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モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ
2話 「脅威! 二大戦闘家畜人出現」

「モモコちゃんから目を離すなってあれほど言っただろ!」
「仕方ないですよ、そりゃあ自分だって目を離したくなかったのはヤマヤマだったのですが……」
「言い訳無用!」

駆けつけた桐島は肝田を一喝すると、寝巻きに着替えたモモコに近寄り、
「モモコちゃん大丈夫だったかい? 怖かっただろう!」
「ううん! 突然のことでびっくりしただけ、へいき、へいき!」
意外と落ち着いているモモコと幸江は風呂上りのアイスハニーショコラキャラメルミルクオーレをゴクゴク満喫しているところであった。

「やはりモモコちゃんを狙って……」
「ああ、間違いなく『卍カマイタチ』の仕業だろう。機密資料によると鎌を自在に操る怪人で、素早い動きを活かした戦法が得意とするらしい。また性格も残忍で高い戦闘能力をもった恐ろしい奴とのことだ。これがその写真だが……」
と取り出した1枚の写真に写る卍カマイタチの姿に皆は凄まじい戦慄を覚えた。
その姿は人間の顔形にあらず、縦に釣り上がった目と耳まで避けた口は恐ろしい獣そのものあった。
「まさかこれって」
「ああ、家畜人、それも戦闘用に改良強化されたタイプに違いない。」
「なんだって、それじゃあ、あのチャン・ブーヒン並みにヤバイ奴だとでも?」
「むううん! だとすると手強い相手ですな……」
かつて林檎子配下の戦闘家畜人チャン・ブーヒンと死闘を演じた恩田がリアルな感想をもらした。
「ううーん!」一同は頭を抱えて押し黙るよりなかった。

「ピッピピピピピピピーッ!」
そのとき霧島の携帯無線機がけたたましいアラームを発した。

「こちら桐島、………………なんだって! 647号に……。逃げられた……。 なんてことだっ!!」
「***********」
「それで、佐治須中尉は」
「***************」
「なに、佐治須中尉はニセモノ、家畜人が化けていただとう!」
「************」
「………………」

呆然とする桐島にみんなの不安げな視線が集まる。
「大失態だ。囚人647号、通称『女囚ムジナ』に逃げられた……」
桐島は拳で壁を叩き、その無念を言葉にした。
「えっ、何だい、ジョシュウがどうとか? その、イタチの次はムジナかい?」
「……こいつです」
肝田が取り出したもう1枚の写真には、黒い帽子を被った女が写っていた。長い黒髪の間からのぞく顔半分の瞳が不気味な光りを帯び、やはり人間とは思えぬ容貌は女怪人といったところだ。
「……、やはりこいつもある組織の命令で、モモコちゃんを狙う戦闘家畜人さ。2日前に我が軍がやっとの事で捕らえたんだが、
たった今我々の不手際で逃げられてしまった……。無念だが」
「何てことだよ! それじゃあ、只でさえ恐ろしい戦闘家畜人が2体も、しかもモモコちゃんを狙ってこの帝都に放し飼い状態で彷徨しているってことかよ!?」
「………………、そうなるな」
「てことは……」
「うむ、とにかくここは危険だ。どうだろう紀緒彦君、ここは以前の黒荊のお屋敷にみんなで移動し、そこに帝国軍と合流し陣構えをし直すというのは可能かな?」
「可能です。それは良案だと思います。でしたら、すぐに平川さんにお屋敷の鍵を持ってきてもらいましょう」
「頼む、あそこなら篭城するにはもってこいのロケーションだ!」
「いざとなれば地下室や抜け穴もありますしね」
「決まりだな! よしさっそく移動に取り掛かろう。車は我々が手配しよう。皆さんは荷物などの準備をお願いします。2、3日は滞在することになると思いますのでそのおつもりで」
みんなは桐島に従い、コソコソと夜逃げさながらに軍用トラックに乗り込み、数キロ先の黒荊邸へと向かった。
最中、桐島は軍本部からの報告を確認しつつ、前日の記憶を頼りに一連の状況を整理した。

