FC2ブログ
モモイチゴ100% キミと♡りばいらぶ

「おっぱい」

それは夢の中のモモコをとても幸せな気分にした。
「むふ、むふう、むふふうーーん♡」
大きくて柔らかくていい匂いのする絶品おっぱいの谷間にモモコは存分に顔をうずめ、その満ち溢れる喜びと安堵を貪るようにし深い恍惚の奥底に溺れていった。
どのくらい時を忘れていられただろうか、しかしここで楽しい夢は終焉を迎えることとなった。
ふいに現実世界から彼女を呼ぶ者の声がした。

「モモコー起きろ! こら、起きろ、モモコ―! 授業中だぞ! いい加減目を覚ませ、やいモモ公ーっ!」
「ふはっ? おぱよう……、いえお早うございます!」
クラスメート一同「わはははは」
「あのなあ、お早うってもう昼過ぎだぞ、幸せそうな寝顔してやがって、さぞ良い夢でも見てたんだなーお前は……、まったく!」
クラスメート一同「わはははははは」
「わっ、ここどこっ? て、学校? てか何学校? みんな大きいし、制服だし……、なんでアタシがこんなとこに?」
「おい、寝ぼけてんのか! それより居眠りしてた罰だ、この黒板の問題解いてみろ、この間の復習だ! 寝ぼけてるとはいえ高校2年生なら誰でも解る問題だぞ。ほらっ前出てきてやってみろ!」
「えええ!? 高校2年生って、あたしまだ小4なんだけどなー?」
「は! お前何言ってんだ……。あたし小4って、小学校時代の夢でも見てたのか? それとも現実逃避の幼児退行か?」
「え? なんで? あれれ? なんで私が男子用の学生服なんて来てんのよ? それになんか変な感じ!(特にあそこらへんが……)」
「グダグダとわけわかんねーこと言ってねーで、いいから前出ろってんだろがよ! しまいにゃ引っ叩いて目え覚まさせんぞ! こら!」
「やーん、乱暴しないでー」
「……このヤローさっきから女の子みたいなリアクションしやがって、健全なエロ男子のくせに、ちゃんとち○こついてんだろがよ!

「ち、ん………!?」
モモコ、いや、この世界ではモモ太と呼ばれているその少年はここでズボンの前の不自然に隆起した箇所を手で押さえつけると、
「あっ、えっ、わあああ! 何、何、何これ、何んだこれ!?」
そうなのだ。小4女児モモコが目覚めると、そこは別次元の別世界だったようだ。モモコは転生したのかも知れないし、覚めない夢の続きなのかも知れない?
とにかくその世界では「並野モモ太」高校2年生男子というキャラ設定になっていて、実際問題、股間にも別のものであるブツ(イチモツ)が一本装備されていた。
クラスメート一同「わははははははは」
クラスメート男子A「あいつ、寝起きでちょい大っきくなってやんの」
クラスメート男子B「絶対エロい夢見てたんだぜ、超分かりやすいのな!」
クラスメート女子C「最低!」
クラスメート女子D「最低!!」
クラスメート女子E「最低!!!」
再びクラスメート一同「わはははは、わはははははは」
「何が何だかワケ分かんないよ。何で私が高校生で、しかも男子になってんのよー(泣)」
「そうか、わからんのか、お前なー本当に小学校からやり直してこい!」
「そうさせてください!」
「……真顔で言うなよ。はあー、おまえ今日補習決定な、よかったな苺子! 今日からお前に補習仲間ができたぞ!
ってゴ子ォ、オマエまた寝てんじゃねーか! 一日何度寝すりゃあ気が済むんだよ! 
寝る子は育つとかいうけど、オマエが大きく育ったのはそのパイオツだけじゃねーか! 頭の中身ももっと育ってもらわねーと、一生アホ毛JKのまま人生終了だぞ!」
「ぷわはーーーーい♡」
クラスメート一同「わはは……」

と大きなあくびをしながら顔を上げ、大きな胸を大きく反らしたその少女、名を「只野苺子」という。
キャララララン♡ (モモ太が苺子を見て♡♡♡な衝撃を受けるときの効果音、背景はピンク色の光彩)
 
 モモ太はその少女、苺子とかいうアホ毛ピンク美少女(with巨乳)にシンパシーともデジャブともいえぬ何か尊い念を感じた。
しかしその意識は、視点移動とともに次第に彼女のおっぱい部分にシフトされていき、そのおっぱいの大きさといい形を見たときそれらの感覚がある確信に変わった。
そうなのだ。それは確かに先ほど夢にまで見たあの理想的なそれ(おっぱい)そのものであった。
おっぱい、乳房、バスト、おチチ、胸のふくらみ、それらのイメージが、苺子のそれに重なりモモ太の脳内をグルグルと逡巡した。
それは、モモ太(モモコ)にとって、懐かしき母のおっぱいとはまた違った、温もりと安心感を伴った憧憬や崇拝の対象であったと同時に、ここに男子化したモモ太(モモコ)にとってはド直球エロ観点での興味の対象であったのは想像に難くない。
挙句モモコは人としての色々なことを忘れてしまい、思いの丈のまましばらく絶品苺子おっぱいに目が釘付けになってしまった。

「ほけー、ニヘラニヘラ」

クラスメート男子F「あいつ、ゴ子の胸ガン見して呆けてやんの!」
クラスメート男子G「あこまで露骨だと見てるこっちがハズいな……」
クラスメート女子H「えろっ!」
クラスメート女子D「やばっ!!」
クラスメート女子E「きもっ!!!」

 放課後、校庭にスポーツ部のかけ声が響きわたる青春(あおはる)逢魔が時タイム、2年Cクラス教室内には先の原須先生(令和の今日日に稀有なパワハラ&セクハラ教師)とデキナイ子二名(モモ・イチゴ)子が取り残されていた。
「なんだ苺子、問題集忘れてきたのか。しょうがねーなあ、おいモモ太お前見せてやれ、ほら苺子、モモ太の隣のの席へ移れ」
「ちゃあーす、ごめんね、ちょうイチゴコにもそれ見せて欲しいんですけど♡」
「うわっ、ちかっ(近くで見ると、この人かなり可愛い! ドキドキ)」
モモ太、苺子のグラビアアイドル並みの容姿に照れて、つい視線を下方修正すると、そこには間近に接近していた二つの問題の膨らみがあった。
ここでさらに苺子がモモ太に接近すると。
「(うわっ、今当たった!、柔らかいものが肘のあたりに、もしかしてそれは…… 、ゴクリ、絶対当たった!)」
「コホン、では最初の問題……」
ツルウウ、ツルルル、ツルルル
「はい、……原須です。うん、私だ、おおっ、ど、どうした。うんうん……、いや今仕事中なんだけど、何だって? うんうん……、いや、今は会えないって、後でそっち行くから、いや、そうじゃなくてな、今仕事中だから、とにかく後で行くから、え、あ、ああ、愛してる。愛してるよ。もちろん愛してるから、女房は関係ないから、だから私が愛してるのはぴょんぴょんちゃんだけだって! いやいや、まて、まて、まてよ……、ぴょんぴょんちゃん、ぴょんぴょんちゃん……!」

とその教師は懐内に隠したスマホに小声で応答しながら、黒板に「自習」の文字を書きなぐると、いそいそと教室から出て行ってしまった。

残された教室は程よい静寂と倦怠感に包まれた。
間を図ったように苺子が口を開いた。
「ふうー、やだよね、人間の大人って……。にしてもぴょんぴよんちゃんて(笑)」
「え、ああ、ははは……」
苺子に話を振られるもモモ太はとっさのことでに言葉に困り、彼女を直視する代りに、その胸元をチラ見するといった童貞リアクションを取るのが今のモモ太の精一杯であった。
「て、キミ、さっきからドコ見てんのよ!」
「え! あ! いやいや、そのあの、別に……、ご、ごめんなさい! ……ばっかり見て、ご、ごご、めん、なさい(泣)」
「いいよー、別に(笑) アタシは問題集見せてもらったし、おあいこってことで♡」
「ご、ごめん、なさい……」
「うふふ、キミは分かりやすいなあ、人間にしてはキライじゃないよ♡」
「あ、ありがと、ございます……」
「そうだ、ねえ、屋上いこ!」
「え、屋上って、今自習って先生が……」
「いいじゃん別に、あんなクソニンゲンの言う事なんてどうでもさ! 固いこといわないでさあ、ふあああああ!」
とまたも体を反らせる少女の胸のカーブが強調され、その光景にまたもモモ太は本能の赴くままにある箇所を固くしつつも、気持ちはしっかり懐柔されたようで、その少女の言に従うことにした。
「そうですね、じゃあ貴方様に従います……」
「貴方様はヤメて、ゴ子でいいよ! ゴ子、みんなそーゆうし」
とすでに立ち上がり歩き出したゴ子こと苺子に、すぐには立ち上がれずも後を追うモモ太であった。

