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北関東女子プロレス足利大会第三試合「新宮真希」と「由良まひろ」のカードは、北女代表「真岡一果」が持つオール北関東無差別級チャンピオンベルト挑戦権を賭けた注目の一戦であった。そしてさらに新宮、由良の亡女新人時代からの数々の因縁もからみ、両ファン(といっても数では圧倒的に由良)の盛り上がりは並みじゃなかった。「由良ー!」、「マヒロー!」、「まひろーんっ!!」 フリーで活躍中の由良は安定したファンを獲得しており、リングインした二人の人気は露骨なものがあった。新宮が入場時から変な気持ちでいたのは、何も対戦者まひろのことばかりでなく、今、自分自身が身に着けているコスチュームによるところも大であった。最初に由良がコールされるとカラフルな紙テープと大声援が飛び交った。これを受け由良が「ゴメンね太陽」Tシャツを色っぽく脱ぐと、鍛えぬかれたナイスバディ(死語)が披露され、男性客はファンならずとも溜息、鼻息まじりに見惚れてしまう者も多く、対戦者の新宮ですら一瞬「これがまひろ?」と刮目するレベルであった。次に新宮がコールされると、いつも通り紙テープの一つが飛ぶわけでもなく、間の抜けたファンの「しんぐー」と棒読みの声援後、何故か「失笑」といつもの通りであった。そしていつものガウンを勢い良く脱ぐと、ここからはいつもではない(問題の)コスチュームのお披露目となった。この本邦初公開のコスチュームはアイドルか魔法少女ばりのフリフリのブリブリのプリティー&キューティな衣装(確かに新宮には罰ゲーム)であった。これは実に亡女の幻のアイドルユニット「BPJエンジェル」時の新宮(ホワイトエンジェル真希時)のコスチュームなのだ。新宮「明日香だってニンジャの格好で頑張ったんだ。私だって頑張るのよ!」 ここにきて半ば開き直った感のある新宮は、BJPエンジェルのキメセリフ「リングサイドエンジェル~、プリティホワイト真希!」と叫び、真横ピースとウインクのキメポーズまでやってのけた。確かに普段の新宮からは考えられない行動だが、ここまできたら逆にやらざる得ない? 本人はあらかじめ大ブーイング覚悟であったが、意外にも客席の反応は悪くなく、「フゥーーーーーーーッ♡」 とまさかのラブリーな嬌声まで飛んだ。これにはさすがの新宮も「ここのお客さん優しい……」とついうるっときそうになった。そして対面の由良まひろを見遣るとおこ(怒っている)かと思いきや、何故か不自然なほど無表情な目をして佇んでいた。おそらく怒りすぎて感情をなくしたかのかもしれない……。由良「(新宮真希! きさんどれだけうちの気持ちを踏みにじれば気が済むと! 絶対ボコボコにしてやるちよ!)」――実はこの衣装とキャラ(プリティホワイト・立ち位置センター)はかつて亡女時代、由良まひろが獲得する予定であった。突如スポンサーの意向で由良から新宮に中の人が変更され、それを知った由良は寝込むほどの大ショックを受け、精神的に不安定になったこともあった。結局新宮のワガママでユニット解散となり企画はオールオジャン。挙句会社激怒&プロレス界から総スカン(つまりこの衣装は新宮にとって二重に罰ゲームであった)。とこのことが新宮と由良の決定的な確執になったと思われる。――ゴングが鳴り試合の火蓋が斬られた。タンタンタンと軽快なステップで由良が絶妙な間合いをとる。新宮はセコンドの明日香のアドバイスを思い出すも「(気をつけろ! まひろは以前の彼女じゃない)」、「わかってる(けどね……)」何だか今一つ気合いが入らない。シュッ! 不意にまひろのミドルが危うく新宮の脇腹をかすめた。「速い!」新宮ヒヤリと焦りが、対する由良は余裕の笑み。――試合時間が10分を経過。形勢は地道に打撃技をヒットさせ続けた由良が一歩リードかと思われた。この日メンタル面で万全とはいえない新宮はなんだか動きが鈍く体が重そうであった。徐々に温まってきた会場の応援もかなりの処、由良まひろし推しであり、次第に勝負の流れは由良になびいていくようであった。ゴツ! 僅かな隙をつき由良の飛び膝蹴りがエグい感じで新宮の顔面にヒットした。「おおおおおーーー!」とお客さんはこの強烈な一撃に騒然、いっきに由良の勝利がリアルになる。