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なんか不思議な町のモモコ 

4話 大亡魂帝国の愉快な仲間たち

 町外れの空き地に、高い鉄塔が敷設されていた。
母幸江を捜すモモコは、ぽ平次に連れられ、ノブちん教授なる人物を訪れるためここにきたのだ。
モモコはまるで人気のない殺風景な鉄塔の足元で、それらしきを御仁を捜しキョロキョロしていた。
すると、傍にいたぽ平次は鉄塔のテッペンを見上げたかと思いきや、
「ノブちん教授ーーっ、たのもーー!」とヒョウキンな声を張り上げた。
その声は、あたりに反響し、コダマのようになった。
すると、鉄塔の上部で何やら黒い影がノソノソと動くと、
「おーい! 今行くわー」と若い男と思しき声で返答があった。
その男の影が梯子伝いに降りてきて、はっきりとその姿形が眼で確認ができる位置になると、
「きゃっ!」とモモコは気の抜けた悲鳴を上げ、とっさに両目をふさいだ。
無理もない、そのノブちん教授はパンツ一丁という身なりだったからだ。
そのモジャモジャの頭髪とひび割れた眼鏡の痩身の青年が二人の前の降り立った。
「やあ、ぽ平次氏、久しぶりだね」とノブちん教授は頭をぽりぽり掻きながら挨拶をした。
「こちらこそ、ノブちん教授もお元気そうでござんすね」とぽ平次が返礼した。
「おや? こちらのお嬢さんは?」ノブちん教授は斜め後ろを向いているモモコに気付いた。
モモコは正面に向かい、両手を覆った指の隙間からノブちん教授をチラリと見ると、
「私、奈美桃子といいます、小学校4年生です」と自己紹介し、ペコリとお辞儀をした。
すると、ノブちん教授は何やら思う処があったらしく、嬉しそうな表情をして、
「奈美桃子ちゃん、うーん、奈美……、奈美……、なみ……」
「奈美……、もしかして、この人、奈美という苗字に心当たりでもあるのかもなの?」とモモコは内心期待すると、
ノブちん教授は今度は両手の人差し指で波状の曲線を描きながら、
「なみ、なみ、なみ、波、波、波、並みの波、波、波……」と何やらブツブツ呟き始めた。
モモコは訳が分らず、思わずポカンとしてしまった。
「モモコのダンナ、ノブちん教授は波、波動や電波など色々な波の研究をしてるんでござんすよ」とぽ平次が解説してくれた。
「ああ、それでなの……」モモコは分ったような、そうでないような複雑な顔をした。
「波、波、波、パルス……、スカラー波、テンソル波!」と取り付かれたようにノブちん教授は何かを繰り返し唱えていると、
「あのう、ノブちん教授、お取り込み中恐れ入りやすが、折り入ってお願いしたいことがありまして」とそれをぽ平次が制止した。
「えああ……、ごめん、ごめん、こちらのモモコちゃんのお名前があんまり素敵だったもんで、つい、アハハ波っ……」
「いえ、なにね、そのモモコのダンナのことで、ちょいと……」
「えっ、こちらのモモコちゃんのこと? 僕にできることなら」
すると、ぽ平次は、モモコが母幸江捜しに大亡魂帝国の東幻京へ来てしまった顛末を説明した。
 
