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なんか不思議な町のモモコ 

8話 モモコ受難曲 ~縦笛独奏~

 広大な黒荊公爵邸の庭園の一画にとても妖しげな集団の姿があった。その湖を背景にした優雅な花園にはまるで不似合いといった不気味な諸人。いったい何者らであろうか?
1人は当家の令嬢黒荊林檎子本人であったが、他の者はすべからく白装束に仮面舞踏会風のマスクを着用しており、容貌は未確認とされた。
白装束といっても、ある者は研究者の白衣であったり、ある者は魔術師が纏う白いローブであったり、医師の手術着、放射線防護服、陰陽師やシャーマンの胴着、あるいは奇術師の舞台衣装などと白をベースにそれぞれの出で立ちであった。
また、腕には一様に林檎と十字架をあしらった意匠の黒い腕章を着けていた。
この者たちは、『黒林檎十字会(くろりんごじゅうじかい)』と称する、林檎子主催の仲良しグループによる、ひとつのサークル活動のような集まりであった。
その構成員は、正体こそ極秘だが、世界有数の科学者、医学博士、魔導師、呪術師、軍事評論家にテロ煽動家など、その道のオーソリティで、社会的にも著名で身分の高い人物らで占められていた。
しかし、そのメンバーの正体はマッドサイエンティスト、狂信的悪魔崇拝者、世界滅亡論妄信者といった、かなり危険な思考回路をした、もはや狂人たちに他ならず、紛れもない超絶反社会的カルト集団と呼べた。
そしてその活動内容も、世界平和の倒壊、国家発展の妨害、下層人類の淘汰を合言葉に、大量破壊兵器や非人道的化学兵器の開発、黒魔術の流布や悪魔教などの布教、洗脳や集団催眠の研究、クーデターの企画といった林檎子の趣味と実益にとりわけマッチしたものであった。
そう、まさに林檎子が、この後、計画するセカイ終焉の野望には不可欠とされる、邪悪の軍師、狂気のシンクタンク集団であった。
では、その連中が花園にあるガラス張りの温室の付近で交わした恐るべき会話の内容の一部をお伝えしよう。
「さすがは超天才林檎子お嬢様、名門オップスフォード大学大学院の医学博士課程をわずか10歳で修めたばかりか、ノーヘラ賞級の発明もこれで何度目でしょううか? 特に最近の人造家畜人の発明は既成の遺伝子工学に重大な転機をもたらす大偉業とあいなりましたな!」
と白い手術着を着た仮面の男が大仰に賞賛の世辞を言葉にした。
「ウフフ、あれはたまたまですわ。人造家畜人の完成は『享楽の実』の福産物といっただけのもので、ただの偶然の成果物ですわ。まあ、おかげで家畜人は何かと重宝してますけど……」
「『享楽の実』の方はワラワも夜な夜な世話になっておりますえ、アヒヒィ……」と白い巫女装束を着た年増の女呪術師が意味ありげな笑みを浮かべ合いの手を入れた。
「ウフフ、『享楽の実』も効能的には単なる麻薬と一緒ですのよ。ただアレを過剰に摂取すると、人間の遺伝子情報を損壊し、人体のホメオスタシスの異常を誘発する。そこに別の種となる動植物の遺伝子情報を補完してあげれば、人造家畜人の一丁出来上がり、ってだけの話なんですもの……」
「人造家畜人か、うぃひひひひぃ、あれはジツニイイですね。人間の知能と記憶を有したまま、ケダモノの身体能力を兼ね備えるというホムンクルスの傑作です!」と放射線防護服を着た中年男性が意見を述べると。
「そうですね、人造家畜人は天然ものの家畜人と違い主人に従順ですので、何より奴隷に良し、屈強な兵士や優秀なメイド、また愛玩用のペットとしても需要があります。ただまだ高価ですのでお金持ち限定ですが……」
「うひぃ! いいですね~、いいですね~、ワシも前々から家畜人を一匹欲しいかなーと思っていたところでしてね……」