立ち入り禁止と書かれた鍵の壊れたドアを開けると、町並みが遠くまで見える屋上へと通じた。
「先客がいたか」苺子の呟きの先には男女カップルの学生が二組ほどかなり身体を接近させ中々の♡♡な状態であった。
苺子は迷わず屋上のさらに屋上(階段の出口の屋根で主に給水塔などがあるいわゆる塔屋の屋上)へと移動すべく壁に打ち付けられた梯子を登り出した。
モモ太は一瞬躊躇したが、下からパンツ丸見え(お約束のいちごパンツ)の苺子の後に続いた。
ここでもモモ太は梯子を昇る最中、どうしても眼前のいちごパンツに抗う術もなく、またしても股間に何気邪魔っけな物体が自己主張を始め、そのソリッドな感覚が両脚の運動を妨げるかのように作用し、結果心もとない梯子にうまく足を掛けられずにあわや転落の危機にも見舞われた。
梯子を上り終えた苺子がモモ太に手を差し伸べ、登頂到達の手助けをしてくれた。
愚鈍なのか大胆なのかモモ太はその握った指を離し難く、しばらく彼女の細い手を握ったままでいた。
さりげなく苺子が合図代わりにニッコリ笑うと、モモ太は我に帰ったようにぱっとその手を解いた。
次にその手の置き場を股の間にすると、そのまましゃがみ込み無口になってしまった。
モモ太は羞恥心と自己嫌悪で泣きたい気分でいた。片や苺子は泰然と楽し気な鼻唄なぞに興じていた。

モモ太は次第に謎の力に癒されたのか、次第に心が落ち着き、次の瞬間にはまたちょっぴり幸せな気分になっていった。
するとまた脳内はすぐ隣のおっぱいに占有されていき、不思議と身も心も元気を取り戻した。
そしてモモ太の中のモモコは実感した。「(男の子ってこんなにもおっぱいのことばっかり考えてるんだ。おっぱいがあれば幸せになれるんだ。人生おっぱいがあれば生きていけるんだ。いいなあ男の子はシンプルなバカで……)」

その屋上のそのまた上の屋上から眺める今日の空は、禍々しいほどに黄金色を帯び、何かとてつもない奇跡、あながち神との邂逅さえ予見するかの如く感じられたが、当のモモ太はもっか隣のクラスメート只野苺子との邂逅で頭も胸もいっぱいでそんな神聖な顕現は、例え今ここにあったとしてもてんで気付かぬといった風であった。
「男もバカだけど、女もバカ、バカバカバカ、ニンゲンってホントバカ! アタシが言うな! だけど……」
「へ?」
ふいにモモ太のココロを見透かしたようなことを苺子が言った。
「私はニンゲンが嫌い、キミは?」
「……ニンゲンが好きか嫌いか? そうだね、好きな部分もあれば、嫌いな部分もあるかな……」
と苺子の胸と自分の股間を見比べながらモモ太はそんなふうに答えると。
「期待通りにつまんない答えだね……」
「すみません……」
「あやまんなくていいよ、それ、マトモなニンゲンの証拠だから。全然いいことだよ」
「ありがとうざいます……」
「アタシは多分マトモなニンゲンじゃあ無いんだと思うんだ。バカで頭おかしいし、友達いないし、人も自分もまったく愛せないし……、ねえどう思う?」
「そ、それが本当で、そして辛いことなら、貴方様、いえゴ子さん様を助けてあげたい……」
「助けるって? キミが? このアタシを……、アハハハハ、キミって神かよ!」
モモ太、顔を左右に振り、
「神はむしろ貴方様、いえゴ子さん様の方です。あなたはきっと、きっと女神様です……」
とか言っちゃう。
「ちょ何言ってんの(笑) え、それって軽くコクり?」
「(こくりと頷きそうになるのを堪え)あ、え、その、あの、あわわ!」
しばしモモ太ことモモコ一切の言葉を失う。動揺なのか恋のトキメキなのか、とにかくモモ太の心臓がドキドキバクバク苦しくなる。

頃合にイチゴ子が顔を近づけトドメの一言。

「ねえチュウする?」
「!!!!!」

「私たち絶対前世で会ってるよね。キミと会った時から超デスティニーなんですけど……」
「はわわああああああ(顔を真っ赤にして目が渦巻き頭は沸騰)」
「……この世界は本当は間違ってるんだよ。全部でたらめな偽物の幻影なんだ。キミも私もこんなパチもんのなんちゃって登場人物なんかじゃない! きっと前世か別次元に本物の私たちがいるハズ。もしかして私たちって、そこでは恋人か兄妹だったかも知れないし、もっともっと強い運命と奇跡で巡り逢い、何度も生まれ変わってやっと結ばれた二人だったかも……。ねえそう思えない? 割とマジのマジで……」
「……なんか、アタシ、いやボク、この世界が作り物だと……、いや作りものか夢であって欲しいとさっきまで思ってた。さっきまでは……、(貴方様ことゴ子さん様に出会うまでは……)」

「ところでキミ、いえモモ太君ってチュウしたことある?」
「ないです、あるわけないよ、……いや、あ、ある! あ、あるのなの、ある、あった……。あれはたしか、別の記憶、そう別の世界……、別の次元? 前世? の記憶?」

「で、その時のチュウは何の味がした?」
「……蛇の味」
「やっぱりそうだ! アタシの前世の記憶と一緒! 確かにキミとアタシは前世か別次元で出会い、そしてチュウしてる。私が思うに、今ここでチュウすればお互いその記憶を呼び覚ますんじゃないかなって? そして二人目覚めて時空の先の壁を超えていけるかも……」
「あ、わわわ………」
「ねえ、もうチュウするしかないって! いいでしょ♡」
「(わあああああああああああああああ!!!)」

身体を最接近させ、運命の女神苺子のその唇と胸がモモ太ことモモコのココロに触れるほどの位置に収まったとき。
そしてモモ太が男の子のまだそれそのものであったことを再び後悔したとき。
宇宙がひっくり返るような情動がモモコの中で声にならない叫びを上げた。溜飲にすぼめた唇を小刻みに震わせながら。

はたして今ここでその唇を征服したら、神か悪魔の意思にでも触れるような、己の身、或いは外界に何か大変な事が起り、二度と取り返しのつかないような想像を絶する事態を招くようでいて、
本能の禁忌からくる底知れぬ不穏がモモコの中に激しく渦巻くも、それでいて、あまりにも人間的小市民的な、何より男の子的な因業がモリモリと鎌首を上げ、淡い甘美なる情熱のその先にあるであろう未知なる蠱惑の境地への誘いにこのまま抗える強固な意志も自信もなく、ただモモコの理性は混濁し、ギリギリの崩壊を堪えるのもこれ以上はもはやムリ! とも覚悟していく次第であった。

―――そして果てしない宇宙の彼方が見えた。おっぱいに包まれたかのような不思議な安堵感の中で。

おわり
p289
以上、モモイチゴによるラブコメ寄りの単なるおっぱい小説でした…
スポンサーサイト



モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ あとがきとして

↑誰も書いてくれないので自分で書く。ワッハハ、しかも偉そうに書かせて頂く……。

その前にひとつどうしても言いたいことがある。これだけは言わせてほしい。

私は「おっぱい」が好きである! 

↑何を言ってるんだ私は……(80年代アニオタ的ツッコミ)

おっぱいが好きで好きで最初はこのブログをおっぱいのみのブログにしようかと考えたほどである。
しかしながら私はおっぱいの絵を描くのが何よりの苦手で、ブログ開設当初はあまりその手のイラストを描かなかったと記憶している。
よく頑固なラーメン屋が納得のいくスープが出来ずに客に提供しないということがあるように、
私も納得のおけるおっぱいが描けずに、こんなもの客(ブログを訪問してくださる皆様)にお見せできるか!
などとばかりに掲載をよしとしなかった過去がある。こだわり、いや自分から逃げていたのだ……。
しかし何年か前にアニメのヒロイン(主に戦闘ロボットもの)ばかり書いていた時期があり、
当然そこは避けて通れぬ(軒並みピチピチ戦闘服なんですもの)状況となり、思えばこの時期おっぱいを描く練習を積んだといえよう。
そして亡魂女子プロレスの連載を開始すると、ほぼどのキャラも毎回水着でしかも複数なのでおっぱいを数描かなければならず、嫌というほど描き直し描き直ししながら(最後は泣きながら)描いたものだ。
おかげでおっぱいが少し嫌いになったが、場数も踏み自信もついた。
ただ場数も踏んで自信がついただけであって、決しておっぱいを描くのに一つもレベルアップしたわけではない……。
何気にあの丸っこいラインが何とも難しいのだ。特に私は〇が丸く書けないという絵描きとして致命的な欠点があるのでありますよと。
ゆえにおっぱいは未だ全くをもって上手く描けた試しがない。というより私が人体で上手く描けるパーツは何一つと無いけどな! ワッハハハ……ハ。

しかし小説ならいくらもおっぱいは書ける。だって字だから……。
おそらく私が当ブログでおっぱい、おっぱい言い出したのは前作のモモコが発端だろう。
小学4年生のおっぱいなんて昔のコロコロコミックやコミックボンボンのエッチな漫画程度で健康的で可愛いものとタカをくくっていたが、
このご時世を鑑みるに、コレって逆にけっこうヤバイんじゃねーか? と、ビビりが入り、やはり小説でもおっぱいは(これでも)自重した。

