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モモコ2nd ダブルピンチスタンバイ
14話 「裸でチュウ必至 嵐の夜は背徳テンション」

その日帝都の空は、その日の真樹太の心中を映すかのようなドンヨリヨドンダ鉛色であった。
「はあー」
先ほどから庭の温室で一人溜息ばかりの真樹太のもとへと訪れる者があった。

「お邪魔しまーす! これはこれは少年さん。切ない恋の苦悩に無為な時間を費やすのにお忙しい処申し訳ございません。はいはい、わかります。おおかた夏に見た林檎子お嬢様の水着姿が忘れられないのでしょうね。では、そんな貴方に相応しいpoemを一句お送りましょう。えー、……午後のまどろみにも似た、或いは狂った朝の光にも似た、その淡いため息のような、そのかすかな放屁。――詠み人知れず、クックック(自分笑い)」

「…………、ああ、なんだ余半さんですか……。で、いつからそこに?(ハアーっ)」
「これは失礼いたしました。余半中也今しがたから貴方の御傍に……、そして心はいつも貴方の御傍に……。」

その男、最近黒荊家で雇用された使用人で、名を余半中也(よはんちゅうや)という。長身の美青年でクールなキャライメージだが、喋るとさっぱり訳が分からない詩的な台詞やウマくないダジャレを連発し周囲を「?」の渦中に巻き込むという軽く変なろくでもない奴である。
主な黒荊家の仕事は黒荊家第二執事ながら雑用一般である。特に家中のトイレットペーパーの端を三角に折ることが主任務であった。
最近、真樹太とはとりわけ仲の良い友達以上親友未満といった関係であった。

「ときに少年さん、貴方の意中の人にしてかなわぬ恋のお相手にして永遠のもったいないオカズこと、かの林檎子お嬢様が例の実をご所望とのことです。それも早急に。」
「はい、ご用意はできてます。こちらに……、って林檎子お嬢様のくだりはそれほど要らなくないですか!」
「フフフ、まあ林檎子お嬢様のことは私的には至極どーでもいいからさておき。この獲れたての「享楽の実」……。うーーーん、色といい、形といい、香りといい、まるで神秘の宝石か甘美な秘薬のよう、ため息が出そうです。涙が心のお小水なら溜息は心の屁といったところですね、きっと……」
「いえ、余半さんそんなドヤ顔でこっち見られても、全然ウマいこと言ってないと思いますけど(半笑)」
「フフフ、無理もないですね。時代がまだ私についてこれないようですね。では逆にお聞きしますが少年さん、貴方のお姉さんも屁をなさるのでしょうか?」
「何の話ですか! 知りませんよ! てか、そりゃ屁ぐらいするんじゃないですか、留依子ネーさんも人間ですもの」
「クックック、ニヘニヘ二へ、へ……」
「もう、何想像してるんですか! そんなことより林檎子お嬢様が享楽の実をお待ちかねなんじゃないんですか? 早くお持ちしたほうが……」
「クックック、そうそう、いけませんねこの私としたことが、ニヘニヘ二へ、ダメだ笑いが止まらない、少年さん、悪いのですが貴方が代わりに林檎子お嬢様に届けてはくれませんか? クックック、ニヘニヘ二へ」
「いいですよ! ……ってやっぱりダメです! 林檎子お嬢様は今フィアンセと面会中なんでしょ、邪魔しちゃ悪いですから……。ここはやはり空気の読めない余半さんにお願いします。僕にはとても荷が重過ぎます……」
「そうですね。今頃フィアンセと裸でチュウでもしてるかもしれませんかもね!」

「がっ!!!!!!!!!!!!!!!」真樹太衝撃のあまり声を失う。眼の色が消えて無くなる、心とともに。

「少年さん、お邪魔しましたー。それではまた、おっ、これはこれは少年さんの双子のお姉さんさん! クッ、クックック」
その執事、余半が温室を出ていくと入れ違いに真樹太の双子の姉留依子が部屋に立ち寄った。
「クッ、クックック、ニヘニヘ二へ、屁……」
「(!? 何この人、人のお尻を覗き込んでニタニタと……、変な人~!)」