「あら、言ってくだされば! 近々メス豚の母娘が入荷予定です。そちらでよろしければお贈りいたしますわ!」と林檎子は上機嫌で答えた。
「う~ん、ブっ豚はちょっと……、この変態のワシといえどいささかマニアックですな~、できればネコ耳ちゃんなぞが好みなんですが……、うぃひひひぃ!」
「ああ、そっちの方をご所望でしたか? では寒露亜国美少女とロリシアンブルーのコラボのネコ耳ちゃんなんて如何ですか?」
「うぃひひひひぃ、それはヒジョーに有難いですねえ! ではワシはお礼に林檎子お嬢様様に、どどーんと試作中の戦術級核ミサイルをセットで10ダースほどプレゼンツしちゃいましょうかなっと!!」
「ウフフッ、最近噂の核兵器をですか? それはご機嫌ですね。でしたら、こちらも核爆発級のリアルネコ耳美少女家畜人を総選挙が必要なほどの人数分ご用意しなければなりませんね!」
「うっ、うぃひひひひひひひひひひひひぃ!! その件は何卒! こりゃ、毎晩、ワシの下方戦線にキノコ雲がおっ立ちそうですな。うぃひひひひひひひひぃ!!」などと調子に乗ったその中年が壊滅的なオヤジギャグを放つと、
「し………………ぃ、………………ん」と辺りが、まるで氷河期の寒気のような凍て付いた空気に包まれた。
「おほん! それで林檎子お嬢様、本日の本題、その宇宙創造以来の大発明といわれる『幸福の実』とはいかなるものですかな」と白い法衣を纏った僧侶風の老人がその場をしきり直した。
「はい『幸福の実』は、その果肉を摂取した者に宇宙の法則を掌握できるという恩恵を与えます。あらゆる物質の自由変換はもちろん、15次元世界すべての時間や空間も自由にコントロール可能になります。手前ミソですが、あまりにも効果がスゴすぎて、名前をつけるのにも一苦労しましたわ。『宇宙の万物が降伏する実』じゃあ、まんまですし長すぎます、それで『降伏の実』、さらに可愛くモジッて『幸福の実』って。ウフッ、自分の願いゴトが何でもかなったら幸福でしょ!」
「いやあ、林檎子お嬢様のネーミングセンスも素晴らしい! ただ、その『幸福の実』があまりにもスゴすぎて、逆に我々には使いどころのイメージができませんなあ……、ハッハッハ!」とメンバーの一人が口を挟んだ。
「あら、そんなの何だっていいんですよ! 希望は人それぞれですし。例えば、『幸福の実』を1口食べるだけで、女性のパンツも自在に入手することができますし、死者を自在に生き返らせることなどもちろんのこと、やり方次第では無数の惑星を消滅させ宇宙の帝王になるなんてことも夢ではありません。その原理はカルマ素粒子の振動による精神宇宙と物質宇宙の次元共鳴と質量同調の同位変換をうんたらかんたら~」
「なるほど……、原理はさっぱり解りませんが、まるで不思議な玉を七つ集めるどこかの漫画みたいですね……」
「そのとおりです。そして『幸福の実』はすでに完成を待つばかりの実用段階に入ってます!」とそこで林檎子はニヤリと笑った。
すると「おおおーーーっ!!」とメンバー一同は唸り声を上げ、庭園にどよめきが起こった。
「追って説明しますと『幸福の実』は『享楽の実』と違い、人間の業(カルマ)を養分に結実します。『享楽の実』の養分は人間の『虚無』でした。これは比較的入手が容易で、結果『享楽の実』は予想以上に早期に完成しました。しかし、『幸福の実』に必要な成分は人間の『業(カルマ)』です。しかも純度の高い濃密な業(カルマ)が必要で、こちらはそうそうセカイには存在してません。よって『幸福の実』の完成はいかに効率的よく業(カルマ)を高濃縮できるか否かが、成否の鍵でした。そこで私が着目したのは、三次元人の超能力者による業(カルマ)収束磁場量子論の応用です。詳細は省きますが、三次元人の超能力者に業(カルマ)を背負わせ、その精神エネルギーで業(カルマ)を短時間で凝縮する方法です。そして、その装置に最適な三次元人の超能力者を現在約一名確保してありますの、ウフッ……」