1月2日(前日)午後2時、於帝都軍特別収容所。
その時、桐島は肝田と収容所地下にある特別尋問室で、鎖に繋がれた一人の女と対峙していた。
「いい加減、吐かないか。貴様らのアジトと首謀者の名は」
肝田はいくぶん裏返った声を発しながら、ぎこちない動作でその女囚人の顔をお湯で満たされた洗面器に沈めた。
「明日にはモモコちゃんが亡魂帝国に来るんだぞ。それまでに奴らを一網打尽にしておきたいんだが……」
桐島はその光景を見遣りながら、実に忌々しそうに腕組みした片方の上腕を指でとんとん叩いていた。
「そろそろかな?」
「はあっ、はああ、はああ」
時間を見計らっていた肝田に顔を起された女囚の荒い息遣いが暗い部屋に反響した。
「さあ、少しは協力的になってくれたかな? 647号のマダム、いやお嬢さんかな……?」
桐島が647号と呼んだその女囚は嘲笑うような眼をし全然余裕の様子であった。
桐島がやれやれと軽く首を振ったとき、背後の鉄のドアがガチャと開錠されギイと開いた。
カツン!! 「甘いわね!」
と鋭い踵の先を床に叩きつける音と、同時に女の叫声が聞こえた。
入ってきたのは女性の将校であった。
カツカツとヒールの足音も高らかに彼女は無遠慮に桐島へ近づくと、いきなり桐島の首元に腕を回し、
「家畜人相手に遠慮することなくってよ」
と囁き、かなりの力で桐島の頚動脈を圧迫した。
桐島は「うっ」と眩暈を感じながらも「貴官は?」とその女性将校の名を問うた。
「佐治州搭子……。帝国軍親衛隊中尉よ」
と名乗った彼女は、歳は二十七、八だろうか、長身細身で鋭利な目をした女性であった。
なんでも訊問に苦戦する桐島らに代わり本部より派遣されたスペシャリストとのことだ。
桐島はこの佐治州中尉にただならぬ妖しさ、小恐ろしさといったものを感じずにはいられなかっいた。
一方、肝田は胸元が開いた軍服やミニスカートから伸びる網タイツの脚が彼のツボらしく幾度もよだれを飲み込まずにはいられなかった。
「殿方はご退室願います……」
と佐治州に事実上の任務交代を言い渡された桐島と肝田は、しぶしぶ女囚647号のもとを離れた。

佐治州は手始めに女囚647号の前にあった机とぬるいお湯の洗面器をドガッと足蹴にした。
ガッシャーン! と机は女囚647号に激突してひっくり返り、洗面器は中身を彼女の顔面にぶちまけた。
そして女囚647号を佐治州中尉は舐め回すような視線を挨拶代わりに浴びせると、
「フフン!」と紅い唇に冷酷な相を浮かべた。
次に間髪いれずいきなり片足のヒールの踵を647号の胸のあたりに突き刺した。
「っ…………!」
グリリと乱暴に胸のふくらみを踏み躙られ、647号は苦悶と怒りに満ちた眼で佐治州を見上げた。
ガッ!
今度はその眉間にすぐさま同じヒールの踵が打ち付けられた。
「その目付き、堪らないじゃないの!」
そしていつのまにか取り出していた鞭をビシビシ扱きながら、
「さーて、たっぷり可愛がってあげようかしらねえ、こん小汚い家畜人め!」と絶叫し、
大きく振り上げた鞭を凄い速度で繋がれた女囚647号へと叩き付けた。

ビシューン! 、ビシイ!
「ぎゃあーーーっああ!!」 

鋭い鞭の唸りと、女の喘ぎが交錯し狭い室内に響き渡った。
この訊問という名の拷問、いやもはや個人の趣味による私刑は実に18時間の長丁場に及んだという。

しかし、変異が起こってしまった。
ここから先は報告を受けた桐島が、今知りえた情報による想起である。
とたんに647号の訊問室が静かになった。
その数分後、佐治州らしき女性が小銃を手に部屋から出ると、逃げるように走り去っていった。
それを不審に思った他の係官が部屋を覗いてみると、これがとんでもない一大事の絵図であった。
なんと女囚が繋がれていたはずの壁に647号の姿はなく、代わりに鎖に繋がれていたのは制服を奪われ半裸の佐治州搭子中尉であった。
つまり、たった今部屋を出て行ったのが佐治州になりすました女囚647号だということであろうか?