「がっ、か、か、か……!!!!!!、はっ、なんだ今度は留依子ネーサンか……」
「どうしたの? 真樹太クン……。大丈夫?」
「何言ってんの? 僕は大丈夫さ。全然普通だよ。何も悩みなんてないよ……。それにこうして享楽の実を見てると心が落ち着くんだ……」
「そお……、真樹太クンがそういうなら……(それにしても享楽の実って私には謎だわ?)」

「享楽の実は虚無が養分……。かなわぬ恋慕に無垢な心が宿す虚無はそれは極上の至上だとか……」
そんな独り言を呟き真樹太より預かったその享楽の実を一つ噛みしめ、その品質を吟味する余半中也。その薄い口元から血のような果汁がどこか淫靡に滴り落ちた。

帝都は台風の接近で風が次第に強くなり、時おり遠くから大地を揺るがすかのような轟音が聞こえてくる。
この日林檎子の自室を訪れていた小野寺助麻呂はこの不安な天候に反して体全体でウキウキ気分であった。
「オマエのほうから会いたいって言ってくるなんて驚いたぜ。この前はあんなに冷たかったのによう、もしかしてオマエってツンデレってやつ? しかも両親がいない日に部屋で二人っきりで会いたいって、意外と積極的なんだなオマエ」
「(オマエオマエ言うな! イカの分際で)少しお話がしたくって……(超作り笑い)」
「お話ねえ……、いいけどさあ」
とタバコをスパーっとふかしながらイカ男こと小野寺 助麻呂は不遜な態度で黒荊家令嬢林檎子に対面した。
同時に辺りをキョロキョロ眺め、お茶を用意する彼女の目を盗んでは金目の物をポケットにねじ込んだり、タンス内の下着類を弄り回していた。いわゆるヤなバカである。
普段の林檎子ならこのような無礼な言動や態度を許さず即刻シメ殺しているところなのだが、この日はどういうわけか終始物柔らかな調子でこのイカ男こと助麻呂を接待していた。
次に助麻呂は書棚に並ぶ分厚い医学書を数冊パラパラめくっては辺りに放り投げつつ、
「オマエ医者なんだってな。いわゆるインテリってやつか。すると、もしかして好きな男も同じインテリの優等生タイプか? ひょろっとしたガリ勉野郎とかよう、ちょうどオマエの兄サンの紀緒彦みたいな男とかなんじゃないのか?」
「……、フフン、残念ながら紀緒彦お兄様は全然タイプじゃないわ。女みたいで頼りないし優しいだけでつまんないヒトよ。私はどとらかと言うと真逆のワイルドでワルい男が好きかな……」 

ここで助麻呂一瞬「ニカっ」とした顔になり、表情に角度をつけタバコを意味ありげにふかしながら、
「ふっ、俺も最近丸くなったっていわれるけど、昔はワイルドでワルと呼ばれていた時代もあったっけかな! 喧嘩最強とかアイツマジヤバイとか噂になったし、あと~ペラペラ」
とここから彼の昔ワルだったアピール(リピート×10)が約二時間半におよび続いた……。

林檎子は話をまったくもって聞いてもいなかったが、「へー悪いんだ」とか「フーンヤバイんだ」とそれなりの合図を打って助麻呂の饒舌を促進させていった。

そして頃合いを見て。
「やだカッコイイー! へー、助麻呂さんってそうとうワルだったんだ~(ワルいのは頭だけかと思ってたけど)。あとワルはワルでもどこか横顔に翳りのある男の人はもっと好きかもね! 例えば出生や生い立ちに大きな秘密があるとか……」