さておっぱいの話はこれくらいにして本題に入るとする。えーと何だっけ? そうそう小説の話だ。
絵で描くおっぱい並みに、小説で私的に描写に難儀するのがズバリ「恋愛要素」である。
絵で描くおっぱいが下手だとそのキャラはイタい感じになるのと同様、小説での恋愛の描写が壊滅的だと作品全体がイタい感じになってしまうからだ。
なので今回のモモコ2ndは林檎子と紀緒彦の恋愛? 要素を軸の一つに構想していたため、さあ困ったと企画段階で煩悶したものだ。
エロい官能小説は私が小学校3年生の頃書いた記憶(人妻熟女もの)があるが、恋愛小説やラブコメは書くのはおろか、あまり読んだことすらなく、これを上手く書ける自信が全くといっていいほどなかった。
なので前作から恋愛描写の勉強の期間、ついでに貴族社会の勉強も課題であったし、2nd連載までかなりの学習期間と準備期間を要してしまった。
が、結局見切り発車でスタートしてしまううう。
結局参考にしたのは貴族社会については「黒執事」と「ダウントンアビー」などを少々。
恋愛観は昭和のアニメ主題歌「タッチ」や「ラムのラブソング」の歌詞をノリで、あとは80年代アイドルや昭和歌謡の歌詞をエッセンスに構築した。
東海テレビのドロドロ昼メロエッセンスも採用したし、大映ドラマでお馴染みの江連卓脚本は到底真似はできないまでも大きな方向性を与えてくれた。
それにより林檎子の愛はイケナイ悲恋の物語となった、……かな。フフッ。もともと前作でそういう結果であったからここは致し方なしではあるのだ。
友達以上恋人未満、恋に恋するみたいな甘酸っぱくも切ない関係、林檎子の場合は兄ラノベ以上兄同人未満? 
で山あり谷ありのラブコメ展開&家族で見れないドラマ的展開が続き、最後は恋愛が成就することなく男女どちらかが死ぬエンド? という王道? で勘弁してくださいとか言っちゃう私。
まあ、林檎子のあまりにも短く破滅的な人生において、短いながらもヨカッタ探しの最終形ともいえる兄紀緒彦と過ごす日々はかけがえのない宝物であったはず。
だからちゃんと成仏してくれ、林檎子よ! (合掌)

この林檎子の回想パートが長すぎて、もはや林檎子が主人公といってもいいくらいのシリーズであった。ノワールや、ピカレスクロマンとか気取りたい気持ちもあった。気が付くと本当に長くなっていた。
そこは反省点のようでいて反省してないような。まあ、予算やスケジュールがあるわけでもないのでこれくらいいいっか、くらいの体たらくである。
その分、モモコは本来の主人公であるが今回は活躍少な目であった。てか皆無。
これは企画当初から決まっていたことなので何ら問題ない! (「こらー!」 byモモコ)
少し真面目な話をすると、前作でも言いたかったことだが、小学4年生の女児に何を活躍させれろというのか? しかも難事件、凶悪な敵組織を相手に。
ここは大人が子供をしっかり守ってやらなければならない。命を懸けてだ。現代日本の大人は無責任でだらしなさすぎる! と言いたい! 
「子供がまだ食べてるでしょうが!」by五郎のように、大人は子供とラーメンを守らなければならない。

実は「モモコシリーズ」では主人公に次ぐ、サブ主人公をダブルで用意していた。
かなり伝わりにくかったが桐島少尉と兄紀緒彦の二人である。
軍人と探偵という設定も主人公級のものをあつらえた。
まあ彼らは思ってたくらいに活躍したようなしないような感はあったが、あんまり出番を増やして出しゃばり過ぎるのも何なんで、まあこんなもんだろうくらいの立ち位置で丁度良かったのかもしれない。

逆に今回の重要なレギュラーキャラかつダブル敵(二大戦闘家畜人)でもある留依子と真樹太の双子はもうちょっと前面に出し、ストーリーに絡ませたかったのが今回の最大の反省点である。
留依子はメイド巨乳ロリという利点を生かし、もっとエロス要員として露出(二つの意味で)を増やしてもよかったのに勿体ないと心底悔やまれる。
また真樹太はド童貞(割りと気に入っているキャッチ)にラッキースケベ展開というラブコメ必勝パターンの権化といえ、何より陰惨な話が続く中で爽やかな清涼剤的エピソードとして彼の役割が機能し、何より作者自身描いててこの上なく楽しかったので、もっともっと膨らませたかった箇所(二つの意味はない)であったんだよな……。
エロス要員といえばやはり魔鬼伽がそれであった。エロいというよりエグかった……。後で読み返して我ながら引いた。反省、色々ゴメン!
本編でもちらっと言ったかもしれないが、魔鬼伽の後日談はかなり前にモモコ外伝として執筆が決まっていてさらにエロくてグロいエグイ内容になるのであった。ゴメンゴメン!
林檎子に関わるとロクなことがない。と言いたいが。かくゆう本作を描いてる私も、前作と本作を読み返すと己が鬼畜かサイコパスかと思えるほどアブナイ奴ではないかと自分自身を疑いたくなることが間々ある。
多分そうなのだろう(笑←笑えない)。そして私が林檎子を大嫌いでしょうがない(実際前作を描いててあまりの鬼畜っぷりに気分が悪くなり寝込んだことがあるほど)なのはいわゆる同族嫌悪なのかもしれない。これは内緒だが……。

そして今回、新登場のラスボス「蛇墓場苺子」だが、ギャル語アホ毛ピンク髪巨乳ということで、えっと特にラスボス要素なしである。これは設定として失敗である。やっちゃったー!
しいて言えば名前がちょっと怖いくらい、ちなみにネーミングのヒントは墓場鬼太郎。奇しくも片目が隠れているのは一致。
まあ、主人公とラスボスは誰がやっても大概の物語は成立する、という法則が最近私の中で確立されつつあるのでいいんじゃね。と開き直りまくり。

キャラクタでいえば旧キャラ(恩田夫妻やのぶチン教授、フッキー、すねちゃん)らは完全に空気。
新キャラの(三輪子、道満、イカ男)らは総じてクズとし一語で片づける。作中の扱いも雑だったかな。

キャラクタ中心に本作を振り返ってきたが、ストーリーの方はその場その場のノリと気分と勢いで描いているので何ともカンともとんちんかんちん一休さんであり。
好き、好き、好き、好き、愛してるー♡ がシリーズ全般のテーマである。
ただ、愛を拗らせると本当に危険である。その愛が深く大きければ大きいほど。これは真理であろう。
そして鬼畜やサイコパスの恋慕ほど迷惑なものはない、と劇中でもリンちゃん林檎子が明言している。
恋愛は素直が一番。ツンデレはサイコパスの始まり。愛は独りで勝手に拗らせてはいけない。デレるまで愛も青春も待ってはくれない。これもまた真理、だと思うんだけど如何なものであろうか。

ついでに副題の「ダブルピンチスタンバイ」とはヤバイ災いや危機は得てして二つ同時にやって来るという意味。
「泣きっ面に蜂」とか「二大怪獣 東京を襲撃」とか、家庭訪問で先生と母親から怒られるといった具合に。君にも経験あるはずだ。
このダブルピンチスタンバイという語感は「007」や「ミッションインポッシブル」のサブタイみたいなで当初は「行ける!」 と思っていた頃が私にもありました。ハイ……。
最後にこの作品で何が描きたかったかというと、この「あとがき」という名の「言い訳」なのであーーーーる。
こほん、お後がよろしくないようで……(落語調でシメ)。

おまけ

こちらも誰もやらないので私的神回発表!

