FC2ブログ
魔少女旋風 ナハト×マギカ
第九話 「停戦協定破棄 魔法少女殲滅すべし!」

対魔法少女対策委員会の前線基地である小原崎城にマギカは一人でやってきました。
正確には背中に背負った箱(聖櫃)の中に魔法生物のポピンがいたので一人と一匹でした。
この日帝国政府と魔法少女結社マギカ・ギルドとの代表者による会談の場が約束されていたのです。
城の追手門で桐島少尉以下帝国軍兵士がマギカをお出迎えしました。
「ご苦労様です、こちらへ」
カチャ!

いきなり兵士に銃口を向けられ、マギカは閉口しましたが、それでも「よろしくお願いします」と一礼し、大人しく指示に従いました。
案内されたのは、会議室というよりは地下の暗い部屋でした。そこで係りのものから服を脱ぐようにとの指示がありました。
「無礼だピポ!」と憤ったポピンが箱から飛び出して抗議しました。周りの者は珍しそうにその魔法生物を見つめてました。
スーツ姿の役人が「上からの指示でして……」とニヤニヤしつつお風呂用の籠を用意しマギカに脱衣を促しました。
「……わかりました、少しでも信用して頂けるなら」とマギカは着ている服を脱ぎだしました。
「見ないように」桐島が彼女に背を向け周囲の者にも注意しました。
魔法少女のHな姿を見た男衆は魅入られ、取り込まれてしまうという俗説があったので、一応男性諸君は視線を外しましたが、露骨に気掛かりであったり、たいそう残念でならないという顔をしたものが大半でした。
手早くパサ、パサと一枚づつ服を脱いでマギカは早々に下着姿になりました。マギカは天井から厭な視線を感じ、そこに設置されていたビデオカメラを睨みつけました。
そのカメラの映像を別室で見ている二人の人物がいました。
「晴明曰く、なかなかの恵体かと」
「うむ、イイ魔法少女に成長したものだ。あの道満のおチビちゃんがな……」
モニター越しにマギカを観察していたのは政府の超VIP高官犬神征治郎とその顧問軍師諸葛亮晴明でした。
そして着衣を許されたマギカが通された場所はさらに地下にある鉄格子で仕切られた部屋でした。
小さなテーブルに椅子が一つあるだけで、ほかに誰もいない場所が帝国政府の定めた会談の場だというのです。
相変わらず銃を向けられたままのマギカは貧相な椅子に腰かけるとポピンを膝に抱き、しばらく沈黙しいていました。
『ガー、……ツーーー』ノイズ混じりのスピーカーから男の声が聞こえてきました。
『御足労様、私が帝国政府の犬神征治郎だ。今回は諸事情により直接の対面は控えさせて頂く、ご無礼を許して頂きたい……』
「本日はありがとうございます、魔法少女結社マギカ・ギルド代表のエンダー・サルバトレ・マギカです。こちらをどうぞ、私たち魔法少女が拵えたチョコレートです。皆様のお口に合うかどうか……」
『お気遣い頂き嬉しい……。ところでマギカさんのことは個人的にもよく存じている。貴方の父、緋宝院道満先生とは長い付き合いでな……、貴方の幼いころから色々と知っているのだよ……」
『晴明曰く、特に緋宝水には随分とお世話になりました……、その節は……』
「…………人間を辞めた今の私には過去など無いようなものですので」
マギカにとって、父道満の話題はこの会談に関係もなく、また愉快なものではなかったので、これ以上話が発展するのを遮るかのように口を閉ざしました。
*マギカは生前、インチキ祈祷師と噂される父緋宝院道満の実の娘であり、道満の収入源である緋宝水の製造に関与(おしっこ混入)や、友人の鬼畜少女R子の陰謀で実父と無理矢理関係をもたされ自死したなど、とても思い出すに堪え難い辛い過去があったのでした。