ここでさらに助麻呂一瞬「ニカカっ」とした顔になり、遠く天井を見上げまたもタバコを深く意味ありげにふかしつつ、
「ふっ、実は俺にも人には言えない出生の秘密ってヤツがあってな……。仕方ねーな、今日は特別に話すとするか……」
「うんうん、何、何?」
「俺も複雑な運命のもと生まれててさあ、俺の両親なんだけど、俺のオトーチャンとオカーチャン、実はだなあ……」
「うん、お父様とお母様は実は?」
ここで小野寺助麻呂(バカだから林檎子の策略にはまり)衝撃の事実をあっさりカミングアウトする。

「まず俺の親父は……、かの道満。オマエも知ってる有名祈祷師の秘宝院道満だ!」
「ええっ、お父様は道満先生(確かに不細工でバカなところが正真正銘の親子だわ)びっくりー! 実は私も先生を大変尊敬してるわ! へええー、そうなんだー、で、お母様の方は?」
「驚くなよ、これはオカーチャンからトップシークレットっていわれているからガチでここだけの話だけどよお……」
「うんうん、ガチでここだけの話ね、でお母様はどなた? 私も知ってる人」
「ふっ、知ってるもなにも、オマエの母、………………三輪子! そうオマエの義母の黒荊三輪子だよ! ニカカカ! どうだ驚いたか!」
「………………!(確かに驚いた! 確かにヤな人格は三輪子の遺伝子よね)」
「これは黒荊家の人間は誰も知らないだろうけど、三輪子がオマエの父才蔵と政略結婚する前の年に密かに道満との間にできた俺を産み落とし隠し子として秘密にしていたのさ。まあ、道満には他にも母親が違う隠し子が何人もいて、結局道満が一番可愛がっているのが同居している遠藤魔鬼伽ってヤツなんだけどな。ただ俺は三輪子の実の子だから三輪子オカーチャンはすげえ俺を可愛がっているよ。才蔵との子である紀緒彦以上にね。ということだ! どうだこの事実に驚いたか!」
「まあね、少しは……(なるほどそういうことか)」

林檎子全てを理解したという怜悧な目でしばし偽りの微笑。
小野寺助麻呂もそんな超美少女林檎子を改めて見つめてその超可愛さに息をゴクリ呑む。

ドン!
「えっ、何!?」
すると助麻呂何を考えたか調子に乗って林檎子を部屋の隅に追いやり「ドン」と手を突くいわゆる壁ドン敢行。
普通の男子なら林檎子の超美少女オーラに怖気図いて中々できることではないのだが、彼は本物のバカだからここはできてしまうのであった。
しかし、自分より背の高い林檎子を見上げる形となりながらもこんなことを言い始めた。
「しょーがねーなー! いいだろうオマエと結婚してやんよ。始めのうちはオトーチャンとオカーチャンの決めたことで渋々だったけど、どうやら俺はオマエが気に入ってしまったようだ。はれて俺のヨメにしてやるから感謝しろよ! まっ、長男の紀緒彦は計画通り内藤飴夜と結婚してこの家を出ていくだろうし、仲良くやろうぜ! そういえばしっかし、あの飴夜とかいうババアも良くやるよな! あこから本当に自分で飛び降りるとは思わなかったけどな、ニカカカ!」
「飴夜? あの転落事故は本人のヤラセだったってこと?」
「そうさ、最も飴夜に入知恵したのは道満オトーチャンだけどな。そろそろ紀緒彦に全責任取れって飴夜と内藤家は弁護士団つれて言ってくるだろうな」
「なるほどねえ、さすがは道満先生ね。(サル)知恵が廻るわ!」
「ということでオマエは俺と結婚してめでたく黒荊家の財産はすべて俺のものだ。後はオマエが働いて適当に稼いでくれよ。俺はいっさい働かないけどな! あと侯爵家の爵位ってヤツは俺が頂こう。俺も地位はあったほうがいいからな。以上ってとこかな。もっともすべては俺のためでもあるけど、道満オトーチャンと三輪子オカーチャンがより良い今後を送るための緻密に計算された長期型人生プランなんだよな。」
「そう、道満先生と三輪子お母様は黒荊家の地位と財産を完全に独占するために紀緒彦お兄様を追い出して、その妹の私を自分たちの実子であるあなたと結婚させ、黒荊侯爵家のすべてを掌握しようと……」
「そうさ、本当は三輪子オカーチャンは今でも道満オトーチャンラブなのさ、だから好きでもない才蔵との間にできた紀緒彦より俺を当然優遇するってわけさ! 黒荊家をカワイイ俺ちゃまに継がせたいってたっての願いさ。どうだワカッタカ! ワカッタラ俺を粗末にすんじゃねーぞ! 大切に崇めろよ! オマエみたいな胸のねえツンデレ女でもこの俺のヨメにしてやんだからよ! ニィカカカカカー!」
「そういうこと、フフフフ……」
「ま、最初からこの結婚は決まっていたも同然! オマエを始め黒荊家の誰もかもが三輪子オオカーチャンが決めたことには絶対逆らえないだろう、えっ!?」
「そうね、確かに三輪子お母様が生きてるうちは誰もお母様に絶対逆らえないわね(但し死んだらその限りではない)……。」