私的神回2作品

17話 「いっぺん死んでみた! FROM HELL WITH LOVE」(林檎子が無事地獄に落ちたから)

25話 「ココロが消える…… 二大戦闘家畜人誕生秘話」 (林檎子が真樹太に結婚を拒否られるから)

でした。以上
p282
皆さん、今日まで応援ありがとうございました。では、ごきげんよう! (モモコ、林檎子、苺子より)
モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ 26話(最終回)
「サヨナラは終末のダブルエンドレススタンバイ」

「(紀緒彦お兄様、お慕い申し上げます)」

 開け放された窓から、夜風が金木犀の香を運びこむ。
別離の予感と裏腹にあまりにも穏やかすぎる時であった。
しんと寝静まった黒荊屋敷は、今まさに兄紀緒彦と妹林檎子との二人きりのセカイであった。

黒荊林檎子は真っ直ぐな瞳で紀緒彦に歩みよった。
対峙する紀緒彦はいつもの林檎子に向けるような笑顔はなく、その代わり警戒と緊張感の光を双眸に宿し、腰に装備した家宝の剣「エクスキュウカンバー」に手さえ翳そうか案じていた。

「お話があります……」
「……………………、僕もだ」

「……紀緒彦お兄様のお話、……とは、それもそんな怖いお顔でしてくださる話とは? フフン、分かってますよ。もう知ってしまわれたのですね。アタシの本性、正体を……。そしてその鬼畜の所業を、例えば黒荊製薬の非人道的な人体実験や、化学兵器開発に関すること? それとも富岡田の様子がおかしくなったこと? そうでなければ留依子と真樹太が突然居なくなったこと? 或いはアタシが全人類を皆殺しにする計画を割りと本気で立てていること、……かしらん? フフっ、……などといったそのような至極どうでもいいことでございましょう?」
「……………………………………」
「そんなどうでもいい紀緒彦お兄様のお話より、アタシはもっと大切なお話しがございます。お話というよりたった一言だけ申し上げさせて頂きたいだけです。アタシが思うに地上で、いえ全宇宙の全時空に於いて何よりも重大で切実で深刻なこと。その気持ちです。本当に本当に大切なことです。アタシにとっては…………。但し、それはきっと紀緒彦お兄様にはひどくどうでもよいこと、いえ、むしろこの上なく迷惑で不都合なことでしょうが……」

すると林檎子は紀緒彦の胸に勢いよく飛び込み、その圧で壁際に背中を追い詰められた紀緒彦の首筋にしっかりと腕を巻き付け身体を密着させた。
そして林檎子は鼻先から顎のラインを兄紀緒彦の唇の角度まで反らすと……。
その気持ちのみからくる言葉で最初で最後のココロの内を告げた。

「(紀緒彦お兄様、お慕い申し上げます)」

林檎子は紀緒彦に最接近した唇でそう告げると、そして紀緒彦の顔色を確認する間もなくチュウ、ではなく注射器の鋭い針先を紀緒彦の首筋に突き立てていた。
「な、な……ん……」
ズサっ!
すぐさま紀緒彦が昏倒し、林檎子の足下になだれ落ちた。
注射器より体内に注がれた「享楽の実濃縮10000%エキス」は瞬時に紀緒彦の意識を奪いかけたが、紀緒彦の強い意志が最後の最後までその目を見開かせた。
その最愛の兄の、恐らくヒトとして最後の姿を、自身でも意外なほど冷めたテンション、ないし人事のように睥睨している林檎子自身であった。
紀緒彦は最後の力を振り絞ると震える腕で何とか腰の宝刀エクスキュウカンバーを抜刀した。
そこで林檎子は何故か冷めきった瞳に一縷の輝きを取り戻し、嬉しそうに口元を緩めると、その紀緒彦が手にした抜身の切っ先に無防備に喉元を近づけて、
「アタシをコロしてくださるのですか?」
「………………………」
紀緒彦は静かに首を振り、答えの代わりに否定的なモーションをとった
「なんだ、調子くるっちゃうわ。ホントっ、紀緒彦お兄様は真面目系クズの中二病おバカさんですね。そうやって最後の最後まで紀緒彦お兄様はアタシのお願いを聞いてはくれないンだ……」

次に紀緒彦はその刃を自身の首の後ろ側に手繰り、セルフ介錯の要領で己の即首を掻き切ろうとした。
恐らく自分の運命の行く末を察したのであろう。しかし、その瞬間享楽の実エキスが完全にキマリ、残された紀緒彦の意識の全てが喪失した。
林檎子はすっかり体が弛緩した紀緒彦に合掌し、深々と頭をさげ彼女なりの礼を尽くした。それは武士の情けとも食事の前のいただきますのそれとも判別つかぬ儀式のようであった。
すると林檎子はやおら顔を上げその場に立ち上がると、いつになく怜悧な、いやもはや冷徹な光を帯びた目で虚空を見据えた。
まるで林檎子は自分との、或いはこの世のすべてのものへの告別をしたかのような何かを割り切ったげな気持ちでいた様でもあった。

 そのまま神妙な面持ちで自室の鏡の前にやってきた林檎子は、例のピンク髪のラスボス「蛇墓場苺子」との対面に臨んだ。

「こんばんチャオー! どうー林檎子チン、例の全人類抹殺計画捗っている? って、どしたの? 片膝なんてついてー、林檎子チンそんなに畏まらなくてもよくね……」
「ははっ、蛇墓場苺子様! 本日はアタシの決心をご覧頂きたく存じます。この黒荊林檎子、常々より敬慕してやまない蛇墓場苺子様の崇高なる全人類抹殺計画成就、早期達成に向け誠心誠意全力で対応する所存であります!」
「ええええーー、どうしちゃったんすか林檎子チン? 何かあったんすか? それに何かイチゴコチョー偉そじゃね? 今まで通りゴコちゃんでいいし、そこはお互いタメでいいっしょ!
「いえいえ、アタシこと黒荊林檎子は本日をもちまして冥界神ヘビイチゴ様の忠実な僕と生まれ変わりました。ヘビイチゴ様の例の全人類抹殺計画の素晴らしさを再確認し、ヘビイチゴ様の明鏡止水にして遠謀深慮なお考えに心胆洗われ、この全身全霊捧げるに値するものと心を決めました。何より愚かでしょーもなくて汚らわしいニンゲン共を一匹残らずぶっ殺してやりてーです。てか、クソニンゲン共らの精神や肉体を破壊し殺戮していくのが最近楽しくて楽しくて、イヒヒヒヒヒイ、じゅるる(涎)、これは失礼……、晴れて本物の鬼畜に生まれ変わったのだと実感いたしました。もはや何の迷いもためらいもありません!」
「うわああ、林檎子チン、ヤル気マンマンだね。イチゴコチョー嬉しいんですけど!」
「もとよりニンゲンは神をも畏れぬ傲慢な存在、しかも地球の資源や環境を無制限に食いつぶしていくばかりか、動物、植物と他の生命の種まで滅ぼしていく最悪の種族、尚もその同じニンゲン同士すら労りや助け合いの慈悲のココロさえ持たぬ最も賤劣で愚蒙な下等生物、いやただの害悪でしかないゴミ物体。そんな不良物件はこのアタシこと黒荊林檎子がまとめてこの地上界から在庫処分してやんよ! といったとこでしょうか」
「きゃああああん!! 林檎子チン卍かっけー! マジイケメン、抱かれた~い! ヨメにして~! 女殺し! 人殺し! いい意味でダークヒーロー、サイコパス、鬼畜、鬼、悪魔、妖怪人間、残虐超人、暗黒ならず者、モンスター一族、糞尿アップルパイ、嫌われ者、ブーーーース!!」

「ははは、褒め過ぎだよ……(はあ、いい意味で? 後半悪口じゃねーか! 最後糞尿アップルパイっていった? 嫌われ者、ブスって?(怒))」

「いやあ、いーわ、やっぱ林檎子チンはサイコーだわ! 間違いないわ! 林檎子チンでよかったわ!」

「……ところでヘビイチゴ様、素朴な質問ですが、半妖とか家畜人とかはニンゲンに入るのでしょうか? やはり奴らもニンゲン同様殲滅すべき対象なのでしょうか?」

「うーん? どーなんだろう? 遠足で果物はおやつに入るかどーか議論に近いよねー? イチゴコその辺分かんないから、その辺の判断は林檎チンにお任せしやーす!」
「畏まりました、でしたら別に生かしといてよろしいかと? そもそも存在自体別にどーでもいい連中ですし」
「そうっすね……、何気半妖さんもとか家畜人さんもドーブツさんと一緒でココロがキレイだし、そこはいいんじゃねー。とにかくニンゲン共の殲滅優先でヨロ! ほかに何かある? ふあああ、なければイチゴコ今日は眠いから去るわ。林檎子チンのお蔭でいい夢みれそーだし♡ じゃあそーいうことで! 林檎子チンまたねー、ぐっバイなーいっ!」

一人残された林檎子そのままベッドに倒れ込んで。
「……はあ(ひどく疲れた顔で)、やばいやばい、アタシが言ってたこと半分本音だったな……。蛇墓場苺子、本当にダメだアイツ、本当の本当になんとかしなくっちゃ、アタシのココロが完全に消えないうちに……。」
そして寝転んだ体勢を仰向けにすると。
「しかし、どうやって? さすがのアタシでもまともにやってアイツに勝てるのか? バカには勝てないとよく言うし……。アイツは巨乳=バカ(林檎子の偏った持論)だし。誰か蛇墓場苺子に対抗できる人物は……。アタシと同等かそれ以上のオカルトポテンシャルか小宇宙(コスモ)、そして何よりカルマ(業)を持った者……、あとできれば多少バカで巨乳が望ましいか……。あ、あの子はどうだ? アタシと同じ幸江の娘にしてアタシの妹に当たる。確かモモコとか言った……。そうかモモコ、モモコに賭けてみよう。モモコがいるじゃないか!」