 「うーん、事情はよくわかったよ。それで、モモコちゃんのお母さんのなみ、……奈美幸江さんを探し出せばいいんだね」
ノブちん教授は、ぽ平次の申し出を快諾してくれたようだ。やはり何故か「奈美、なみ……」のトコだけやけに嬉しそうだった。
「てことは、モモコちゃんは3次元空間からきた、3次元人なんだね。だとすると、モモコちゃんの生態波動を調べてみれば、お母さんの手掛かりが何か掴めるかもよ」
「3次元人? 生態波動って?」とモモコは素で疑問点を問いてみた。
「3次元人とはモモコちゃん達が住んでるセカイの人たちさ、生態波動とは人間個人が出す精神波や体内電気などの特殊な波のことだよ」
「???なの?」モモコはすっかり理解不能であった。
「ようは3次元人であるモモコちゃん特殊な生態波動を正確に解析すれば、モモコちゃんのお母さんの生態波動を特定できるかもしれないんだ。親子だから波動のパターンは類似してるハズだからね。実際、説明するよりやって見た方が簡単なんだよね。モモコちゃん、ちょっといいかな?」
とノブちん教授は2つの吸盤状の電極コードの着いたテスターのような装置を取り出すと、このコードをモモコの頭部に吸着する手まねでその許可を求めた。
「うん、お願いなの」モモコは頭の健康診断のようなものかと解釈し了解した。
「じゃあ、ちょっとごめんね」とノブちんは額や頭頂部、後頭部、首の裏など聴診器のように位置をかえ、モモコの生態波動を調べていった。
機械がやたらとピピピと反応すると、ノブちん教授は「うんん?」、「なんと?」とやけに驚いた表情を見せた。
「ややや、これは?」とノブちん教授はひとしお驚愕と感嘆の入り混じった声を上げると、しばし何やら考えこんでしまった。
このときモモコは、ただならぬ彼の気配にちょっとばかし不安になった。
「もしもし、ノブちん教授……」ぽ平次が指で突いて呼びかけると。
「うーーん、モモコちゃんの体、それも胸のあたりから、強力な生態波動がでている。一体、これは?」
「へっ?」モモコはよく分らないでいる。健康には自信があったが、何か変なところがあるのだろうか?
「モモコちゃん、……その、……あの、モモコちゃんの……胸、その……」ノブちん教授が改まった口調でモモコに訊ねた。
「へっ? 胸っ……?」
「その、オッパイを見せてほしいのだけど!」とノブちん教授はそう言い放つと、ゴクリと息を呑み、モモコを凝視した。
「へぇ、ええええーーーーなの!」モモコは大声を上げた。
また、オッパイと聞いてモモコの顔が真っ赤になった。言った本人のノブちん教授の顔もかなり赤面していた。傍で聞いてたぽ平次も赤面し、まるで沸騰したヤカンのように湯気を吹いた。
「たのむ、モモコちゃん、オッパイを……、変なことしないから、お願い、オッパイを……」ノブちん教授はいたって真面目であったが、それゆえ顔が紅潮し息使いが荒く成っていたようだ。
「えええっーーー! えええっーーーなのっ!」モモコは血が逆流するかと思うほどビックリし、激しく興奮した。
「モモコのだんな! ノブちん教授を信じてやっておくんなまし、ぽ平次な何も見てやせんし、聞いてやせん!」とぽ平次は耳と目を塞ぎ、向こうの方へいってしまった。
「ちょっと、ちょっとでいいんだ、オッパイを……、絶対変なことしないから、ねっ、お願い! 頼みます!」ノブちんは両手を合わせて平身低頭懇願した。
「えええっーーー! むううーーん!」モモコはさすがにオッパイは恥ずかしいけど、母幸江を捜すためとモモコは相当悩んだ。とその時。
「おい! 貴様ーっ! そこで何をしておるかっ!」と鉄塔の影から鋭い怒号が発せられた。

 モモコとノブちん教授は、大声のほうを振り向くと、そこから軍人と思われる2人の男が早足で駆け寄ってきた。
その軍人の一人が、勢いよくノブちん教授のマフラーを掴みあげると、
「貴様! 今、この少女に何をしようとしていた!」と激しい口調で詰問した。
この予想外の展開に、本来小心者のノブちん教授はつい過剰に動揺してしまい、
「いえ、そのオッパイを、てか、波、波を調べようとして、オッパイに変なことはしてません、ただ波、波を……」とあわわと苦しい弁解をした。
「うぬうっ! 怪しいやつだ、桐島少尉! こいつを本部まで連行しろ!」とその上官らしい軍人は、ノブちん教授をマフラーごと放り投げた。
「はっ!」と返事すると同時に、もう一方の若い軍人は宙によろめいたノブちん教授を受け止め、手にしたロープで後ろ手に縛り上げた。
「月夜野大尉、他の者はいかがしますかっ?」
「うむ、見たところ、3次元人と家畜人だろう。敵国のスパイかもしれん、一緒に連行しろ!」
「はっ!」
次に、その桐島という若い少尉はモモコに近寄り、「痛くないかい?」とモモコの両手に素早く縄をかけた。
同じく、ずっと「ぽ平次な何も見てやせんし、聞いてやせん!」と目と耳を塞いで復唱していた自称カワウソの大将も肩をポンと叩かれ、グルグル巻きに縛られた。
3人は、月夜野と桐島によって近くに止めていた軍のジープの後部扉に押し込まれと、すぐさまに急発進したジープの勢いでゴロゴロと荷台を転げ回った。
しばらく走ると、身動きの取れないモモコはこの先どうなるのかと心細くなった。
そんな、モモコを察してかノブちん教授は、
「モモコちゃん、大丈夫だよ、心配しなくてもいいんだよ。僕はこう見えても軍部にちょっとした知り合いがいるんだ。ちょうど基地に用があったからむしろ都合がよかったよ」とニヤリと微笑んでみせた。
「うんっ、なの!」とモモコもにこっと微笑んで返した。ぽ平次はのん気そうにスースー昼寝をしていた。
やがてモモコらを乗せたジープは、壮大な敷地と思われる高い塀に囲まれた一画に差し掛かった。そして、その大亡魂帝国軍 帝都総指令本部と掲げられた重厚な門の中、警備兵らに見送られつつ奥へと進んでいった。

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運命に翻弄されるモモコの明日は?
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