マギカのトラウマによる煩悶を確かめ、先制パンチ成功とばかりに犬神卿と晴明は意味ありげにほくそ笑むのでした。

『さて、そちらの可愛らしいお客人は?』
「ポピンといいます。私たちが魔法少女帝国を建国した際、王となる者です」
「ポピンだポ! 苦しゅうないペポ」
『これは、これは、国王様とは(半笑)』
『晴明曰く、魔法生物とはびっくり珍八景!』
「…………、本題に入りたいのですが、その前に周囲の軍人の方のお役目はもうよろしいかと、魔法少女に対し檻も銃火も意味がないとだけお伝えします。そもそも私は人間に対し敵対する意思はありませんので、そこの点はご理解ください」
「そうだ、そうだペポ! これじゃあ罪人扱いだペポ! 第一失礼だペポ! 人間の国と魔法少女の国との対等な話し合いを要求するペポ!」
『(……対等ねえ)、承知した。おい銃を下げてやってくれ、我々とて、魔法少女および人外、闇の眷属に対し、いたずらに敵対関係を望むものではない。相互にベネフィットが期待できるウィンウィンの関係が実現できれば理想的と考えている。先ずは我々に対するそちらの要求、要望をお聞かせ願おう』
ここで帝国軍人は銃を下げ壁際まで後退しました。立ち合い人の桐島は尚も緊張感を漂わせたまま、マギカの様子を伺っておりました。
「私たちの要求、要望はこちらに記してまいりました」
マギカが取り出した書状を桐島が受け取ると、すぐに係りの者に渡し、別所で控える犬神卿&晴明へと回したのです。
―――以下中略

城内の隠れ部屋で控える忍者処女衆たち、現在敵将のマギカが単身でこの本丸の地下にいると聞くだけでソワソワしているといった風でした。
「んと、んと、えっと、この人がこうで~、あの人が確か~」とひとり楽しそうにお絵かきに興じていたのはナハトでした。
なにやら巻物に墨筆で数人の女の子の絵を名前とコメント入りで描いていました。イタイくらいの幼児レベルの絵心と筆跡をもって。
「できたー」
「よし! できたか!」
とリーダー如月がナハトから巻物を取り上げると、それをみて一瞬残念な顔をしながらも、
「澪、水写真に」
「はいッ」
澪と呼ばれた忍者処女はその巻物をタライの中の謎の色をした液体に浸し、ゆらゆらとくゆらせておりますと、なんとナハトの抽象画のようなデフォルメが効いた絵が、リアルな写実派、というよりもはや写真そのものの画像に変化していったのでした。
「むおおおおおおおお!」
一同が感嘆の声を上げると、如月がそれを取り上げ、
「うむ、『人外魔法少女人別帳!』 確かに手に入れたわ!!」
とナハトが描いていたのは先日マギカ千夜一夜城に潜入した際、チェックした敵魔法少女たちの写真付き個人情報でした。
「でかした、ナハト、褒美をつかわす」
「わあい、本当でござるか! して何でござる? 食べ物でござるか? うまいものでござるか?」
「食べ物というか、元食べ物だ。はい、アイスのハズレ棒!」
「………………(死んだ目)」


再び場面は会談中のマギカと犬神卿。

1.魔法少女たちマギカ・ギルドは約束の地、エリコシュオンに旅立つまでの間、この国の領土、K県小原崎市星降山に独立した国家「魔法少女帝国マギカ・ライヒ」の建国を認めること。
2.魔法少女、及び魔法少女に係属する者はこの国民とし、人間社会のあらゆる法や秩序を越えた存在であることを認めること。
3.マギカ・ライヒの領土と国民に対し、いかなる戦争、侵略行為を行わないこと。
4.マギカ・ライヒの国民である魔法少女や使い魔、魔法生物をみだりに差別、侵害しないこと。
5.マギカ・ライヒの国民の性質上、人間の血肉と命、すなわち贄が必要で、人間は無条件でこれを提供すること。但し、重犯罪者、自殺志願者、不治の病の者、魔法少女希望者を優先的に判断しこれをマギカ・ギルド最高会議で人選を決定する。なるべく人間の不利益にならないよう配慮するのを約束する。