*

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!
厳かなステージ上で盛大な拍手受け、今モモコこと奈美桃子は大亡魂帝国の栄誉ある平和勲章を天現時元帥より授かった。
ここでモモコは力強い意志を胸に、ある決意をその小さな体に秘め内燃させていた。
可哀想な堀部瑠衣子、真樹太の双子を始め、黒い狂気の怨念の犠牲となったすべての者、これからのささやかな未来を脅かされてるすべての者、この亡魂帝国に生きとし生けるすべての者を守るため。
そうまさに堀部瑠衣子が仕立ててくれたドレスを纏い、晴天の宙にこれからの戦いの誓いを立てるのであった。
そしてまだ見ぬ真の敵の正体、ヒント「ヘビイチゴ様」の存在を薄々予見するモモコであった。

同じ頃、黒荊屋敷ではライラックの根元に座し、堀部瑠衣子の手紙に書かれた真実を知り、痛恨の涙を際限なく流し、己の無力さと後悔に押しつぶされそうになる胸を堪える紀緒彦の姿があった。
「許してくれ! 許してくれ! 瑠衣子さん、真樹太くん、父上様、母上様、富岡田さん、堀部さん、皆さん、そして林檎子……、僕は何もしてあげられなくて……、そしてこの先どうすれば……」 
そして紀緒彦のココロが消えてしまうかと思われたとき、どこかで或る少女の声が聞こえた。

「(本当に紀緒彦お兄様は真面目系クズの中二病おバカさんですね)」

「えっ!?」

木の幹の反対側に気配を感じた。
それは妹林檎子のものと思えた。

「(そんな紀緒彦お兄様だからこそ……)」

空耳を確かめるように振り向くと、やはりそこには誰もいなかった。
代りに名も知れぬ冬の花が小さく咲き誇り日差しに揺らいでいた。



「(いつまでもお慕い申し上げます)」



そしてその遥か遥か空の果てのそのまた向こう側のその声は、紀緒彦に聞こえるはずもなかった。



おわり

p281
今回も長い間応援頂きありがとうございました。さっそく次シーズンもスタンバイしたいです(天)
モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ 25話 
「ココロが消える…… 二大戦闘家畜人誕生秘話」

青空に浮かんだ月が、目障りなほど光輝いていた。
今日は亡魂帝国の帝国勲章授与式の日であった。
栄誉或る平和勲章を賜るのモモコをはじめ、幸江、恩田夫妻にのぶチン、大木らは朝早くに帝国軍の部隊に同道され会場である大帝御殿特設会場へと出立していた。
黒荊屋敷に一人残された紀緒彦は、裏戸から外に出て、何の気なしに庭の奥へと歩を進めた。
その先にライラックの木があった。
かつて、その木の幹の襞は幼馴染で黒荊家メイドの堀部留依子と他愛のない夢や希望の文を交換するに使った思い出の場所であった。
だが今の紀緒彦にはそれも、昨日のあの刻より、すべて辛い記憶に塗り換えられてしまった。
もしやとは思ってはいたが、はたしてそこに、一通の手紙が挟んであるのに気付いた。
最近のものであった。差出人は思案するまでもなかった。
紀緒彦は木の根に腰掛け、心の底から込み上げる様々な思いを堪え、その封を開けてみた。
堀部留依子のものに間違いなかった。2年ぶりの手紙には、夢や希望といった字面や、可愛らしい少女的文字と絵の意匠などとはかけ離れた、一目でも深刻で痛哭な内容と思われる筆致が痛々しく連ねられていた。
その内容は傷を負った紀緒彦の心をさらに奥まで貫ぬくものであった。

――前略 黒荊紀緒彦様、これが最後の手紙となります。
これより私は紀緒彦様の前より姿を消し、もう二度と紀緒彦様の前に姿を現すことは叶わないでしょう。
私は自分の運命に立ち向かい、すべてのけじめをつけなければなりません。それは弟の真樹太も同じことです。
ああ、あのひどく怖ろしく、とても辛く、そしてどうしても逃れ難い運命。
私たち双子はあの日、とても重いさだめを背負ってしまいました。
これからお伝えする事実は、愚かな双子の口では言えないような、悍ましく許しがたい数々の悪魔の所業の告白です。
断っておきますが、紀緒彦様と仲良く友情を交わしていただいた奉公人の双子の留依子と真樹太はもうおりません。
今いる私たち双子は、もはや人ではありません。とうに人間の心を失った怖ろしい獣、怪物なのです。
お察し頂けるかもしれませんが、その正体は現在帝都を震撼させている二体の「戦闘家畜人」であります。
私の正体は「女囚ムジナ」、真樹太の正体は「卍カマイタチ」と呼ばれております。
そうです、紀緒彦様とモモコお嬢様抹殺の命令を受け、ある組織より遣わされた人外の殺戮マシーンなのです。

このような運命を背負ったことは、実に数奇な巡り合わせとしか申しようがありません。
ただ私も真樹太もこの運命を回避することなく、半ば自ら望んで受け入れたようなものです。
なのでこれについては二人とも後悔はありません。
あのお方のためにと思い、二人同じ想いで望んだことなのです。
私には三年近くの前に、いえ今でも生涯で最愛の人と呼べるほど好きになったお方がおりました。
そのお方のためなら命さえ惜しくなく、そのお方の願いならなんでも聞き、私が出来ることのすべてを捧げることが喜び、生きるすべてと考えまていました。
これは弟の真樹太も同様にそのお方を愛し、同じ気持ちでその決意に達したと思えます。
そうです、そのお方こそ、他ならぬ紀緒彦様の妹君様、黒荊林檎子お嬢様なのでざいます。
思えば、私が擁いた愛なるものは「お嬢様」と「メイド」の主従愛というものではなく、恥ずかしながらもっと激しくも、欲深い、もはや男女の愛にも似た、身勝手で傲慢な激情さえ垣間見るような熱い衝動そのものと思えるのです。
女の子同士で不思議と思われるかもしれませんが、自分でも信じられないくらいに林檎子お嬢様に惹かれていき、
切ない想いを意識しだしたころには、もはや私の心が深い禁断の奈落に溺れていくを覚えました。
これは理屈を超えた抗い難い本能、林檎子お嬢様のいう処の所のカルマ(業)であるのかもしれません。(以下略)

この堀部留依子の手紙に綴られた内容、そして先日モモコが死せる際の彼女から託されたコブタのヌイグルミ「モモペイ」、に残された林檎子の思念(モモコと幸江がテレパシーでキャッチ)とで知り得た情報を解析すると、そこにその二年前、林檎子及び留依子真樹太の双子の短い生涯に訪れた、劇場型破滅的佳境が見えてきた。
――モモコ2ndの終幕にあたり、それらをもとにした真実を知るため、再び二年前の黒荊林檎子を追想しなければならない。
話はちょうど前回、林檎子が自身の出生の秘密(自身が汚わいなアップルパイから人工的に造られた生命体)を知ったところからトレースするとする。

「アタシが人間ではなく、下等なホムンクルスですって。しかも糞尿まみれのアップルパイから誕生した……」
黒荊林檎子はそんな台詞をリフレインした後、以下の独白がリピートされた。
「どーしよっかなー、やっぱりコロすしかないよなー、とりあえず人類みんなコロしちゃえばいいんだよなー! まずは留依子でしょ、ついでに真樹太もでしょ、そうそうおまけに富岡田もヤっちゃうとして……、
そして何より紀緒彦! 紀緒彦お兄様! こいつらコロ、いや死よりムゴイ目にあわせてくれようかしら……、あいつらも人間以外の何かにチェンジさせてやろうかな。死んだ方がマシと思えるぐらいの惨めな物体に。天才鬼畜少女のアタシが知恵を絞り腕によりをかけてね。それいいかも。あー楽しみ! ヤる気でてきたぞ、生きる希望が湧いてきた! アッハハハハハッハッハ、そして人間をコロしてコロしてコロしまくって、数年後には全人類を絶滅危惧種にしてやる! アッハハハハッ、アッハハハハハッハッーーーーーーハッ!! 」

あの日を境に、黒荊林檎子はいよいよリアルに頭が壊れたかのようにオカシくなった。
もともと偏人なサイコパス少女であっただけに、もはや人間を辞めてしまったかのような壊れっぷりであった。

一日中部屋で塞ぎ込んでいるかと思えば、急に笑いながら武器を片手に暴れ出したり(筋肉隆々な兄貴たちを相手に)、日がな一日ヌイグルミのモモペイに話しかけたり、一晩中お風呂で自分の体を神経質に洗ってみたり、BL小説のレビューを医学博士の見解で書いてみたり、スクールアイドルのダンスの真似をしてみたり、モデルガンを改造してみたり、模造刀を研いでみたり、訳もなく泣いたり笑ったり青春してみたり、その後仙人や賢者のように達観してみたり、高尚な宗教の教えにふれ命の尊さ、生きる素晴らしさを確認して改心してみたり、しかしその合間合間の30分おきに人を殺してみたくなったり、自分が死にたくなってみたり、と葛藤してみたり、人類の平和を神の視点で願ってみたり、その逆の破滅の世をリアルにイメージし、具体的に緻密な計画を立ててみたり、といった具合に……。