――少しの沈黙。夜も更け台風による木々の騒めきが窓を揺らす。

「ゴクっ、そ、そんなことより……」
「何よ……」
突如助麻呂がエロく充血したイカ面を林檎子に近づけてきた。

「(ハアハア)夜も更けたことだし、これからは大人の時間(エロゲ/CERO Z)だ……。いいだろ、しようぜ! 服を脱げよ! は、裸でチュウしようぜ!」
「えっ? 何ですって!!」
「(ハアハア)なあいいだろ、どうせ結婚するんだし、今日はチュウだけ。本当は早くガキ孕ませてオトーチャンとオカーチャンを安心させてやりたいんだけどなー、まっ、お楽しみはまだまだ取っておくとするさ。今日のところは味見程度に裸でチュウするだけだから。な、だから早く服を脱げよ。その脱がすのが面倒くさそうな服をよお!」

などと、ここでエロイカ野郎がこともあろうか婚前交渉の交渉を始めだした。
林檎子は林檎子ですでに怒りを通り越し、逆にこのバカがどこまで調子に乗るのか幾分楽しんでる節もあった。

「ちょっと、乱暴は止めて! わかったわよ! わかったから、じゃあアッチ向いて、そして目と耳を塞いでゆっくり20数えて頂戴……。恥ずかしんだから!(照/演技)」

「お、おう分かった! じゃあいいか数えるぞ! ……、いちい、にいい、さんん、しいい、ごおお、ろくうう、……」
イカ男がまた大きな声でいかにもバカっぽくその数を数え始めた。

ここで林檎子、いつもの薄酷クールな林檎子に戻りナイフのような鋭い光をその瞳に輝かせ、
「パチン」を指を鳴らした。

すると家具の陰や天井裏から人影が出現した。まるで忍者のようにそれぞれ姿を現した複数の輩。そう、それは林檎子子飼いの下僕「筋肉隆々の兄貴たち」の久々の登場であった。
「じゅううさん、じゅうしい」と今だカウント中の助麻呂の背後で、林檎子は何やら兄貴たちに指示を伝えると、もともと服装がパンイチだった彼らはその最後の一枚のパンツを脱ぎ始めた。公式(パンイチ マイナス パンツ イコール ノーパン)

「じゅうはちい、じゅうきゅう、にいじゅううーーー!!」
満面の笑みの助麻呂が目が開けて振り向くと、また満面の笑みの全裸の兄貴たちに囲まれていた。
「いきゃあああああああああ!!」

また彼らの笑みのそれとは違うとても残忍な笑みの林檎子、ここは薄酷クールに加えて鬼畜チックも少々加味されていた……。
「いいことお前たち、そいつのご所望は裸でチュウですってよ。どうぞみんなでして差し上げて……。一晩かけてタップリと……」
と静かに言葉を残すと林檎子は部屋から出て行った。
「いきゃああああああ……誰かたすンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐンぐぐぐぐぐぐううううううううう!!」
哀れなイカ男のグぐもった声と絶望の助けを呼ぶ声にならない声がおりしもの外の暴風にかき飛ばされていったが、その刺激的で情熱的で官能的な一夜は外の大嵐にも負けないくらいの激しさを伴い逃げ場のない密室でとても濃厚に渦巻いた。