暫く沈黙が続いた後、犬神卿が切り出しました。
『確かに、貴方たちは我々の人智を越えた存在、要求のいくつかには聞く耳を持たぬでもない……、
ただ5番目の贄の要求、人間の命を差し出せとは如何なる無法、たとえそれが犯罪者や自殺志願者、不治の病の者と何人でもあろうとも、人間、すなわちすべての国民を守るのが我が帝国政府の務め、亡魂帝国国民誰しもが承認できるハズがあろうか! これに関してはNOだ! ありえん!』
「それにつきましては、私たちは善良な人間を贄に差し出せとはいいません。ただ人間の敵は人間と聞きます。人間の世は殺人や戦争が古より絶えないではないですか、自分、あるいは自分の所属組織の利益で殺人や戦争をするような人間が存在します。人の命を軽んじる悪魔のような人間は駆逐、排除したほうが良いはず、よって私共が贄として魂を冥界へと還して差し上げるのです。神に代わって……」
『ほう、神ときたか、まあ犯罪者は分かるが、戦争は国家でもコントロールできるものではないと思えるが……』
「それが今、戦争さえコントロールしようとしている者たちがいるのです。大いなる悪意をもったとある組織が人間の抹殺を企んでいます。それもかなり現実的に。私たちマギカ・ギルドは今後その組織の者から優先的に贄を頂き、この地上にいる間に、できればその組織を壊滅しておきたいのです。それが私たちにできること、なすべきこと、そうです人間との最後の友情のために。」
「まってください、もしかしてその組織というのは」
ここで桐島が僭越覚悟で会談に割って入ってきたのです。
「……帝国軍情報局の方ならご推察のことかと」
「マギカさんは人間だった頃、R子と親交があったと聞いております。だとすればその組織とは……」
『黒林檎十字会、ということになるな』
「……………」
マギカの沈黙が犬神卿の指摘を暗に認めたかのようでした。
「犬神卿、ここは彼女達の主張を認め、我が国のために黒林檎十字会壊滅に協力頂いてよいのでは?」
『桐島少尉、これは仮にも国家と国家の問題だ。この場で黒林檎十字会はまた別問題、しかも取るに足らない案件ではないか。私見での軽率な発言は慎んでもらいたい』
「はっ、大変失礼致しました」
ここで帝国の脅威という点では、もっか黒林檎十字会のほうが、マギカら魔法少女ギルドより深刻なのですが、ここで軍閥と政府との間で認識の乖離がみられるのでした。
『なんでも黒林檎十字会なる組織はすっかりナリを潜め、皆目存在が掴めない。もはや都市伝説のようなものと聞くが……、そこのところはどうなのです? エンダー・サルバトレ・マギカ』
「R子の怨念がある限り、世界の随所に潜伏し時を待っております。次期R子後継者となる限界因果少女降誕の日こそが彼らが一大蜂起する日です。彼らの目的は全人類の抹殺です。すなわち人間の本当の敵なのです。人間が戦わなければならない本当の敵」
「人間の敵……。(限界因果少女? 聞いたことがある。組織が崇拝する邪神の地上代行者とか、おそらく遠藤魔鬼伽もその限界因果少女の有力な候補だったのでは)」
桐島はマギカの語る処を詳しく聞いてました。
『なるほど、黒林檎十字会のことは改めて軍閥の者に任せするとしよう。さて本題に戻るが、マギカ・ライヒ建国の件は検討させて貰おう、贄の提供は黒林檎十字会だったとしてもかなり厳しいと理解してくれ。魔法少女エンダー・サルバトレ・マギカさんの提案は十分に理解した。あとは私の一存というわけにもいかぬから、世論、識者の判断を含め帝国政府及び帝国議会でその決断を仰ぐとしよう。それには時間的な猶予を頂きたいが、如何かな?』
「わかりました。贄の件がご理解頂けないのは人間の法規や倫理規範では当然といえましょう。でしたら私どもはなるべくエリコシュオンへの旅立ちを急ぐとします。その間少し住む場所をお借りして人間たちと一緒にいさせてほしいのです。ただし決して人間たちの悪いようにはいたしません。それだけはお約束します。あとは私たちにも生きる権利、平穏に暮らす権利があるので、それを認めてください。いかなる暴力、戦闘行為や、武力攻撃をしないことをお約束頂ければあとはそれで……」
『結構! あなた方の要求は以上でしょうか。それでは次に私たちの要求も聞いてはもらえないでしょうか? 何、難しいことではない。貴方方が帝国国民を贄にしたように、私たち亡魂帝国にも魔法少女を何人か提供してもらいたい。その生態など魔法学、生物学的にも興味があるのでな。なんならマギカさん、敗国側の戦犯としてあなた自ら献体になってもらってもよろしいが……』
「…………破廉恥な、お断りします! そのような条件は聞けません、その前にまだ戦争で負けた訳ではございませんので、聞く理由がありません」
『フフフ、なんとも身勝手で驕慢な仰りようだ。これも美少女の特権というものですな。だがご自分の立場をご理解頂けておられるか? まあ、いいでしょう、今回は無かったことに……』
「ところでキララは? あなたのご息女犬神綺羅螺はどこです? やはりキララは私が連れて戻ります」
『ああ、あの娘の姿格好をしたという魔法少女ですか』
「お会いになられたのですか?」
『いや、私も多忙でな……、困ったことに立場もあれば……』
「もう、いいです! キララをここへ呼んでください、キララを私たちの仲間のとこへ連れて帰ります!」
「そうだペポ、こんな薄情なノンペの父親の元ではキララが可哀そうだポ!」
『……………』
『(晴明曰く、もうよろしいかと……、綺羅螺お嬢様の粘膜からDNAは採取し、すでに黒荊製薬に回しておりますゆえ)』
『わかった、その魔法少女はお返ししよう。桐島少尉、さっそく例の魔法少女を解放してやってくれ』
「はっ」
桐島は手早く部下に指示し、キララを別室で待機させました。しかしその心中は複雑だったことでしょう。
「ありがとうございます。それではご返答お待ちします。その間、くれぐれも停戦協定の約束お願いします!」
『停戦は約束しよう。繰り返すが建国の件も含め魔法少女結社の要求は検討しよう。そのうえで我々人間の要求もいずれ出てこよう、その時はご協力願いたい』
「御尽力痛み入ります。私たち魔法少女は人間とのよい関係を望むだけです。では失礼します」