「ジリリリリリリリリリリリー!!」
非常ベルがけたたましく鳴り、女囚647号逃走の緊急事態を告げる放送が施設内に繰り返された。
訊問室内で係員に鎖を外された佐治州(本物と思われる)は、用意された軍の傷病服を奪い取ると凄い形相で鞭を振り回しながら駆け出していった。
「ぶぶぶぶ、ぶっころしてやるううう!」

収容所内は大勢の軍人が右往左往し、喧喧囂囂の局面となっていった。
当の追われる脱走者女囚647号は、あらかじめライフル銃を構えていた帝国軍人精鋭十数名に建物を出たところで包囲された。
さすがに収容所の正門まであと少しの距離で647号はその歩を止めた。

「もう逃げられんぞ!」
「オマエは囲まれている!」
「観念しろ、647号!」

「…………」647号は微動だにせず暗い目で四方の軍人たちを見据えていた。

「647号! きききっきさまーーーーーっ!!」と背後に女の叫び声がした。
そこに何と傷病服をはだけさせながら佐治州が駆け寄ってきた。

647号はとっさに脱いだ軍服を宙に翻し、ついにその正体を現した。
長い髪を振り乱し、どす黒く変貌していく顔はしだいに人間の容貌を失っていった。
そして両の瞳は怪光を放ち、呻き声にもにた咆哮を発し、
ついには全身黒づくめのおぞましい姿をした戦闘家畜人に変身したのであった。
ここで「女囚ムジナ(647号)」は甲種危険敵性家畜人と断定し、即刻殺処分が決定した。
ここから女囚ムジナと帝国軍の血みどろのバトルが開始された。
女囚ムジナの手にしていた小銃が続けざまに火を噴き、あっという間に4、5名の帝国軍兵士の命を奪い去った。
そして倒れた兵士のライフル銃を巧みに奪い応戦し、その後も帝国軍と渡り合った女囚ムジナであったが、多勢に無勢、肩と太ももに銃弾を受け、兵士15人を倒したところで銃弾も尽きいっきに劣勢になった。
女囚ムジナの背後でライフルを構えていた別の兵士らがまさに引き金を弾くその瞬間、突如首筋から血を吹き上げ絶叫とともに次々に倒れていった。
驚いたことに、その背後にいたのは、なんと両手に2本の大きな鎌を構えた佐治州搭子であった。
純白の傷病服を見方の返り血で染めた彼女に、軍人たちが何が何だか分らずにいると、さらなるショックが訪れた。
確かに佐治州搭子だったはずの者の顔形がみるみる醜悪に変化していったのだ。そうまさに今変身を遂げた647号のように恐ろしい獣の怪人へとみるみる変化していった。
そうなのだ! 彼女に化けていたのもまた変身能力を備えた戦闘家畜人だったのだ。
その名も『卍カマイタチ』であった。
後に本当に本物の佐治州搭子は将校用更衣室のロッカー内にてロープで拘束された状態で発見されたとのことだ。

収容所にいた帝国軍人は総員出動となった。また辺りの基地からも応援が駆けつけ百人近い兵力でこの二大戦闘家畜人に挑んだ。
しかし、この二大戦闘家畜人の前には悪戯に犠牲を増やすばかりであった。
女囚647(ムジナ)は新たに兵士からライフルを奪うと正確な連射で敵兵を矢継ぎ早に撃ち抜いていった。
また卍カマイタチは素早い動きで部隊を翻弄し、次に目にも留まらぬ凶刃で兵士を手当たり次第に狩っていった。
その戦闘中二人の家畜人は殺戮を繰り広げながらもこんな言葉を交わしてもいた。
「何故、助けに来た。卍カマイタチよ! アタシが亡き者になれば奈美桃子暗殺の手柄を独り占めにできたのではないか?」
「確かにな。貴様がいなくなればオレも大幹部、いや次期滅世主のポストさえ夢ではなかろう……。正直貴様は前々から鬱陶しいと思っていたところだ。ただ、ただなあ、今回はほんの気紛れだ。組織に命令されたわけでもない」
「ふん、組織が家畜人一匹助ける命令などくだすわけもなかろう」
「俺も組織を信用しているわけではない。あくまでも俺のやりたいようにやってるまでさ……」
「そいつはアタシも同じさ。滅世主様なき後は組織にゃ義理も思い入れもへったくれもありゃしないのさ」
「けっ、どうやらお互い喋りすぎたようだな。そろそろ潮時のようだぜ」
「ふん! 好きにするさ」
というと女囚ムジナは口に咥えた手榴弾のピンを吐き捨て、巨大な収容所の門扉めがけて弾を放った。

ズドオオオーーーーーーン!

凄まじい爆発音とともに近くにいた十数人の兵士が宙に舞った。
その隙に卍カマイタチは並外れた跳躍力で高い塀を軽々と飛び越えるといずことなく去っていった。
そして爆炎に崩壊した正門を後にする女囚ムジナの黒い影が怪しくゆらめいた。
その光景がフェードアウトし、代わりに車の窓に広がる黒荊公爵邸が目に飛び込むと、
桐島は「さあて、どうしたものか……」と両手で頭の後ろを抱え、ひとつ深い呼吸をするのであった。
p201
これは鬼ヤバ×2
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