FC2ブログ
p275
「ごめんね真希ちゃん大丈夫だった! 怪我しなかった?」 JJPW崎大会が行われている川崎体育館の控え室に突如現れた「倉成千春」は「新宮真希」を見つけると、いきなり飛びついてきつく抱きしめた。新宮はその手をふりほどいて、倉成を両手で突き飛ばしたい衝動に駆られたが、それもできずにいた。その理由は先日の北関東女子プロレス足利大会に起因する。対戦者の「由良まひろ」をあと少しでギブアップ勝利というところに、あろうことか「アドミラールQ」に扮した倉成が乱入し、新宮を思い切り蹴り飛ばした挙句、息を吹き返した由良と共闘し新宮に襲い掛かりフルボッコに。その結果、勝負は滅茶苦茶の没収試合となった。当然「真岡一果」のオール北関東無差別級ベルト挑戦権はお流れとなってしまった。そのことを思い出すと腹が立って腹が立ってどうしょうもない新宮であったが、不思議と倉成の抱擁を拒否できず、されるがままになっていた。控え室には新宮のほかに「神崎嶺」と「日向明美」、そして「結城明日香」もいたが、誰もがこの光景にポカーンと呆気に取られるばかりであった。頃合いに神崎がふと口を挟んだ。神崎「千春さんがここにいるってことは、ひょっとしてこの後ウチらの試合にも乱入してくれるってことですか?」 倉成「フっフーーん! まさかね、それじゃあ意外性もサプライズもナシじゃない。だから今回はナシかな……」 神崎「なーんだつまんねーの、今日はただでさえつまんねー試合なのにさ……」この後、神崎嶺は、JJPW「森下多美子」の持つJJPW認定チャンピオンベルトを掛けたタイトルマッチを二週間後に控え、その前哨戦ともいうべきタッグ戦「神崎嶺、日向明美 VS. 森下多美子、飯星百合香」に臨もうとしていた。倉成「じゃあね、嶺ちゃんもみんなも、がんばってね、よろしく!」と部屋を出て行く倉成をいまだ唖然と見送る神崎、日向、結城であった。新宮は顔を伏せて、訳もなく堪らない涙を落としていた。それを見た一同。「ぷ、っ、ククク……」 新宮「そこ、笑うとこですか!」 神崎「わるいわるい(笑)、お前泣くと一段とブサくなるのな!」 日向「ヤバイ、真希の泣き顔チョー受けるんですけど!」 新宮「まったく! って明日香まで笑ってるし!」 明日香「……いや(笑顔)、そういうんじゃなくて、真希ってカワイイなあと思っただけで♡」 新宮「んむぅ……(泣き止む)」 神崎「まあブサ真希さ、いずれお前の仇はとってやるよ。これ以上千春さんの思い通りにはさせたくないし、 あの女は私が必ずブッ潰してやるから。そんときはアイス奢れよ! 高いヤツ」 新宮「いや、いいです! 自分のケジメは自分でつけます! 倉成千春が何だってんだ! 何がアドミラール何とかだ! ふざけやがって! アンチキショー!」と勢いよく立ち上げると、「そうこなくっちゃ!」と神崎が景気づけに新宮の腹をカウンターで蹴った。あまりの痛さに新宮は尻モチをつき転倒するも、神埼は笑いながらその勢いをもって試合会場へと向かっていった。結城「大丈夫か?」 新宮「大丈夫! 今、かなりムカついてるからよう痛くないのよ……(心は痛いけど……)」 その新宮が内心ムカついているのも心を痛めているのも神崎ではなく、倉成のほうであった。――試合直前、片やJJPW側の控え室では……。「やだようこわいよう、だって嶺ちゃんの蹴りすごく痛いんだもん! アタシ死んじゃうよ! でも負けたくないよう! ベルトも取られたくないよー!」戦う前からチャンピオンで団体代表の森下は半泣きの恐慌状態であった。そこでJJPWのナンバー2にして森下の筆頭家老といわれる飯星由理果は森下の体をさすりながら「大丈夫です、大丈夫ですよ、きっと大丈夫です(すでに手はうってありますから……)」と何やら策士の顔で諭すのであった。――「カー――ン!!」いつもの倍以上のお客さんたちの大声援を受け、JJPW川崎大会メインイベント「神埼嶺、日向明美VS.森下多美子、飯星百合香」の試合が始まった。「神崎ー!」、「嶺サマー!」とアウェイながらも神崎ら亡女勢の人気は高く、会場は普段のJJPWには見られない盛り上がりを呈した。先鋒は神崎と森下で、大将同士がいきなりぶつかった。内心ガクブルの森下はそれでもアイドルの笑顔で神崎に握手の手を差し出すも、対する神崎は握手の代わりに、高く上げた踵をいきなり森下の脳天に叩き落とした。森下「ぎゃーーーーーん! 痛いよ! 痛いよ! 嶺ちゃんが蹴ったあーーーーーっ!」 ギャグなんだか本気なんだか分らぬ喚き声を発しながら森下がマットを転げ回わった。すかさず飯星がフォローにリングインしたが、同時にリングインしてきた日向に捕まってしまった。神崎はとっとと試合を終わらせようと、森下を抑え込み決め技のスープレックスの体勢に入った。セコンドの新宮と結城もこの勝負神崎、日向組の勝利を確信していたが、ここで大アクシデントが……。すると観客席から厭などよめきが起った。またもや何者かの乱入か? 神崎がこの厭な気配に振り向くと、「久しぶりだな、神崎ドブス野郎!」と野太い声が轟いた。なんと花道に現れた者は。若干忘れかけていたあのお方、ヒールの女王、煉獄党の「ヘルファイア業火」であった。
スポンサーサイト