ある日こんなことがあった。いや、「こんなこと」どころかもはや「大事件」であった。
調理長の富岡田が久しぶりに林檎子を見かけ、「お嬢様、こないだのアップルパイどないでした?」といつもどうり彼一流の気さくさをもって話し掛けたところ、林檎子は振り向きざまに、
「誰がアップルパイだ! 殺すぞこのブタ野郎!!」
と強烈な後ろ廻し蹴りを文句なしの角度、スピードで富岡田にブチかました。
運悪く、林檎子の虫の居所が悪く、また富岡田も打ち所も悪く、結果的に富岡田は後方の大理石の柱に後頭部をぶつけ瀕死の重傷を負った。
すぐさま病院に送られ、我に帰った医学博士林檎子自らが救命医療措置を施し、あわや富岡田はその一命をとりとめた。のだが、施術中に林檎子の脳漿にある天才的鬼畜アイデアが降りてきて、そのまま富岡田を実験台にまた別の手術「人造家畜人改造手術」を施してしまった。
享楽の実の濃縮エキスを人体に注入することで遺伝子情報ヒトゲノムの崩壊を誘発させ、その状態で他の動植物の遺伝子情報を補完することで人間でも動植物でもない未知なるポテンシャルを有した人工生命体(ホムンクルスの亜種)を完成させる。
このアイデアは林檎子の人造人間手術の手腕を伴っていとも簡単に実現した。
挙句の果て富岡田権太郎(36)無事人造家畜人第一号、識別コード「チャン・ブーヒン」として生まれ変わる。
チャン・ブーヒンはちなみに「三元豚」の遺伝子を得たブタの人造家畜人であり、その本体をベースに筋肉増強、各種銃火器オプション装備が施さられ、白兵戦に特化した戦闘用家畜人となる。

その後2年間の戦闘訓練後、はれて林檎子指揮下の実戦部隊に投入。以降チャン・ブーヒンは悪の林檎子お嬢様の手先としてこの世に絶望と恐怖をまき散らすのは前作の記述通り。

この人造戦闘家畜人試作第一号の完成で手応えを感じた林檎子は、さらに改良型の人造戦闘家畜人の企画開発に意欲を燃やした。
次なる人造戦闘家畜人献体候補に指名したのは非情にも、家臣でお友達の双子「堀部留依子」と「堀部真樹太」であった。

留依子と真樹太に以前約束した「享楽の実ジュース」を一緒に飲もうという口実で二人を自室に招いた林檎子であった。
実はこのジュースは危険な享楽の実濃縮10000%エキスで、一口でも飲んだが最後、すぐさま昏睡状態に陥り、その後遺伝子崩壊が始まり、すぐにでも他の動植物の遺伝子を補完、すなわち家畜人化手術をしなければ命はないとされるヤバいヤク(薬)であった。
とここまでは良かったが(いや良くないが)、ここで鬼畜モードの林檎子の心境に或る変化が見られた。

「……(ニコニコ)」
留依子は満面の微笑みで、
「……(ドキドキ)」
真樹太は幾分頬を染めて、
罪のない双子は林檎子により注がれる赤いジュースをそれはそれは楽しみに見つめていた。
「……(やっぱり無理!)」
ここで林檎子はその二人の純真無垢な笑顔に心が洗われてか、その親愛の情を取り戻したのか、最後の最後に人間的な良心の幾ばくかを奪回し、ようやくジュースを注ぐに震える指を止め、下落した睫毛に涙滴さえ蓄えながら、そっと二人に語りかけた。

「留依子に真樹太、その前にキミたちにお願いがあるのだけれども……(うるる)」
「ハイ、何でしょうか林檎子お嬢様!(×2 ハモり)」
「ちょっとロープ的なものと踏み台的なものを持ってきて頂戴……」
「は、はい、ロープ的なものと踏み台的なものですね……」

数分後、手分けした双子がそれぞれまさにそれ的な物をもってくると。

「次にそのロープを輪っかにして天井の梁に架けて、そしてその下に踏み台を設置して頂戴ね……」
「はい、これをこうして、ああして、こうですか?」

「そんな感じね。これはこれでありがとう、……そして、それとは別に今まで色々ありがとう、留依子、真樹太あなた達のことは決して忘れないわ、それじゃ、サヨナラっ!」

と、いきなり林檎子は踏み台に飛び乗ると、素早くロープの輪っかに頭をねじ込んで、足元の踏み台を蹴飛ばした。

「きゃあああああー!
「うわあああああー!」

双子が悲鳴を発し、ロープで首から宙にぶら下がった状態で、もがき苦しむ林檎子の足元をなんとか物理的に持ち上げようと試みた。
くんずほぐれつ真樹太が頭上の林檎子を肩車する格好で持ち上げ、留依子が補助する形で支えたが、林檎子が尚も暴れるため二人は前後左右に揺さぶられ、体勢を維持するのが難儀であった。
「誰か! 誰か来てくださいーーーーっ! 林檎子お嬢様がーーーーっ!(×2 ハモり)」
大声で留依子と真樹太が叫ぶも、この日林檎子はあらかじめ家族、お手伝いさんらの人払いを完了していたため、誰も来るものはなかった。
「姉さん、ロープを、ロープ! ロープ! 何かでロープを切ればいいんじゃ?」
「そ、そうね、あのロープを切ればいいのよね!」
留依子が慌てて部屋を飛び出し、何かロープを切るアイテムを捜しにいったため、その間真樹太は一人で林檎子を支えなければならなくなった。
「邪魔すんな! 死なせろ! 頼むから今すぐ死なせろ! 頼む、今生のお願いだ!」

錯乱した林檎子の悲痛な叫び声が響き、尚も躍動する林檎子の下半身が真樹太の重心を大きく崩していった。
体勢を直し直ししてるうちに林檎子を支える肩車の軸が180度反転し、真樹太の顔の正面は林檎子スカートの中にずっぽり収まってしまっていた。
ここにきて真樹太、ずっと恋慕ってきた憧れの美少女林檎子の太ももの感触をいやというほど両頬に受け、さらに至近距離過ぎるパンツに時折目鼻を埋めるいう絶頂のシチュエーションに、この非常時に不謹慎ながらも「逆に自分が死んでもいい♡」などと懸想する始末。
そしてどういう理由か彼の体が次第に前傾姿勢となっていき、林檎子を支えるに十分な高さが維持できなくなり始め、それによりさらにロープが林檎子の首に食い込んでいった。
「ぎゃああああん!」とほぼ断末魔の一歩手前ような彼女の悲鳴が聞こえた刹那。

チョキン!

ドサン!

「はあ、はあ、はあ……」
「ぜー、ぜー、ぜー……、うわっ!(真樹太、とっさにスカートから頭を出す)」
「ふう、よかった…(ヘナヘナ)」

間一髪、留依子が庭木の剪定バサミでロープを切断した。
死地より生還した林檎子と、林檎子のスカート内から帰還した真樹太は、二人して真っ赤な顔で心臓をバクバクさせ呼吸を荒げていた。
「……はあ、はあ、何故邪魔する、死なせてくれっていっただろ。もはやアタシはこれ以上生きてる意味がないんだ。いやそれどころか死んでいなくなったほうがリアルに世のためなんだ。だから今ここで死ななきゃならないんだ、今なら間に合う、アタシの理性が、アタシの心が完全に消え去る前に……」
「そんなことはダメです! 林檎子お嬢様が亡くなったら……、亡くなったら、ダメです。お嬢様が死んで世のためになるなんて、そんなわけないです! だって地球上のみんなが悲しみますよ。……僕も悲しくて、僕も消え死んでしまうかもしれません、いえ絶対死にます(だって僕は林檎子お嬢様のことが……)」
最後のほうは小声で真樹太が言うと、
「そうです、林檎子お嬢様は太陽のように、この黒荊家にも地球にも絶対必要なお方です。私にもとっても世界一必要なお方です。林檎子お嬢様が亡くなってしまわれたら、もう私の人生なんて果てしない暗黒の底のようなものです。私だってとても、とても生きてはいけません。私はもう林檎子お嬢様なしには……。何より紀緒彦お兄様だってきっと大いに悲しむに決まってます……(泣)」
「紀緒彦お兄様……、か……」
「そうですわ、林檎子お嬢様お辛いことがあるのなら紀緒彦お兄様に相談してみては! 紀緒彦お兄様ならきっと、その林檎子お嬢様に対する深い愛で苦しみや悩みから救ってくれるかと」
「いや、紀緒彦お兄様ではダメなんだ。特に紀緒彦お兄様の愛が……、(アタシを鬼畜にして、人間のココロを消していく、ならばいっそ紀緒彦お兄様が消えてくれるなら……)」

