。
マギカはその急速に膨張するサイズ感をもって部屋の天井を突き破ると、背中に蝙蝠のような大きなウイングを広げて身を浮かせました。そしてそのまま上昇し帝都の上空500m付近でホバリング状態を維持しました。
そこでさらにマギカは巨大な口を広げ、スーと大きく息を吸い込むと、今度は眼下に集まるテリパの悪魔成分を非接触型サイクロン方式での吸引を開始しました。
帝都にいまだ大勢いる暴徒化パーソンズは、何故か異形化したマギカのもとへと集まり出し、羊鳴館の先客同様みるみる悪魔成分をヌかれ、へなへなと地に腰をつけて穏やかな賢者へと戻っていくのでした。懺悔の涙と、事後のお汁でパンツを濡らしながら。
また素に戻った人たちはそんな異形化マギカを見て、こんどは恐れおののきました。
「おわああー、何だアレは?」
「化物だ! 悪魔だ! 逃げろー!」
「この世の終わりだ! 世界の終末がはじまるぞ!」
と大声をあげ、蜘蛛の子を散らすように逃げまどいました。
それもそのはず、そこにいる元マギカだった恐怖の異形は、すでに慈愛に満ちた清く正しい聖母や魔法少女のオーラを失い、ただ邪悪と破滅の象徴ともいうべき怖ろしい怪物が中空から凄まじい狂気の圧を放ち君臨していたのです。
既にマギカの心のほとんどが悪魔成分に支配され、マギカのピュアに澄んでいたソウルコアはどす黒い高濃度瘴気が充満し汚染されていったのでした。
それでもまだマギカは人間たちの悪魔成分を吸収し続け、身体がどんどん巨体になっていくのでした。そしてその異形の怪物の中の人マギカは自身のリアルな最後を悟るのでした。
「ココロが消えていく、このまま私が私ではなくなってしまう。私はこのまま本当の闇のダークネスパワーを解放して、真の終末の獣となり、この地上を破壊蹂躙しつくすかもしれない……、っ、誰か、私を止め……」
とそのとき、マギカは光のイメージの中で、ある者の姿を認めました。その者は両手を広げ、いまにも崩壊しそうなマギカを呼んでいるような気配を感じました。
そしてマギカは最後の希望を頼ってか、おもむろにその者の胸へと身を預けました。
その者はマギカの身体を受け止めると、優しく抱きしめました。
その者は少女でした。マギカが昔から良く知る少女と思えました。
「………マギカ、大丈夫?」
「この香り、懐かしいわ………。あなた、R子ちゃん、ゴコちゃんなの?」
奇跡的な何かの力か、マギカは最後の最後のこの場に及んで、自分が良く知る少女、それはその昔大変仲良しであったR子と思われる少女との邂逅に運命的なものを感じ、すこし心が解かれるような感じになりました、が……。
「えっとジブン、ゴコちゃんはゴコちゃんなんですけど、残念ながらマギカのいうゴコちゃんと違くって、ごめん♡」
「はっ……!?」
その答えを聞いた瞬間、再びマギカのココロが萎えて凍てつきました。
「蛇墓場苺子!」
「やっとアタシのものになってくれるんだね♡」
そのR子と思われた者は、イメージの解像度が上がると、概念が実体化し、邪神蛇墓場苺子の姿になりました。
「マギカちん、やっぱりアナタは最初から限界因果少女だったのよ♡ そしてこの後この世を滅ぼす滅世主となるんですが……。さあはやくその真の姿を見せてよ! そしてイチゴコのためにクソ人間どもを一匹残らず滅ぼしちゃってくださいな♡」
そういうと蛇墓場苺子はマギカの身体をギュウと抱きしめました。さらにピンク髪の無数の蛇を使い、マギカの喉元や手足など全身に隈なく巻き付け、これらを邪神のバカ力で締め上げました。
「うぐぐぐ、そうはいかないわ! あなたの思い通りには、まだあの子が。ぐふ……」
「くーっ、マギカちゃん♡ ハアハア!(歓喜)」
愉悦に忘我した苺子のギュウと抱いた腕と髪の毛蛇がフルパワーの限界を超えると、
パリン!
