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その日、来たる9月30日名古屋大会の対戦メニューが発表された。道場の掲示板に張り出された出場選手には今回も『新宮真希』の名はなかった。今度の名古屋大会には、新宮の家族らが和歌山の田舎から応援に来ることになっていた。しかしその日の新宮は相変わらず当日券の販売と『葛西ミミカ』のセコンドしか出番がなかった。その旨を両親にメールしたが、すぐに「それでも真希の応援にいくのよ」との返信があった。それを見て新宮は少しやるせない気分でいた。そんな新宮のもとへミミカが駆け寄ってきた。ミミカ「先輩~! アタシの対戦相手が決まりました。『キャット・ザ・ニャンコ』選手なんですけど!」 「うん、ねこにゃんか!」新宮はミミカに対しては努めて明るく振るまった。「何者ですか? キャットにゃん……さんって? プロフィールには猫の穴出身としか書いてないんですよ。まったく謎です……」 「うん、基本コミカル系の覆面レスラーだけど、空中殺法を得意とするルチャリブレの名手だね」 「ええーっ、絡みにくそうな相手ですね。大丈夫かな。アタシどうしても次の名古屋は勝ちたいんですよ」 「そだね、油断できないヤツだけど、トリッキーな動きに惑わされずに落ち着いてミミちゃんのスタイルで闘えば勝ち目はあるんじゃないかな」「うーん不安だなー」「大丈夫!大丈夫! この三カ月間厳しい特訓に耐えてきたんだから何とかなるって! 当日はセコンドでワタシもバッチリ応援するしさ!(ニコっ)」 「…………、何ですか、先輩その微妙な笑みは?」 「えひひひ」 「…………、(変な笑い)」このとき新宮はメキメキ強くなり、試合では次々に格上の対戦者を組まれ、ファンの人気も倍増していくミミカと、今の自分の団体に疎まれ気味でなおかつ前座試合のひとつもさせて貰えないくすぶった状況を比べると、そんな笑いを作ってみるのが心持ちの精一杯であった。その日、一人帰り道の新宮は同期の親友『結城明日香』の顔を夜空に思い浮かべてみた。「明日香、早く帰ってきてよ。どこで何してんのよ、電話も出ないし、LINEも返事くれないしさ、ワタシ明日香がいないと……、やっぱり寂しいよ……」 そして二週間後、名古屋大会が開催された。第二試合葛西ミミカ VS. キャット・ザ・ニャンコの一戦が始まった。ミミカに声援を送るファンに混じり『がんばれ新宮真希』の横断幕を手にした新宮の両親とその近所の商店街の仲間と思われる一団があった。それを見つけた新宮は恥ずかしくも、やはり嬉しい気持ちになった。試合開始から、キャットの招き猫パンチやニャンコダイブ式ボディアタックに苦しめられていたミミカも、「落ち着いて、カウンター狙っていけ!」と新宮のアドバイスどおり、自分のペースを掴みだすと、徐々にキック主体の反撃に転じていった。ミミカのイイ回し蹴りがニャンコのボデイを捕らえたとき、新宮はセコンドを離れた。ミミカの勝利を確信し、お祝いのアイスモカフラペチーノを用意するため一旦控え室に戻ったのだ。しかし、このわずかばかりの間にこの一番に思わぬ一大アクシデントが巻き起こるのであった。(続く)
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