と林檎子がしたり顔で言い放つと、また皆の間に「ザワザワ」とどよめきが湧き上がった。
「それでは、特別に皆様にだけ、実際に『幸福の実』が成る『幸福の実の木』をご覧に入れましょう。どうぞ中へ」と林檎子は黒林檎十字会の会員を、背後のガラス張りの温室へと案内した。
しばらくすると、またもや「うおおおおーっ!!」と室内に入ったメンバーが全員から、驚喜と感嘆と喝采の声がもれた。
室内には見たこともない奇妙な樹木、それは果樹の類でもなければ熱帯植物ともいえぬ、まるでお釈迦様がすこぶる好みそうな葉っぱや枝ぶりを纏った摩訶不思議で神々しい命の威厳すら感じられる1本の植物が鎮座していた。
さらに樹の周りには、なにやら精密そうなな機械装置やら、極彩色の液体が入った容器やら、無数の医療用のチューブやらが沢山配置され、最新のテクノロジーにより『幸福の実の木』は管理されていたようだ。
さらに、その『幸福の実の木』の根元には、全身を拘束された一人の女性の姿があった。
彼女もまた、周囲の医療用と思われる機械やチューブで樹木と繋がれており、『幸福の実』結実の装置の1部と思われた、であればその女性は、先ほど林檎子が言及していた3次元人の超能力者であろうか? 顔は陰でよく見えないが、かなり衰弱している様子であった。
『幸福の実の木』の枝にはすでにいくつかの花の蕾がほころんでいた。その様を黒林檎十字会の会員は皆、まるで盗っ人が金銀財宝でも目の当たりにしたかのような呆けた表情で愛でていた。
一方、林檎子はのほうは、桜の開花時に希望に夢見て胸を弾ませる女学生のような面持ちを浮かべてはいたが、やはり、その想起する未来は、文明の崩壊、人類の滅亡といったこの世の終焉であった。テヘっ。

 ちょうどその頃、下町の路地裏にある見世物小屋の恩田座は、なんだかいつもと雰囲気が異なっていた。
なんと、驚いたことに、一座の前に見物客の行列ができていた。さらになんと、入り口には満員御礼の札すら掲げられていたのである。
常なら、劇団員より少ない観客で閑古鳥がひっきりなしに鳴いていたのだが、これは一体どうしたことだろうか? 
例によって「金返せー!」、「この、いんちきババアー!」などと、もはや恒例のかけ声とともにマチコちゃんの出番が終了すると、いきなり、ステージに大勢のお客さんが押し寄せた。どうやら、行列のお目当てはこの次の終幕にあったようだ。
そして、よくよく嬉し顔の恩田が「皆様お待ちかね、本日のメインイベント~」と口上とともに捲った演題には「三次元 女子小学生」と記されていたのだ。
「それでは三次元からきました小学4年生女子、モモコ太夫の登場で~す! どうか、皆様拍手でお迎えください~」と紹介すると。
なんと舞台袖から、スクール水着のモモコが縦笛を手にして、かなりモジモジしながら現れた。そして超満員のお客様にペコリと礼儀正しく一礼すると、ほぼ、ムサくてダサ目な男どもで埋め尽くされた客席から、割れんばかりの拍手と大きな歓声が送られた。
そう、ここ最近の恩田座の盛り上がりはモモコ太夫の人気の大ヒットによるものだった。モモコは一躍、ニッチな世界限定の有名人? と化していたのだ。
さて、どうしてこうなった? とう経緯はこうであった。3日前、それはモモコが初めて恩田座にきた日、会食の際、母幸江の過去について恩田から聞かされた。とここまでは前回のストーリーで、その話の内容はだいたい以下の通りであった。