確かにマギカの中で何かが壊れてしまったのです。
それは魔法少女の命というべきソウル・コアでした。マギカの命と記憶や感情のすべて、それはマギカそのもの。
「(……あああんっ!)」
そして魔法少女マギカは喘ぐような断末魔をあげ、その命の活動を永久に停止しました。
このとき、どす黒い高密度瘴気が充満したマギカのソウル・コアは、邪悪成分による腐敗と内部圧で極めて脆くなっており、既に崩壊寸前だったのです。その彼女の最後が苺子により少し早く訪れてしまいました。
苺子は満面の悪い笑顔をしてマギカの身体を中空に放りました。
マギカの最後の理性、というよりは真のマギカ自身であるマギカのココロが消え、抑制されていた邪悪放射性成分が連鎖的に核分裂し、膨大な邪悪エネルギーを獲得し、結果、異形をも超越した闇の眷属の最終形態たる破壊神がマギカの身体から目覚めるのでした。
――マギカ怪獣化
地面に落下したと同時に死んだはずのマギカの身体から、夥しい火柱と瘴気の煙が立ちあがり、その黒煙の内から最終的に全長7、80メートルはあろうかという巨大な獣が現れました。
それは怪獣ギラザギを二回りでかくしたような大怪獣で、その怪獣化マギカは、当該組織魔少対より「モンスターβ マギュラ」と命名されました。
当然マギュラは魔少対から駆除殲滅対象として直ちに軍事部隊に攻撃命令が下されたのです。
未だ沈黙中の「モンスターα ギラザギ」の後処理もままならぬタイミングで、新たな脅威マギュラ出現に帝都は混乱の倍掛け状態へと陥りました。
ほどなくし対怪獣特別チームのHMAP(ヒュマップ)の戦闘機ヒュマップピジョン3機が現地に到着し、マギュラに対し先制攻撃を開始しました。
また付近で待機していた陸軍と海軍の旧式の戦闘機や戦車も、上位機関のHMAPに指揮権を委ね、本作戦に参加しました。
実に都市部人口密集地域にも関わらず、圧倒的な火線がマギュラに集中しました。
これにより一度夕日が落ちたはずの帝都の空は攻撃軍の砲火により、再び赤く染まりました。
マギュラは敵機の集中攻撃にも微動だにせず、硬い外皮でそれらのダメージをすべて無効化しました。
そしてマギュラは頃合いで反撃に転じ、目から熱線ビーム、爪からロケット弾、羽根の内側からミサイルのような無数のトゲを放出し、展開するHMAP戦闘機やその他陸海軍の主力兵器を次々に火を噴く鉄屑にしていったのでした。
次にマギュラは何を目指してか、前途にあるビル群を踏み倒して帝都を南下していきました。
そして魔少対からの次なる緊急要請で、現在海軍横須賀基地でメンテ中のある対魔法少女最終決戦用トンデモ兵器が再起動しました。それは当局が誇る対怪獣、魔法生物の切り札ともいえるものでした。
――対魔法少女最終決戦用ヒト型超電磁重機動マグネ空爆ロボ 三式機獣メカニ・ガンドロウ
「いやなのですー、もうあれには乗りたくないのです!」
そのトンデモ兵器の適性搭乗者である浄閑寺詩穏は対魔法少女決戦型兵器メカニ・ガンドロウに乗るよう担当軍医数名から無理矢理腕を引かれ搭乗を強要されていたのです。
「ったく根性ナシのヘタレガキが! 乗れったら! 乗んなさいな! てめえの親の仇くらい、てめーで仇討ってこいってーのっ!」ガス!
「ぐえふ!」
凄い力で踏ん張るシノンに業を煮やした担当指揮官佐治洲塔子(モモコ2nd登場の親衛隊士官)は、非常にも詩穏にマジな腹パンを食らわせると、そのまま体をくの字にまげ蹲る詩穏のスカートを捲り上げ、おパンツずり下ろすと怪しい髑髏マークのケースから注射器を数本取り出し、激しくお尻ぺんぺん後、無防備となった詩穏のお尻たぶにヤバめな色をした薬を数本分お注射したのでした。
すぐさま弛緩した詩穏が白目を剥き、声にならないうわ言を発しているのもおかまいなしに、脱がせたおパンツの代わりにパイスーを装着させると、エレベータからメカニ・ガンドロウのコックピットへと足蹴で押し込みました。
「メカニガンドロウ緊急スタンバイ! 第一カタパルトへリフトアップ後、第二兵装で射出シロ!」
次に詩穏が目を覚ますと帝都上空でした。そこで飛翔体形態のオートマチックは解除され、脚部を伸ばし、着地体勢をとるメカニ・ガンドロウでした。
その着陸地点数百メートル先にはマギカの成れの果ての巨大怪獣の姿があり、それはパイロットの詩穏にもアラーム表示と共にモニターで確認されました。
薬物により詩穏は半ば人としての意識と感情を失っている様子であり、このときは目の前の魔法少女怪獣を倒すマシーンと化していて、メカニ・ガンドロウとほぼ完ぺきにシンクロシングしていたのです。
空爆飛行形態からヒト型戦闘形態にちょい変形したメカニ・ガンドロウは、夥しい土砂を巻き上げながら地面に着地すると、「パッパカパッキャーオーーーーーン!」と勇ましく雄叫び(戦闘モード起動音)を上げ、ファイティングポーズを決めると、標的である怪獣マギュラと絶妙の間合いでエンゲージしました。
バババババリバリバリバリバリバリバリバリリーーーーン!
ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュルルーーーーン!、
すかさずメカニ・ガンドロウは、腕部の連装ロケット砲と、脚部のミサイルランチャーを斉射しました。
ほぼ全弾が見事ターゲットに命中しましたが、実際はマギュラの皮膚の重装甲に阻まれ、攻撃の効果は皆無でした。
次にメカニ・ガンドロウは両腕をグーの鉄拳にして怪獣に向けると、これをロケットのように飛ばしました。
するとマギュラは手前にバリア(魔法少女の結界のような光の壁)を展開しこれを阻みました。
ズッガガガーーーーーーーーーーーーーーーン!