「…………」
「…………」

三人が絶句し暫く沈黙が続いた後、やおら林檎子は真樹太の方に両手をつき、そして彼を澄んだ眼差しで見やると。
「ねえ、…………真樹太、こうなったら仕方ない、いきなりこんな事言うのもなんだけど、ひとつお願いがある。一回しか言わない。……ここはひとつアタシと結婚してくれ! ……別にアタシはアンタのことがそれ程好きってわけじゃあないけど、ギリギリ嫌いって程でもない、たかが結婚……、ちょっと結婚するだけ、難しく考えることはない、そんなもんだ、それでいいんんだ、それですべてが円く収まるのだから、てことで結婚しよ!」
もちろん林檎子は愛してやまない兄紀緒彦をきっぱり忘れ、ゴコちゃん(蛇墓場苺子)の鬼畜化の魔法をギリ食い止めるための選択ではあったが。
それに対し童貞の返答は、
「はっ! …………ケ、ケッコン! 林檎子お嬢様と僕とですか? イヤイヤイヤ、ダメですよ、それはできません!」
「(ズル!)なんでよ? お前アタシのこと好きだって言ったじゃん、あっ、言ってはないけどほぼ言ったようなもんじゃん!」
「イヤイヤイヤ! ダメです、ダメです! 後生です! お嬢様そればっかりはダメなのです! いくらなんでも林檎子お嬢様と僕とがケツコンなんて……」
と林檎子からの突然すぎるプロポーズ? を拒否りながらも、このド童貞野郎真樹太の脳内は先ほどの林檎子のスカート内にがっつり顔を埋めた絵が何故だか勝手に再生され、それを皮切りに実に真樹太が夜な夜な想像していた彼女のオカズネタ(このくらいの男子にありがちな秘密の絵)が次々に連続再生していき、そのエロ妄念を必死に否定、払拭するかのように首を左右に激しく振り、結果林檎子との結婚を全力で否定した形になってしまった。
「なんでダメなのよ! 理由を述べたまえよクソ童貞!」
「それは、林檎子お嬢様が幸せじゃないからです! 林檎子お嬢様はこの世で最高の美少女です!  ですから最高のイケメンでお金持ちと最高の結婚をして最高の幸せにならなきゃいけないんです。僕なんて、僕なんて……!」
「そうじゃないんだって、好きとか、幸せとか、美少女だのイケメンだのお金持ちだのどうでもよくって、さっきも言ったけど結婚なんてものは本人と周りの色んな事が円く収まるかどうかなだけなんだって。でもう一度聞くけど、どーなのっ?」
それでも真樹太は首を横に振り「僕は林檎子お嬢様にお仕えしているのが至上の幸せです。これ以上の幸せはきっと逆に辛いだけですし、僕にはムリです! 結婚は結構です。」
「……そっか、わかったわよ、勝手なこと言ってごめん。そんなに厭なら仕方ない(確かにアタシは糞尿アップルパイだし……)、やっぱり死ぬわ(泣)」

「はっ!」と一瞬賢者のように我に帰った真樹太、うな垂れる林檎子の頬に伝わる涙にに気付くと、出し抜けに懐に偲ばせていた小刀をえいっとばかりに掴み眼前に取り出した。

「えっ?」、
「ま、真樹太クン!」

「御免! 林檎子お嬢様にかのような御恥をかかせた僕はもはや生きていけますまい! 今ここでこの腹を屠りて見事果てますので、どうか林檎子お嬢様は、この先死のうなどとは努々思わないでくださいまし。この命引き換えに檎子お嬢様には末永く安生して欲しいと何卒お願い奉る所存でございます!」

「な…………!(大層なこと言おうとして日本語が変なのはともかく)」

すると今度は留依子がやはり懐から小刀を差し出し、神妙な顔で床に座した。
この双子、堀部家の一族は武家の末裔であり、代々黒荊家に仕える忠臣であったという。それゆえ懐に刀を忍ばせるのはお侍さんの嗜みであったし、このような主君に大事があった場合、状況次第では切腹をいとわぬ覚悟を常日頃から心得ていたのであった。
「我が弟真樹太クンばかりを自刃させるわけには参りません! 私もまた林檎子お嬢様の御ためならばこの命惜しくはありません。いえ、違います! というより現在林檎子お嬢様を苦しめているのはおそらく私に他ならないのかと、理由は云わないでくださいまし。きっと、そうに相違ございません。(林檎子お嬢様の愛する紀緒彦お兄様のことで私が……)」

「え? は? なんて?」林檎子が目の前の双子にあっけにとられていると、
堀部留依子、堀部真樹太は手にした白刃を互いの喉元に狙いを定め、
一途にも至誠の光を瞳にし、今まさに忠烈合い果てんとばかりに、

「真樹太クン、いざ!」
「留依子姉さん、いざ!」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとまて、まてまてまてまてー!」

ぷす! ぷす!

「痛っ、痛っ! 痛ったあああああああああ!」

「はっ、林檎子お嬢様!」
「だ、大丈夫ですか! ああ、なんてことを……」

軽く我が身にプッ刺さった懐刀を二人からあわや取り上げた林檎子、
「大丈夫! アタシは大丈夫だから、みんな、落ち着こ! 一回落ち着こ!」

「……は、はい 分かりました」
「……そうですね、ここは林檎子お嬢様の仰る通り」

「まあ、とりあえず何か飲み物でも……」
「ちょうどジュースがありましたね(ニコニコ×2)」
「そうね、ジュースでも飲んで……、って!」
「(ゴコゴク)×2」
「あ、それは……!」

「むうううん!×2」
バタ! バタ!
「しまった……! それを飲んじゃ、お終いよ……」

昏睡状態に陥った双子は、おそらく林檎子との楽しかった思い出を夢に見ながらか、穏やかな寝顔で本物の天使になる時を迎えようとしていた。――戦闘用家畜人という殺戮の天使に。

こうして不幸にも「享楽の実ジュース」を飲んでしまった双子の留依子、真樹太がその後人造戦闘家畜人として生まれ変わったのはこのような悲劇がそもそもの始まりでございました。パシン!(講談風)

近く13歳の誕生日を控えた林檎子は、その瞳に憂いとも狂乱とも判別しかねる光を宿し、辺りを覆う真の暗闇に向かって宣告した。
「紀緒彦お兄様、林檎子の愛は本気の真でございます。我が命を懸けた愛ゆえ、……死なねばなりません。この死せる真心、御身心魂にて受け止めてもらわねばなりません!」
p271
ココロ失くした者、愛無き果てに一人旅立つ…
モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ 24話 
「モモコ vs. 二大戦闘家畜人 これが終わりのダブルピンチ!!」

かなり長い間ヒマくさってたモモコが無駄に広い応接室のソファでうたた寝をぶっこいていたところ、
ずりずりと柔らかいクッションに体が埋もれていき、しだいにスカートがめくれおパンツ丸見えになっていった。
瞬間モモコはいきなり目を開き、「めっ!」となぜかカメラ目線で怒ってみたりした。
そんなモモコはともかく、話を本筋に戻そう。

前回まで続いていた紀緒彦が語るところの長い長い林檎子の物語(実際は後にモモコらによって判明する事実を総合的に編集し、加筆修正したものであり、まだこの時点では紀緒彦が知りえない事実も多々あった)は、ここで一度中断されざるを得なくなった。

回想話中の紀緒彦、留依子、桐島がいる元林檎子の部屋をノックをする者があった。
帝国軍の兵士であった。
「桐島少尉! よろしいでしょうか?」
「何か?」

桐島はその伝令の隊員と二三会話を交わすと、幾分真面目な面持ちで紀緒彦と留依子に告げた。
「今、堀部真樹太君と思われる人物がこちらに到着したそうだ」

留依子の双子の弟真樹太(と思われる人物)の来訪により、紀緒彦、留依子は彼との再会に意識や感情を切り替えざるを得なくなった。
(注)この場面で物語りは大きく動くことになり、いきなりのクライマックスを迎えることであろう。
そして同時に今まさにモモコの身にとてつもない波乱、そう今期最大のダブルピンチが迫ろうとしていた。

「真樹太君が! そうか、よかったね留依子さん、真樹太くんが、真樹太くんがここへ来てくれたんだよ。留依子さんが夢にまで見た親愛なる弟真樹太君と再会できるんだよ。よかったね留依子さん! やっとこの日が来たんだ! やっと二人が幸せになる日が。本当に良かった!」
喜びのあまり紀緒彦は未だ床に蹲り咽び泣く留依子の手をぎゅっと握りしめ、彼女が取り立ち上がるのを力強く支えた。

部屋を出て階段を下る紀緒彦の表情は希望と安堵の色を帯びていたが、なぜか留依子の表情はよくよく冴えないようでいて、その足取りも重く感じられた。
そして軍属の桐島は幾分厳しい職業的な目をし、ホルダーの拳銃に手を掛けつつ二人に続いた。

帝国軍の兵士に付き添われ、屋敷の入り口に遠目にも精悍な男子が現れた。
堀部真樹太と思われる男であった。
ただ真樹太を知る者は一見すると、その男子の長身で筋肉で引き締まった身体は、かつての少年真樹太の面影を異にしたであろう。
さらにその面持ちも、かつての心根の優しい純粋無垢ないつもの笑顔は消え、翳りを帯びた瞳からは、冷ややかな殺気さえ漂うかのようであった。
それのみか彼はまるで獲物を狙う捕食者の嗅覚を持って何かのターゲットをサーチしているかのようなアンビアンスさえ感じさせた。

一方、モモコもまたパンツが再度スカートから見えないよう姿勢を正し、これから起こる一大カタストロフィを予見するかのように、その目にいつにない緊迫の光を宿していた。
そして母幸江も固唾を飲み、次なる運命に対し静かに身構えていた。