モモコの母である幸江は、とある知人から恩田が預かった娘で、幼い頃より恩田夫婦の元、親子同然にたいそう仲良く暮らしていた。その幸江には小さい頃よりいくつかの不思議な力、主に予知能力があり、見えないカードを当てるといった千里眼などの芸で見世物の舞台に立つようになった。
年頃になった幸江は美しく成長し、さらにその超能力の腕も上げ、『ユキっぺ聖女』としてテレビ出演もするほどの人気者になっていた。そのユキっぺ聖女の予知能力は、大恐慌や大地震を予言するほどであった。そうなると、政界や経済界からも仕事のお呼びがかかるようになった。
中でも、黒荊公爵家からの勧誘は特に熱心で、公爵家の専属超能力指南役として破格の待遇でお館に迎えたいとの話があった。恩田は幸江本人の希望ということで、渋々幸江を公爵家に預けたが、今考えれば当の幸江本人に公爵からの執拗な脅しと圧力が掛けられていたのではないかと懐述していた。
公爵家に入った幸江は、まだ幼い嫡子の紀緒彦の魔術や陰陽道の教育に携わっていたが、どのような経緯があってか、現黒荊公爵の子供を身ごもり、密かに女の子を出産した。そして、その赤子が他ならぬモモコの姉、林檎子であった。
その時、その衝撃の事実を聞いたモモコは驚きのあまり気が遠くなってしまったが、この前出会った美少女が自分の実の姉と判り運命的なシンパシーを確信した。このとき、まだモモコは林檎子の真の闇の正体を知らずにいたため、生き別れの姉林檎子に対し淡い恋心にも似た感情さえ抱いていたらしい。
そして、当時、林檎子は生まれるとすぐ、御家の様々な都合で海外の黒荊家縁戚の元に預けられることになった。そして幸江も体面上黒荊家から放逐されるといった沙汰を受けた。最初から幸江を良く思わない黒荊家の人間は少なくなかったのであろう。またその際、世間からも「黒荊家を翻弄した魔性の女詐欺師」といったレッテルまで貼られ、恩田の元にも帰れず帝都さえ追われた果てに3次元世界へ流れ着いたのだという。
そこから先は、モモコがよく知る母の幸江であった。3次元世界で凡夫の奈美安雄と縁があって結婚し、凡庸な女の子モモコを授かり、この上なく平凡に家族と暮す一人の母親の人生があり、今日に至るといったところだ。
傍で聞いていた、マチコおばちゃまは、しきりにそのハンケチで目頭を拭っていた。ぽ平次も「てやんでい」とばかりにしげく鼻をすするなど、感傷的な江戸っ子のようであった。
また劇団員の富貴子とすね代も、モモコを見つめて、何だか申し訳なさそうにしんみりとしていた。
「その幸江さんですが、彼女は今、この帝都のどこかにいますよ!」と発言し、ウエットな場の空気を転換したのはノブちん教授だった。
そこで一同が「ええーっ!」となった。
「いやあ、収容所で軍のコンピュータを使わせてもらい調べたんですが、確かに奈美幸江さんは5日前に滞在用の旅券を帝都入国管理局に申請してます。その後の足取りは掴めませんが、今日現在、出国許可手続きも行ってないとのことなので、まだしばらく帝都にいるのは確かです。また、幸江さんが手続きに訪れたら連絡を取れるよう当局に手配してますから、あるいは……」
その話を聞いてモモコは目をウルウルしながら満面の笑顔になっている自分に気付いた。やはり、この大亡魂帝国のふしぎな町に母幸江は来ていたのだ。モモコの漠然とした予感はドンピシャ大的中したのだ。これも母幸江ゆずりのモモコの超能力なのかもしれない。
「きっと、モモコちゃんが幸江さんの波長を感じてここまできたように、今度はモモコちゃんの波長を感じて幸江さんがここへ来てくれると思うよ。なんたって、幸江さんは当代随一の超能力者なんだからね」
「そうよ、モモコちゃん、ここにいたら、きっとユキっぺがきてくれるわ。だってユキっぺにとってここはお家も同然、明日にでも遊びにくるに決まってるわ! 何より義理堅いユキっぺがここに来ないわけないわよ!」