『ご苦労』とここでスピーカのスイッチが切れる音がしました。
と退出するマギカを桐島が敬礼で見送りました。

「マギカー! マギカー! マギカーあああああ!!」
「キララ! どうしたの……?」
「んっ、んぐんぐんぐんぐんぐんぐ、グスン!」
「…………どうしたの? 何があったの?」
「んぐんぐんぐん………………、ひぐ、ひぐ、ひぐううううっ!」
「キララ………」

再会し、ただ泣くばかりのキララを、マギカは抱きしめ、背中を撫で、そして何かを語る言葉を失いました。
その涙の激しさから、キララのとてつもなく深い悲しみと傷を理解したからでした。
背後のポピンもとても悲し気な目で二人を見守るばかりでした。

そんな彼女たちをモニタリングしながら、煙草を片手に犬神卿と、扇子で何気にその副流煙を仰ぐ晴明とがまた(良からぬ)話を始めました。
「エンダー・サルバトレ・マギカ……、フウ、呆気ないものだな、拍子抜けと云った処か、もう少し話がこじれるかと思ったが……、軍部の試算では魔法少女が本気で我々と戦争した場合、人類は3カ月で滅びるとのことではなかったのか?」
「マギカウイルス、ないしマギカDNA、またはマギカ細胞、それらを構成する新物質「マギカナイザーG1」の解析が済めば、例え全面戦争になったとしても我々の完勝かと、その暁にはご所望のマギカ本人の本体そのものを手中にし、後は煮るなり焼くなり、それとも生なり犬神卿のいかようにでも……(ニヤリ)」
「フフフ、何もかもがそんな簡単に事が済んでは興覚めもいいところだ。ゲームや恋愛もそうだが、もっとひと波乱というか、何か劇場型の盛り上がりが欲しいところだ。せっかくの人類史上かつてない異次元バトルなのだからな。希望としては泥まみれの血みどろで、エロあり、グロありの健全な青少年にふさわしくない、所謂良い子は見ちゃダメといった内容の、それもとにかく濃いヤツが。フー、後は数字がとれれば尚良しとするか……」
ここで晴明しばし暫し黙考した後、
「………茶番でよければ、清明に策アリ哉」
「ほう、楽しめそうですかな?」
「闘鶏か、虫バトルくらいには……、忍者処女衆、愉快な連中です」
「ふむ、あの面妖な者どもをぶつけるか! 魔少女×魔少女、確かにいい絵が期待できそうだな」
「願わくは……」