放たれたロケットパンチは強烈で、ナパーム弾の5、6倍はあろうかという爆発に周囲のビルが吹き飛び瓦礫となって倒壊しました。
しかしバリアに守られたマギュラは無事でした。
硬い装甲と謎バリアでマギュラの防御力は計り知れないものでした。
ただ、これを見た佐治洲塔子ら後方指揮官は、緒戦はまあまあそんなもんそんなもんだろう、などと割とお気楽といった感じでモニター越しにメカニ・ガンドロウを監視してました。
そして次にメカニ・ガンドロウの背中の巨大な砲塔が展開し、マギュラに向けられると、佐治洲塔子が「よっしゃ! 勝った!」とニンマリ呟くと同時に、詩穏がマギカ千夜一夜城を粉砕した件の必殺兵器、収束メガエレメンタル・デストロイヤーキャノン砲のトリガーを弾きました。
ンギュドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!
凄まじい熱量と衝撃波を伴った極太ビームが怪獣マギュラの全身に浴びせられました。
マギュラは幾分目付きが厳しくなったように見えましたが、致命的なダメージを受けているような様子はありませんでした。
そればかりか、黒魔法少女の結界バリアと同性質かと思われていた怪獣の謎バリアはちゃんと仕事をし、収束メガエレメンタル・デストロイヤーキャノンに破砕されることなくビーム粒子を弾き返していたのです。
「な、何いいい?」
佐治洲塔子ら指揮官たちから余裕の顔色が消え失せました。
すでにマギュラの本質は魔法少女マギカ由来の黒魔法のエレメントスとはまったく異なった性質のダークネスエレメントスに変異していたのでした。
それはもはやマギカとは別次元の魔法生命体というべき証でした。
またマギュラに魔法少女マギカのリベンジの念があるのか、恨みのこもったような咆哮をメカニ・ガンドロウに向けると、その叫び声が次第に破壊衝撃音波となり、メカニ・ガンドロウの機体の随所に火花と小爆発を誘発させたのです。
「はっ!」
この謎音波でようやく正気に戻った詩穏は、目の前のマギュラを見て絶叫しました。
「きゃあああああああああ! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!」
次にマギュラは体を真横に回転させると、長い尻尾の先でメカニ・ガンドロウの首筋を掠めました。するとその鋭利な尻尾の先はコクピットがある頭部を一刀両断しました。
首からもげた頭部は回転しながら品川ふ頭沖に着水しました。眼をグルグル回しながらもパイロットの詩穏は無事でした。
その後メカニ・ガンドロウはマギュラの眼ビーム、羽根ミサイル、口吻破壊超音波、腹部最終破壊粒子砲のフルコースを受け、鋼鉄の全身が盛大な爆発とともにバラバラに崩れ落ちていき、重度の損傷を経て大破、修復不能の全損したのでした。
そして帝国軍ならび帝国政府の関係者は、燃える帝都の街をバックにそそり立つマギュラを見て、焦燥と絶望に一切の言葉を失いました。
ギィエーーーーーーーーーン!!
業火の中で怪獣マギュラは帝都のある方向に咆哮しました。
まるでそれは獣の遠吠えのように、同族へ呼びかけるかのようにも思えました。
その叫びは愛宕山の倒壊した帝都タワーで活動をやめたギラザギのもとにも届きました。
するとそれに呼応するかのようにギラザギの巨躯がピクリと反応しました。
正確に言うとギラザギの体内に宿る何かに……。
突如、その怪獣ギラザギの外皮に隈なくヒビが入り、分厚い皮膚や鱗が崩れ始めました、そしてさらに驚くことに中から謎の巨大な黒い影がそれを突き破り出現したのでした。
蛹のなかから新たな成虫が出現するかのように、それもまた怪獣の姿形をしていました。
それは紛れもなくギラザギの中から現れた別固体の新たな怪獣だったのです。
――新怪獣出現
その怪獣は全身黒い身体をした、オーソドックスな恐竜型のタイプでした。
グゥオーーーーーーーーーーン!!
その怪獣はマギュラのいるであろう方向を見据え、大きく咆哮し、何かに導かれるかのように歩き出しました。
「あれ、ナハトさんじゃあ……」
現場でその怪獣の出現をその目で見た肝田が呟きました。
「ナハトさん……、なのか……?、あの怪獣が……」
肝田の憶測になんの根拠もなかったのですが、また桐島もそれを否定する言葉もありませんでした。
ただ怪獣の目というか雰囲気がなんとなく、いなくなった忍者処女ナハトの面影があるようで、このとき二人にはそんな風に見えもしたのでしょうか。
新怪獣は「モンスターγ ナヴァドン」と命名されました。

次回最終回! 大怪獣化ナハト×マギカの最終決戦 魔少女たちの終末のカタストロフィの行方は?