FC2ブログ
なんか不思議な町のモモコ 

12話 帝都激震! なんか不思議な町事変

 ぽ平次とノブちん教授が惨劇の恩田座へ駆けつけたときは、身体の自由を失ったモモコが車に乗せられブーヒン一味に連れ去られる間際であった。
ブーヒン一味は3台の車に乗り込みエンジンを駆けすぐにも恩田座から走り去ろうとしていた。
ぽ平次はモモコの指令でのぶチン教授の下へ異変を知らせに走ったが、途中でプロシーボ波の尋常でない異変に気付いたノブちん教授と出くわし、すぐさま恩田座へ戻ってきたところであった。
「なんてこった。恩田座が大炎上しているじゃないか!! まさかブーヒン一味が襲撃してくるなんて!」
「たいへんでやす! モ、モモのダンナが車で連れ去られやす!」
「なにぃ! そんなことさせるか! やい、不埒者共! モモコちゃんを離せ!」
パン! パン! パン!
「うわっ!」
「ひぎゃ!」
とモモコ救出のため接近した二人に向かって突如銃声が鳴り響いた。
ブヒーンの部下のしんがりが物陰から発砲してきたのだ。
「危ない! 下がって! 伏せて!」
パン! パン! パン!
今度は別の方向から若い男の叫び声と拳銃の発砲音がした。
「うぎゃ!」、「ぐぅあっ!」悲鳴とともに、二名のブーヒンの部下がその場に倒れた。
すると同時にブーヒンが乗り込んだ車と、モモコを収容した車が二台続いて急発進した。
丸腰での普通の一般人のぽ平次とのぶチン教授はただそれをくやし眼で見送る以外どうすることもできなかった。
直後に「大丈夫ですか?」と神社の暗がりから帝国軍の制服を着た男が現れ、二人に駆け寄ってきた。
その若い軍人は見覚えがあった。同じ帝国軍の知人の桐島ではなかったが、確かによく知る顔だった。
やや小太りの陰気な印象の若者。
確か恩田座でモモコの舞台に最前列でカメラを構えていて、舞台が無い日も付近の神社でウロウロしていた怪しげなあいつだ。
そう、その男は恩田座の常連にしてモモコのストーカー的熱狂ファンの『肝田雄太吉』その人であった。
「お怪我はございませんか?」
肝田がぽ平次とのぶチン教授にかけよると、自分が帝都軍情報二局の伍長であることを二人に告げた。
この肝田隊員は桐島少尉の命により、毎日恩田座を見張っていたのだという。
「完全にしてやられました! ブーヒンのニセ出現情報に振り回されて……」
「そんなことより、モモコちゃんは? 中の恩田のおじさんたちはどうなって…」
のぶチン教授がいつになく真剣な面持ちで問いかけると、
「モモコちゃんは眠らされているだけで無事だと思いますが、中の方々は恐らく……」と肝田は無念そうに首を振った。
「……な、なんてことに」
「ぽへえ………」
二人は言葉を失い、力なくその場にがっくりとへたり込んだ。
やがて火事を知った近所の人々や消防隊、それにどっからともなく来たヤジ馬らがいっきに集まり、恩田座の付近はてんやわんやの大騒ぎとなった。