真夜中の銀挫、ちょうど辺りは台風の目に入ったか何事もなかったかのような無風状態であった。
とある地下の静かなバーに林檎子の姿があった。そこはいつも林檎子が通う店ではなく、また隣の席にいるのもいつもの執事平川でなく、先ほど登場した新参の第二執事余半中也であった。他に台風の雨宿りの客がまばらではあったが何名かカウンターやテーブルに身を任せていた。

林檎子は時おり時計を見ながら口を利くでもなく、また気分がいいのか悪いのかも分かりかねる複雑怪奇な表情をしていた。
クソお喋りな余半もしばらく静粛を決め込み、夜はキャラの雰囲気がどこか違い、何気に鋭い眼光には怪しい殺気さえ漂っていた。
「お嬢様お見えのようです……」余半が静かに囁いた。
林檎子は我に返ったかのように一瞬緊張感を帯びた目をグラスの氷に向けた。
するとバーのカウンターをツーーーと何か黒い物体が走り林檎子の前でピタリと止まった。
その黒い物体とは一丁の軍用拳銃であった。林檎子がそれを手に取ったタイミングで、
「あちらのお客様からです」とベタなマスターが声を掛けた。紹介されたそのあちらのお客様本人が手を振った。

「刑部大佐(おさかべたいさ)」
「林檎子ちゃんお久ぶりです!」

その男、先月関西は神戸の海軍施設で林檎子が秘密の仕事で面会した帝国海軍将校の一人であった。
今回はその軍事機密とされるもっか進行中の案件とは別件絡みのアポイントのようであった。

刑部大佐へのお返しにと林檎子に代わり余半がある薬品の瓶(髑髏マークが印刷)を同様にツーーーとテーブルを滑走させた。
刑部は手際よくそれを受け取り懐に仕舞うと、林檎子の隣の席へと身を移し、ここはグラスを傾け再会に乾杯した。

林檎子はアップルタイサーのグラスをくゆらせながら、
「ご無理を言って申し訳ございません。どうしても大佐が所属の海軍のではなく陸軍の拳銃が欲しくってさぞお手数おかけしたことかと、特にこの情報二局の正式拳銃十六年式が……」
「訳は聞きますまい、自分も林檎子ちゃんに至極個人的なお願いをしてしまいました……。自分も気の利いたちょっとした毒薬が欲しかったところでしたから。なあにこのような交換条件でよければいくらでも。それでこの薬の実力は?」
「その薬「享楽印の笑い死に薬」はご要望の暗殺に適した毒薬です。まず死因の特定はとても困難です。享楽の実と笑いキノコが主成分の天然由来の毒薬で、ターゲットがこの薬を飲んで何かの拍子に笑ったが最後、腹筋から心筋まで崩壊させ笑いながら死んでいくといった笑いをコンセプトにした新しいタイプのポイズンです。まったく苦痛を伴わずとても愉快で楽しい最高の気分で死に至り昇天するのがウリです。まあ腹上死ならぬ福笑死とでもいったところでしょうか。よって死因もそんな感じで片付けられるでしょうし、よってお足もつかないかと」
「うむ、素晴らしい! 完璧です! 上総提督殿……、あなたは嫌いではなかったが、時代は提督殿貴方を必要とはしなくなったのです。この国のさらなる発展と栄華のためにここは戦争しかありますまい。そのため三国同盟は断固実現しなければならない……。提督殿が反対さえしなければ……、無念至極であります。かくなる上はもはや提督殿に死をもって軍から身を引いてもらわねば。せめて願わくは最高に穏やかな死をば我が与えん……」
ざわざわ(周囲の反応)
「……今、大衆の前でさらっとメガトン級の陰謀を暴露しませんでした? しかもわりと大きな声で……」
「いいんですよ! 大衆なんて総じて馬鹿なんだから!」
ピクっ、ざわざわ(周囲の反応)
「……それはそうですが」

