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『フォーゲットイヤー・ワンディ・トーナメント』の二回戦目Bブロックは一回戦の「神崎 嶺」、「新宮 真希」の両者失格により、自動的に「日向 明美」が準決勝である三回戦に進んだ。そして三回戦Aブロックは特別シード枠「夕月 鶴子」と若手ながらも勝ち上がった「結城 明日香」の対決となった。万全のコンデションの絶対優勝候補夕月に対し、すぐ前のギャラクシー戦で体力の消耗と足のダメージが残る結城明日香はここが正念場と意を決してここ一番に臨んだ。――「夕月さーん」、「結城―っ」、「鶴子姐さーーん!」、「明日香ちゃーん!」と大会の盛り上がりに応じて両選手への応援合戦もかなりの熱がこもっていた。セコンドの「新宮 真希」と「葛西 ミミカ」も敗退した自分の分まで頑張れととばかりに明日香にエールを送った。レフリー社長上原もこのカードを待ち望んだかのように嬉々とした眼差しで両選手を迎えた。お互いのコール後ゴングが鳴り試合開始。しばし真剣な眼差しで様子を伺う二人。少しずつ間合いを詰め、リング中央でロックアップ。明日香は組む前に蹴りを繰り出すかと思いきや夕月の力比べに応じた。すぐさま明日香は両腕を下に捻られ先制は不利に。その後片手を後ろ手にひねられたり、後ろから羽交い絞めにされたりと立て続けに夕月の関節と絞め技の洗礼を受けることになった。その後もマットに押し倒されての夕月のねちっこい寝技に苦しめられる明日香であった。時折なんとかエスケープし得意のミドルやハイキックを放つが、ダメージが残る脚ではいつものキレがなく、完全にコースを見切っている夕月がはんなりとこれをかわし、その肌に掠ることもかなわなかった。そして試合時間の半分の5分を超えたところで夕月の飛びつき腕ひしぎ逆十字で明日香は最大のピンチを迎える。激しい腕の痛みに耐えながらロープを探る明日香。その姿にセコンドの新宮とミミカ及びファンが一丸となり彼女を応援した。なんとかロープに逃げ場内の大拍手で生還した明日香。フラフラの状態で放ったバックキックが夕月を初めて捉えた。その威力で夕月はコーナーにもたれ掛かる。試合時間は9分を超え、ラストチャンスに賭ける明日香は脚のダメージを振り払っての必殺技、先のギャラクシーを辛くも仕留めた限界ダッシュフライングニールキックにいった。「おおおおおおお!」ここで新宮、葛西、ファンは最高に色めき立った。――結城「はあああ!」、夕月「御粗忽!」夕月の瞳が冷い光を帯びた、と同時に明日香の鋭い足刀が夕月の手中に収まった。「何!?」ここで新宮、葛西、ファン固まる。そして常はクールな明日香の顔に恐怖と驚愕の色が浮かぶ。「往生しなはりや!」いつにない気合いのこもった夕月の啖呵が場内にこだました。とともに明日香の足を取り両肩に抱え、上半身はストレッチマフラーのような体勢をとった。さらに下半身で明日香の頭部を膝の内に挟み三角絞めのように極めると、その高難度なオリジナルホールドを完成させた。手際よく、しかもあくまではんなりと、それはまるで日本舞踊でも舞うかのような所作で、かつ折り紙を折るかのような正確さであった。その夕月の最大の極め技中の決め技、……その名も「乱れ夕月逆艪崩し」。背筋が凍るとはこのことであった。新宮、葛西を始め会場が言葉を失った。当の明日香も沈黙したまま全く動かなくなった。レフリーの社長上原も明日香のタップか意識の有無を確認するに集中した。しかし明日香はギブもしなければ堕ちてもいなかった。寸でで夕月の責めに耐えているようであった。その時「カンカンカン」ここでゴング。会場が騒めいた。結果、試合は時間切れであった。判定は文句なしで夕月の勝ちであった。夕月の勝利が宣告され大声援が響いた。その傍らで明日香の介抱に新宮とミミカは懸命となっていた。ここで改めて社長の片腕にして亡女ナンバー2姐さんの夕月 鶴子の怖ろしさを皆に知らしめた一戦であった。
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