 騒ぎは、恩田座の一画では収まらなかった。その後、帝都はものものしい空気に包まれることになった。
後に伝わる10・25帝都黒荊公爵家事変はこの時から始まったとされる。
肝田の連絡で、迅速に部隊を出動させた帝都軍情報二局によるブーヒン一味の包囲作戦が展開されたのだ。
各隊員は総司令官の月夜野大尉の元、軍事車両での主要道路の閉鎖や、ヘリコプターでの空からの追跡と大掛かりな布陣でブーヒン一味らに臨んだ。
サイレンと無線が鳴り響き、投光機が飛び交う有様はもはや戦争さながらであった。
そんななか月夜野の傍でジープのハンドルを握っていた桐島は装備されたレーダ(ノブちん教授の技術提供によるもの)の一瞬の反応を見逃さなかった。
モモコの存在を示すプロシーボの波の光りをキャッチすると、急ぎ車を反転しレーダが指し示す方角に全速力で向かった。
いつになく性急な運転に軍事車両は右に左に制動を奪われながらも、確実に発信源のモモコとの距離を縮めていった。
後続の帝国軍車両も包囲網を狭め、徐々にブーヒンらを追い詰める体勢に入った。
そしてターミナル駅の繁華街を抜けるメインストリートで、ついにブーヒンらの車両を射程に捕らえることができた。
さらに後方20メートルまで接近すると、桐島らは車を停止するよう拡声器で警告した。
もちろんブーヒンらは警告を無視して逃走を続け、まだ建設中の高架の帝都高速道路へと侵入していった。月夜野と桐島らもフルスピードでこれを追った。
しかしブーヒンらの車は最高速が早く、帝都軍のジープでは差が開いていく様相になった。
やも得ず桐島が威嚇射撃を敢行しようとしたところ、ブーヒン一味の方から機関銃による先制攻撃があり、桐島らの乗るジープの窓ガラスが一瞬にして吹き飛んだ。
身を屈めて一命を取り留めた月夜野と桐島は拳銃で反撃、といってもモモコの安全を優先し、タイヤを集中的に狙い発砲した。
桐島らの放った弾丸はみごと後輪の左側に命中し、タイヤが音を立てて破裂すると、制御を失った車体は一度スピンして壁を擦りながら道路わきに停止した。
前方のブーヒン一味も車を止め、数人の部下がマシンガンなどの武器を手に現れた。
桐島らも車を止め、拳銃を手に車外へ降り立った。帝都軍の後続の車両も追いつき、両陣営は50~60メートルほど離れて対峙した。
すると轟音とともに帝都軍のヘリコプターが上空に現れた。
強烈な投光機の光りをブーヒン一味に浴びせながら、
「きさまらはすでに包囲されている、無駄な抵抗は止めてすぐに人質を解放しなさい!」
と空からブーヒン一味に降伏を勧告した。
もちろんそんなことなどハナから聞く耳をもたないブーヒンの連中は、おもむろにロケット砲を取り出すと、鼻歌まじりにそれをぶっ放した。
ドッガーーーン!! 発射されたロケット弾は大きな爆発音とともに一瞬のうちにヘリを巨大な火の塊にした。
コントロールを失ったヘリの胴体は、桐島らの側の近くの高いビルにそのまま激突しさらに大爆発した。
爆風とともにコンクリートやガラス辺が飛び散り、衝撃でビルの屋上に設置されていた球体上のオブジェやネオン看板なども次々に崩落していった。
まさに戦争映画そのものであった。時間が街が人々で賑わう昼間であったらどれほどの被害者がでたであろうか?きっと阿鼻叫喚の地獄絵図となったであろう。
リアルで戦争体験のない帝都軍情報二局のメーンバーの中にはこの圧倒的なスペクタクルに動揺を隠し切れない者も少なくなかった。
そして、これを合図に帝都軍とブーヒン一味の激しい銃撃戦が開始された。