赤い雫がポタポタとマットに落ちた。新宮、口内を切ったのか唇の端から血が溢れる。純白の衣装の所々が赤く染まった。ドスン! さらに次の瞬間重い廻し蹴りが新宮のボディに突き刺さる。新宮堪らずその場にダウン。間髪入れず由良の強烈な蹴りの踏みつけ攻撃が新宮に襲い掛かる。その容赦なさが由良の恨みの深さを物語るかのようだ。「……新宮さヤバくね」と北関東女子メンバーの心配そうな声が囁かれる中、セコンドの結城明日香は冷静でいた。何とか立ち上がった新宮が放ったラリアットが由良にラッキーに命中。そして倒れた由良の両脚に両手を掛け、得意の逆エビ固めに持っていこうとする新宮。組み敷かれていた由良が不敵に笑う、罠だと気付いた新宮は逆に由良に腕を脚で取られる。クルっ! 何が起こったのかもわからぬまま全身を転がされた新宮。そのまま右肩を極められ、柔術の技「オモプラッタ」に嵌められてしまう。「うおおおおおおおおお!」一度相手の必殺技を受けながらもこれを華麗に返し、見事なまでのいい形で勝利を今まさに掴もうとする由良。思えば海外でのハードな武者修行も、憎い新宮をボコボコにするという目標があったからやってこれたのだ。由良「ばってん、想定内であっけないきに!」 心の余裕からかここは由良は勝負を急がず、悪い顔してとある悪戯を思いつく。オモプラッタを極めたまま、新宮のコスチュームのお尻に手を掛けそれをズリ下し始めた(新人時代のお返しだろうか?)。半ケツを必死に阻止しながら新宮は何やら対戦者の由良に話かけ始めた。新宮「まひろ、随分強くなったね。きっとたくさん練習したんだね。昔から努力家さんだったもんね。偉いよまひろは。また一緒にプロレスが出来て嬉しいいよ」由良「何言ってんだボケタン! きさんをばブっ倒すために海外までいって辛い修行して強くなったんとよ! うちはきさんがそれほど大嫌いなんだっち!」  新宮「そうかあ、まひろとは色々あったけど、うん、思い出すなあ、そうそうまひろが作ってくれたお弁当、あれ美味しかったのよ!」  由良「ああん? あれはきさんが間違えて人の弁当ば勝手に食ったんじゃなか! 誰がきさんのために作ったとよ!」 新宮「そうだっけ、あとまひろのパンツ、間違えて履いたら破けて(笑)」  由良「……あれもきさんか! どんだけ間違うんだよアホボケタン! しかもパンツって、程度ってもんがあるきに!」 新宮「あと……」  由良「もうよかっ! 黙れ! 黙るとよ! きさんとなんか喋りたくないち! それよかとっととタップしろ、マジで腕ヘシ折るばい!」  新宮「えっと、話は変るけど、あとこれだけは言わせて……」  由良「黙れって言ってんちよ!」  新宮「まひろ、本当に強くなったけど(ニヤ)、残念ながら……」  由良「なっ?」  新宮「まだまだ私のほうが全然強いのらよ!」ここで新宮、無理矢理力技で由良のオモプラッタを前転でひっくり返すと、半ケツのまま由良を高々と抱え上げ豪快にマットに叩きつける。ダーン! リングが砕けるかと思われる程の凄まじい音が会場に響いた。由良の顔が恐怖と苦悶にゆがむ。会場の誰しもが唖然となる。そしてさらに新宮(コスチュームのお尻を直しながら)、背後から由良を渾身のジャーマン二連発を叩きつける。ダーン! ダダーーン! さすがに由良の頭上にヒヨコが踊り出す。「おわわわわ……」半ば勝利を確信していた由良のファン一同は言葉を失い一気にお通夜の空気に。また真岡をはじめとする北関東女子メンバーもその新宮のタフさとパワーに目を見張り固唾を飲む。そして新宮再び逆エビの体勢に。今度は由良も新宮の剛力に捻じ伏せられ、赤子のごとく無抵抗のまま身体は反対のクの字に。「らあああああああーーーーっ!」さらに新宮が凶悪なまでに由良を絞ると、「いやああああああん!」すでに限界に達した由良の悲鳴が響いた。そして観念した由良の掌がタップを打つ瞬間、ズドン!!  新宮の背中に衝撃が走り、そのまま新宮は体ごと前のめりにふっ飛んだ。何者かが背後から新宮を全力で蹴飛ばしたのであった。「ええええええええ!!」と会場が大騒然に。 新宮「……え!? 何で?」 このまさかの乱入者に新宮は、勝負の行方以上に激しい衝撃を受けるのであった。 
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