ここは巨城小原崎城の三の丸の櫓です。最上階でナハトが待機してました。
本日のナハトの任務は伝令及び通信係で、情報二局の今後の魔法少女に対する意思決定「交戦」、「監視」、「撤退」などを忍者が使う狼煙の色で仲間に合図する役目でした。

「あー、暇でござる、ヒマヒマヒマヒマヒマヒマ、ピザ、ピザ、ピザ! あーーーー、拙者ピザまんが食べたいでござる!」
とそんな彼女の所へ一人の男がやってきました。先の諸葛亮晴明でございます。晴明はキョロキョロと何か探し物をするように、
「晴明曰く、あれ、おかしいいなあ? たしかこの辺りにピザまんが転がってきたはずなんですが……」
「えっ、ピザまん? 本当でござるか? どこでござる?」
「んーーー、あの辺りかな?」
「え? え? どこどこどこ? ピザまん氏はどこでござる?」

とナハトが四つん這いで部屋の隅に注意を集中させてる隙に、清明はある悪さを行いました。
なんと狼煙の筒のラベルを手際よく張り替えてしまったのです。
それも「停戦」→「殲滅」と。
そして持参したピザまんを畳に置くと何食わぬ顔で姿をくらましたのでした。 

「やあっ! ピザまん氏見つけたでござるよ!」
「ピピピピピピピピピ!!」

ナハトがピザまんを手にとったのと、桐島からの通信が入ったのはほぼ同時でした。

「モグモグ、こちらピッツアーフォオ、ピッツアーフォオ!」
「ああ、ナハトさん、こちら桐島、伝令を頼む。本部の決定は「停戦」、狼煙は「停戦」で! みんなによろしく」
「モグモグ、はい! 「停戦」でござるな、了解でござるよ」
ナハトは複数の種類の狼煙の筒のラベルを見比べると、
「えっと、停戦はと……、あ、これでござるな」
と手にした筒は……。でございました。

して小原崎城から立ち上った狼煙をそれぞれ確認し、散会していた風魔忍者処女ちゃんたちはその意味する色に否応なくバイブス爆上げとあいなりました。

「殲滅」

魔法少女殲滅すべし、それが狼煙によるGOサインでした。

「ほおー」
「よっしゃあ!」
「へえ、意外」
「そうこなくっちゃだわさ!」

直ちにマナーモードから戦闘モードに移行した忍者処女衆「如月」、「寧」、「澪」、「夏」の4ニンは、餓狼のごとくヤバイ眼つきで駆け出しました。もはや狩りの始まりです。
それも敵のラスボスマギカが結界外を移動中とのこと、この大きな獲物の討ち取る千載一遇の好機でありましたので尚のことでした。