玄関のドアが開いた瞬間、出迎えた紀緒彦と真樹太はここに対面した。

「真樹太君じゃないか! 久しぶり、再会できて嬉しいよ。立派になったね。すっかり見違えたよ!」
「おどき願おう!」

どういうわけか二人は感激の対面とはならず、紀緒彦の真心の対応の間隙を突き、突如土足で邸内に踏み込んだ真樹太。
さらに彼は親友であった紀緒彦を乱暴に突き飛ばすと、何を企んでかモモコのいる応接間へと向かい一直線に進撃した。

警備の兵が次々に真樹太に飛びかかかるも、真樹太は尋常ならざる膂力をもって次々に帝国軍人を薙ぎ払っていった。
そしてもはや獣のごとく凶相を帯びた真樹太は、袖口からその大きな鎌を取り出すと、鍵のかった応接間の分厚いドアを一刀のもと、まるで紙切れを裂くかのごとく二分した。

一同唖然。
「鎌! あの大きな鎌といえば、卍カマイタチ! しまった!!」
誰もがそう悟った、時には少し遅かった。
部屋の中には本丸のモモコがいるのであった。 

分断されたドアの下半分をズシリと踏み倒し、真樹太(ほぼ卍カマイタチ)と思われる者はそのまま眼前のモモコを見据えた。
モモコは微動だにせず、平静ともまた神妙ともとれる瞳で、同様にその眼前の闖入者を見据えていた。
そしてその真樹太(ほぼ卍カマイタチ)と思われる捕食者の男が構えた鎌が鋭い光を帯びた。

「(させるか!)」
すかさずモモコの後方の扉の影に潜んでいた桐島が軍用拳銃を構えた。
だがその瞬間、

ガス!
「うっ!?」

何者かの影が桐島の背後から一撃を加え、彼の腕の拳銃を奪った。
「なっ、君は!?」
桐島は激痛に体が効かずそのまま動けずにいた。
拳銃を奪った黒い影は素早くそれを構えると、銃口をモモコの後ろ姿に合わせた。

モモコを挟んで対面の真樹太に化けている卍カマイタチと思われる者が目をカッと開き、、
「モモコ御覚悟! 滅世主林檎子様の御仇! 御命頂戴す!!」
と叫喚と共に大鎌を振りかぶり、ついにこれをモモコめがけてブンっと放った。

ビューーーーン!!
パンパンパンパンパン!!

と交錯するように陰翳にいる何者かによって放たれた銃声が響く。
当のモモコは目を閉じてじっとしていた。
幸江もただ悲しそうにそれを見つめるだけであった。

周りにいた紀緒彦、恩田、マチ子、、富貴子、スネちゃん、ノブちん教授、大木ら、そして桐島、肝田、樋村、月夜野と帝国軍人たちは、実際なすすべもなく、まるで時が固まったかのようにその場に立ち尽くすのみであった。

「うぎゃあああああああああああ!!」
すると銃弾を受けた真樹太(卍カマタチの擬態?)が爆ぜる鮮血の中に崩れ落ちた。

「グサッ!」
「うんっ!」

そしてモモコの横髪をかすかにかすめた大鎌は、弧を描いて、そのまま背後の銃弾を放った黒い影に命中した。
手にした拳銃を落とし、その陰翳から力なく倒れたその影の者は、ちょうどそこだけ光が当たる場所にその素顔をのぞかせた。
それは少女であった。黒いメイド服を着た。
「堀部留依子……」
桐島が震える声で彼女の名前を呼んだ。
留衣子の放った銃が貫いたのは弟真樹太の身体であった。
また、真樹太の放った刃が抉ったは姉留依子の身体であった。
かくのごとくこの年若き双子はそれぞれの手により合い果てたのであった。

「留依子さん! 真樹太君!」
阿鼻叫喚の大騒ぎの中、紀緒彦の声にならない声を耳にし、我に返ったモモコは真樹太を見届け、すぐに留依子の元へと駆け寄った。
「留依子お姉ちゃん! 留依子お姉ちゃん!」
瀕死の留依子はただ優しくモモコを見つめると、やっと動く手でモモコにそれを渡した。
モモコが受け取ったものは小さなヌイグルミであった。
コブタのモモペイ。

林檎子の形見でもあるそれをモモコに託すかのように。
そして留依子はいつもの笑顔で一度モモコに頷いてみせると、静かに息をひきとった。
同じく真樹太と思われる者も、同時刻にその命を終えたようで完全に沈黙していた。

周りの皆は何が起こったか今だ十分には理解できずにいると次の瞬間、さらに衝撃的なことが起こった。
この哀れな双子の亡骸は死後、見る間に恐ろしい怪人、もしくは人外ともいえる姿へと変貌していったのだ。
それは家畜人。それも軍部、警察で指名手配中の二大戦闘家畜人の外見と一致した。

真樹太と思われる男は、やはり案にたがわず「卍カマイタチ」の外見に。
また留依子は「女囚ムジナ」の外見へと最終的に姿を変えていた。
二人はチャン・ブーヒンこと富岡田同様、林檎子の手によつて生体改造された戦闘家畜人であったのだろうか。

やがて数刻経った後、軍人らが右往左往し、この二大戦闘家畜人の亡骸を厳重に専用の拘束具で固定した後、大型のジュラルミンの棺に格納、そして上層部の指示の元、これらに十分な護衛をつけさせた上何処ともなく搬送していった。

軍部責任者の樋村中佐と月夜野大尉の安堵の声が、この戦いの決着を宣言したかのようであった。
「いやあ、実にあぶないところだった。我々帝国軍精鋭部隊があれだけ揃いながらモモコちゃんに二大戦闘家畜人の接近を許すとは、しかし結果的に両者の流れ弾で刺し違えてくれるとは、我らにとって御の字の好都合! これまさにこれ幸い! 何よりモモコちゃんが無事だし、結果良ければ今回もまたわが軍の大勝利ってな。カハハハハハ!」
「まったくです、一時は肝を冷やしました。これで世間を騒がせた二大戦闘家畜人も駆逐できたことですし、明日の祭典も何ら不安もなく行われることでしょう。そしてモモコちゃんは名実ともにわが国の平和と勇気のシンボルとして国民に愛され讃えられることうけあいでしょうな!」
「うん、うん、うん、モモコちゃんマジ平和と勇気のシンボル!」とこのときは帝国軍兵士一同、いたって同じ思いであったであろう。

そしてどこからもなく「エイエイオー! エイエイオー!」と恒例の勝鬨が再びこの黒荊屋敷に轟いた。前回はつい去年の秋に林檎子を打倒したときであったのは記憶にも新しい。
そして事件解決との判断が下されたのか、情報二局以外の部隊の兵はやおら撤収準備を開始した。そして同時に打ち上げ部隊の幹事らも諸々の準備を慌ただしく開始した。

そんな大勝利モードの空気の中、紀緒彦を始め恩田夫妻やノブちん、大木ら諸兄は複雑な気持ちでいた。
もちろんそれは皆、ひとえに堀部留依子のことを偲んでのことであろう。

モモコもとても切なくいたたまれない気持ちでいた。
自分の命が超絶ピンチだった恐怖、無事命が救われた喜びの感情などはとうになく、
その胸中は留依子と真樹太のことばかりであった。とにかく二人のこの悲しい運命を怨んでいた。
そして意識の内にいる林檎子にその理由を問いただしてみたくなった。
「(林檎子お姉ちゃん! これはどういうことなの? なんで留依子お姉ちゃんと真樹太お兄ちゃんはあんな目にあわなきゃいけなかったの? どうしてなの! 教えてよ! どうしてなのか、お願い答えてよ!)」
しかし、静まり返った屋敷の中にも、そしてモモコの心の中にも、どこにも林檎子の反応は無かった。
数か月前幸福の実によって自ら跡形も消失した林檎子は、今はもう思念のカケラや霊縛情報の一片たりともこの世には残っていなかったのである。
そんなモモコが手にしていたヌイグルミのモモペイを幸江がそっと手を添えてモモコの顔に近づけた。
「(モモペイが知ってるっていうの?)」
「(知ってるぷー)」
不思議にもそんな声を聞いた気がした。
幸江がモモコとモモペイを一緒に抱きしめた。

ずっと壁にもたれたまま、俯くだけの紀緒彦に、桐島は彼の肩越しに話し掛けるともなしに呟いた。

「……あの留依子さんと真樹太君は戦闘家畜人が化けていたんだろう。あれほど心優しい双子の留依子さん、真樹太君があんな恐ろしい怪物であるハズがない。だから別人の別物、我々を欺くために巧妙に仕組まれた作り物だろうさ。そうとも留依子さんと真樹太君、きっと本当の二人はどこか別の知らない場所で、仲良く幸せに生きているんじゃあないかなって……。僕はそう思えてならない……」

「………………………………」

紀緒彦はそれには答えず、ただ深く目を瞑り、ただただ唇を堪えるだけであった。

p267
奪われたもの、途方に暮れる者…