とノブちん教授とマチコおばちゃまの嬉しい追加情報にモモコはすっかり、幸江に会える確信を手に入れた。それは大きな喜びであった。何より、ぽ平次を初め、ノブちん教授、恩田の夫妻に富貴子とすね代のおかげで皆に感謝した。
「みんな、ありがとう! 本当にありがとうなの!」と両手をついてオヨヨと嬉しい涙で感謝の言葉を声にした。涙が際限なくあふれてきた、また希望や勇気もモリモリとモモコの胸に湧きあがり、乾いて凍てついてた心が潤されていくのが確かな実感としてわかった。
そこでモモコは言葉ではとうてい足りない感謝の気持ちの置き所を求め恩田に提案した。
「恩田の小父様! あたしにステージで何か芸をやらせてください!」といってモモコは頭を下げた。
「う~ん、気持ちは嬉ししんだけど、モモコちゃんにそんな苦労をされられませんぞ、第一、ユキっぺに申し訳が……」と恩田は難色を示したが、
「お願いします! あたし本気なの! 一生懸命やりますから!」とモモコはたいそう強く頼み込んだ。
「わだしからもお願いいだします!」、「アタチも……」と傍から富貴子とすね代も頭を下げると、
「いいじゃないかい、お前さん、モモコちゃんもこんなにお願いしてるンだから、それにモモコちゃんが舞台に立ったら、ユキっぺだって、その分早くモモコちゃんを見つけてくれるわヨ!」とマチコおばちゃまが後押ししてくれた。
「う~ん、そうかあ……。よし、分った! モモっぺがそこまでいうんなら、ひとつやってみるかい?」と恩田はしばし考えたのち、ニコリと笑うとモモコの提案を承諾した。そして、いつのまにかモモっぺに呼称が変わっていた。
するとぽ平次がポンと膝を叩いて立ち上がり、「モモのだんながヤルってんなら、このぽ平次めにもステージに立たせやっておくんなまし! とてもモモのだんな一人に化け物の真似事なんざさせられませんやね!」と啖呵をきった。
「いいんですかな、ぽ平次君? 芸の道はキビシイですぞ」と恩田がニヤニヤしながら冷やかすと、その側で「化け物の真似事って……」と富貴子とすね代は同時に肩を落としてヘコんでいた。

 という経緯があった。そして今まさに、モモコはモモコ太夫として恩田座のステージに上がり、スクール水着の姿で縦笛を演奏していた。余談だが、その水着と笛はユキっぺの形見であった。
モモコは頑張って縦笛を吹いた。またもや余談だが小学校でのモモコの音楽の成績は3だった。しょっぱなから間違えたり、調子がどこか外れてたりと、決して褒められたような腕前ではなかったが、それでも一生懸命さは伝わったようだ。
楽曲の演奏も必死だったが、同時にその格好の恥ずかしさに耐えるのにモモコはひどく苦労した。
実をいうと、観客の男達は、純粋な演奏の鑑賞など二の次、三の次で、そのモモコの姿格好や羞恥に満ちた表情がたまらないといった気配であった。なので曲の旋律に関わらず、変なタイミングで嬌声や奇声を上げてはステージ前方に押しかけてみたり、角度を変えては下から覗き込むようにがぶりよったりと、その顔はどれも揃いも揃ってかなりのアホ面でだった。
それでもモモコは一曲、一曲に精一杯の想いを込めて演奏した。恩田座のみんなの人情に報いるために、ファンの応援に応えるため、そして明日会えるかもしれない母のために。
このモモコの澄んだ笛の音は、くたびれた帝都の雑踏に負けじとばかり、はるか空高くまで響いて聞こえた。
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いろいろとアブなくなってまいりました
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