夕日が切ない帰り道、下校中の女学生の群れの中、手を繋いだマギカとキララは黙って帰路についていたのです。
周りの女学生たちは楽しそうにお喋りをし、時おり笑い声をあげておりました。
生前、学園内で孤立していた魔鬼伽には眩しすぎる光景でした。ただ少し前まで当たり前の女学生だったキララには何でもない当たり前の日常だったことでしょう。
そう考えると、マギカは現在深く傷ついているキララに対し申し訳ない気持ちで胸が締め付けられる気分でした。
「(犬神征治郎という者は、魔法少女や闇の眷属との共存共栄を望んでいない。むしろそれらを征服し支配しようとさえ考えている。人間がこの世界の食物連鎖の頂点にいることを譲らないであろう。思い上がったエゴと戦闘的な支配欲の権化のような男。娘のキララさえも躊躇なく捨てるような無慈悲な父親……、やはり人間とはまだまだ未熟な生命体なのだろうか……」
「(…………………………)」
深い悲しみを負ったキララにかける言葉もなく、あえて慰めの魔法なども使わずに、ただ人間だった頃の魔鬼伽ならそうしたであろう行いでただただキララの傍にいるマギカでした。
薄暗い坂道に差しかかると、女学生の姿も減り、同じ道には無口なセーラー服の女の子たちが前後に2人づついるのみでした。

その前後二組の距離感にただならぬ違和感を感じたマギカは、ふいにキララを守るように身体を寄せぎゅっ抱きしめました。
と同時に手前の二組の女学生が振り向き、後方の女学生もそれに呼応したかのように歩を停めました。

「フフフフ」
「クスクス」
「おほほ」
「にっひーん!」

「!?」
「マギカ、こ、こいつら……」
「どうしたペポ」

逢魔が刻の影法師のなかで不気味に嗤う黒いセーラー服の者たち。キララがその者たちに見覚えがあったのです。
そしてすでに身体が硬直し怯えるキララを感じ、マギカが自身の迂闊さを悔いると同時に、その者たちの正体を看破しました。

「この間の忍者の方のお仲間ですか!」

「さあね、だとしてはいそうですとでも言うと思うてか! ねえ、クソ魔法少女の親玉マギカちゃん!」
早速リーダーの如月がすっとぼけた返答をしました。

「マギカ行こうよ、相手にしちゃだめだよ。今は停戦中なんだから」
「そうね、……私たちはもう関係ありませんので失礼します。どうぞ道を開けてください」
マギカとキララは気分的に戦闘モードにはなれずに、できればこのまま穏便に立ち去りたいと考えました。
しかしこの時すでに4ニンの忍者処女衆はオリジナルの結界忍法「風魔縛」を用いてマギカらの移動をクモの巣のように張り巡らした結界で封じていたのです。
そして如月がマギカに真向から立ちはだかると、ここはガールズ調でこう問いました。
「ねえ、聞いていい? キスするときいちいちキスしていい? とか聞いてくる奴どう思う?」
「…………………」

「いやネ、何が言いたいかというと……」
如月はセーラー服の胸元から黒い塊、拳銃を取り出しました。と同時に、
「こういうこと!」
パン!

と至近距離でマギカの顔めがけ発砲したのです。
しかし、と同時に、
キン! ブシュウ!

余韻となった銃声のが周囲にこだまする中、とうの如月が顔半分から赤い血をこぼしながら膝から崩れたのです。
瞬間マギカは無意識のうちに物理バリアを形成(オートマチックの自己防衛機能)し、如月の銃弾を弾き返したのでした。
そしてその跳弾はそのまま如月の左目眼窩を貫通していたのでした。

「いったあーーーーーーーいっ!!」
「如ネエ!」
「大丈夫?」
「大変、眼エやられてるよ!」
「如ネエ! 如ネエ!」×3

忍者処女衆の大混乱で風魔縛は解かれ、刹那に紛れてマギカたちは「透明呪文 ケシミエーヌン」で姿を隠しました。
「ノンペたちが、停戦協定を破ったペポ!」
「ノンペたちは、いつもそう! やり方が汚いよ! やっぱり奴らは身も心も醜い下等生物だ! ノンペなんてこの地上にいちゃいけないんだよ! お父様だって! お父様だって!(泣)」
再び号泣のキララや憤慨するポピン、そして図らずも報復の凶弾を受けた敵将如月の痛哭をも慮り、もはや人間たちとの戦闘不可避といった不穏がよぎるマギカなのでした。
p328
智将晴明の奸計に停戦の盟は破られた。報復の報復は怨念の無限増幅か。魔少女たちのエログロ軍鑑再び御開帳!
スポンサーサイト