 緒戦、数の上では帝都軍が優勢であったが、マシンガンやロケット砲で武装したブーヒン一味に対し、小型の拳銃のみで対抗する帝都軍はにわかに劣勢に転じていった。
一人、また一人と帝都軍の軍人がブーヒンらの凶弾に倒れていった。中にはロケット砲で楯にした車両ごと吹き飛ばされたメンバーもいた。
気がつけば桐島と月夜野を含め二、三人しか残っていなかった。さらに不味いことに、桐島らの弾薬はすでに底をつきていた。
「最後の1発か、桐島、貴様あと何発残っている?」
「2発残ってます!」
「よし、貴様の拳銃をよこせ! 代わりにこれをやる」
桐島が拳銃と交換に上官の月夜野大尉から受け取ったものは一本の日本刀だった。手にした刀を確かめると、桐島は「はっ!?」と驚きの顔色をした。
「これは、大尉が大切にしている……、『関の孫七』、月夜野家の家宝では?」
「たいしたものではない! いいか、チャンスは一度きりだ。タイミングを見誤るなよ!」
といい終わらぬうちに月夜野はジープを飛び越えブーヒン一味の前に身を躍らせた。
思いがけない月夜野の陽動にブーヒン一味は一瞬固まってしまった。
すかさず月夜野は両の手にした拳銃を構え、「ぬおおおお!」と唸り声とともに立て続けに残弾のすべてを放った。
後方でモモコを乗せた車に陣取っていた5人のブーヒンの部下のうち2人が撃たれドサ、ドサっと倒れた。
その直後、目前に残されたブーヒン3名の部下と、加えてやや離れ前方の車に布陣する大将ブーヒンら本隊の機関銃による一斉射撃が月夜野を襲った。
嵐のように夥しい銃弾をその身に受け、血しぶきと砲煙に霞れた月夜野は「帝国軍人バンザーイ!」と最後の声を虚空に轟かせ、そしてゆっくりと崩れるように倒れた。
「帝国軍人にしては、立派な最後やったんちゃうん?」
とチャン・ブーヒンが半笑いで感想をのたまわってる隙、倒れた月夜野の上空にフっと人の影が浮かんだ。
ブーヒン一味は完全にフイを突かれ、その影の対応に出遅れてしまった。
その影は凄まじい勢いで跳躍し、敵陣に突っ込む桐島の残像であった。手には月夜野から授かった関の孫七が握られていた。
地で月夜野の屍を越え、空中を駆けるかのようなその様はまるで壇ノ浦での義経の「八艘飛び」を彷彿させた。八艘と言われてもピンとこないが、とにかくスゴイ距離を跳んだようだ。
いっきに敵の懐に突入し、着地と同時にまずはブーヒンの部下の一人を横殴りに切り付け、すぐさま斜め下から前方のまた一人を斬りあげ、身体を反転させ刀を返し背後の三人目を斬りつけ一呼吸すると、ブーヒンの手下三名は同時に地に転がった。
この間大将のブーヒンと傍に居た部下らはこの桐島にも激しい機関銃の掃射を浴びせたが、弾はまるで桐島を避けるかのようにひとつも擦りもしなかったという。
すかさず桐島はモモコを監禁した自動車に歩み寄り、ドアを刀で叩き斬ると、中にいたモモコを無事救出した。
モモコを奪還されたブーヒンは、「ぶふうん……」と溜息まじりに両手を挙げると、引き際も鮮やかにその場から逃げ去っていった。
モモコを抱えた桐島の背後で、さっきまでモモコが捉えられていた車が突如爆発し炎上した。
まるで昭和のアクションヒーロー劇画のようにモモコを救出した桐島であったが、当の桐島本人はこの当時のことをよく覚えていないという。
事実、桐島自身も軍の中ではそんなに身体能力がズバ抜けて高いほうではないが、たまにこのような超人的な活躍をすることがタマにあるという。
最も本人は否定しているが、ストーリーの都合上、イケメン補正とかいろいろとお約束がらみの事情があるらしい。って、オイ!

 遅れて今到着した帝国軍の車から、のぶチン教授とぽ平次が飛び降りてきた。肝田もあわてて飛び降りてきてモモコと桐島に敬礼した。
みなモモコに駆け寄ると、モモコはかすかに目を開け、無事を伝えた。皆も無言でモモコの無事を祝った。
するとモモコのかすかに開けた目から大粒の涙が次々に流れ落ちてきた。皆はこのモモコの涙をとても直視できずにいた。
いつの間にかうっすら白みはじた空の下、七色の朝焼けがモモコの流す涙に複雑な輝きを映していた……。
p096
まだ終わらない悪夢
それでも新しい朝は来る…
スポンサーサイト