さらに酒の勢いか刑部大佐かく語り始めんとス。
「それより林檎子ちゃん、前に医者やビジネスマンはつまらないって云ってましたね。よかっったら帝国海軍に来ませんか? 以前より貴方の戦略戦術センスは並々ならぬものと感服しておりました。どうでしょうか将校として一艦隊を率いてみては。ゆくゆくは連合艦隊提督のポストもアリかと……。どうです、海軍に入って我々と一緒に世界征服でもしませんか!!」
「ええっ、海軍の方々はそんなイキったことをお考えなんですか!? 帝国軍人の方々はもっと穏健な人ばかりかと……」
「穏健……。腑抜けかヘタレとおっしゃってください。しかしそれは天現寺閣下率いる陸軍の話です。我々海軍は今日この頃この国の明日のため世界の列強相手に大戦をしたがっている……」
酒が入ったのかこの大佐の眼と言動がかなり怪しくなってきた。
「やっちゃうぞー世界大戦! 征くぞロンドン、ワシントン! あーあ、林檎子ちゃんが協力してくれればすぐにでもやっちゃうんだけどなー、世界征服!(ウイー、ヒィック)……、いいじゃないですか世界征服! 男の夢! 男のロマン! 男の本懐! ねー林檎子ちゃん一緒にやらない? やろーよ! やろーよ!(ウイー、ヒィック)」

「いえいえ、私は女の子ですよ……、世界大戦や世界征服だなんて……。女の子はとてもそんな野心も野望もありはしませんですのよ」
「へええ、意外と謙虚なんですね。でも女の子にも野心も野望に代わりに夢くらいはあるでしょう? 例えば―?」
「そうですねえ、女の子の夢は、そんな男の人の夢と希望をいつまでも見守ることくらいでしょうかしら……、特に大切な人なら尚のこと……」
「がっはははは!(ポンと膝を叩く)いやあ、こりゃまいった林檎子ちゃんスゲー女子力! なんだか今日の林檎子ちゃん可愛いなあ! 嗚呼愉快愉快! オジサン今日は実に愉快! 愉快すぎて酒がうまい! オイ、オヤジ酒だ! 酒! 酒持ってこい! がっはははは!」
「………ウフフフ」

林檎子は手にした十六年式拳銃の鈍い光を眺め大人しやかに笑っていた。
いつのまにか大佐は軍歌を口ずさみながらカウンターで寝始め、バー店内に束の間の静けさが戻ってきた。

「(……男って裸でチュウとか世界征服とかそんな事ばっかりだ。そこへいくとやはり紀緒彦お兄様は心がキレイだ。ピュアで聖人君子で天使様だ。誰が何と言おうと私の中では唯一無二のSR(スーパーレア)大切な人、愛しの人だ。守らなければ、紀緒彦お兄様の高潔と純真、そしてその夢を。そのためには……)」

すると今まで空気を読んで大人しかった余半中也が一句できた(今までそれを考えていた?)とばかりに大喜利フレーズを口にした。

「お嬢様、今宵は嵐の誘いに張り裂けそうな胸キュンがハリキュエーンです。台風、ハリケーンだけに……(ドヤ真顔)」

とまたウマくないpoemが案の定スベったその刹那、再び活動を再開した台風が凄まじい唸り声をあげ夜の街を激しく折檻するかのように揺るがしだした。

そして林檎子の心中にもまたとてつもない風雲が巻き起ころうとしていた。

「……そのためには、道満に三輪子! あいつら絶対ぶっ殺してやる!!」
その拳銃を握った手の震えに何故か胸弾む思いの林檎子であった。

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※諸般の事情で番組を変更し「架空アイドル 絶対ありえまPON!」をお送りします…
次回の林檎子はヤル気満々でお送りいたします。良い子は絶対見ちゃダメよん!

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