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「V-GIRLS日本五街道プロレス無宿暗夜行路道中」の続き。五街道は中山道の岐阜県岐阜市にやって来た「新宮真希」と「結城明日香」であった。地元岐阜県出身の先輩レスラー日向明美の紹介で、引退したレジェンドレスラー「バラバミアン曇川」を訪ね、ドサ周りの興行を組んでもらうのが目的であった。指定された市内歓楽街柳ケ瀬のはずれの「ニューDX マンハッタン座」に辿り着くと、とそこは誰が見ても昭和のストリプ劇場であった。これは日向に騙されたと思いつつも、一応、アポイントを取った曇川に面会してみることにした。当の曇川はプロレス引退後、この劇場をメインにエロよりの格闘技であるキャットファイトで活躍中とのこと。齢34歳とプロフィールに記載されているが、どうみても新宮のお母さん以上で、なんならおばあちゃん位はいってそうであった。今回のV-GIRLSへの依頼の内容はやはりキャットファイト出演であった。ここで新宮と結城はさすがに断って帰ろうとしたが、あまりの熱心な曇川のオファーと、己らのドサ周り行脚の懐具合を慮り、ここは「脱がない」を条件に、じゃんけんで負けた新宮が四角いリングならぬ丸いステージへ上がることとなった。――夕刻になり、ショーが開始されお客さんがぼちぼち入り始めた。むろんプロレスファンとは異なる人種が殆どであった。新宮の出番は前座なのですぐにやってきた。ストリップショー、則ち女性のヌード目当てのお客さんに格闘技要素はかなり需要が少ないかと思われたが、試合開始にあたり、意外と大きな拍手と変な声援で迎えられた。支配人がレフリーもどきを務め、バラバミアン曇川と新宮真希がコールされた。ファイトの合図で試合開始。現役選手とほぼお役御免のレジェンド曇川とでは、体の造りも、戦闘的な気合いも大違いで、勝負はほぼほぼ新宮勝利かと思えた。ただロープもなく、まして狭いステージでは使える技も限られ、組み技主体のまさしく絡み系の試合となった。実際新宮は寝技系のレパートリーの少なさに難ありで、片や対戦者の曇川は現役時代グラウンド技巧者であり、昔とった杵柄でこの現役ルーキー新宮に対抗した。試合はムーディなBGMと共にねっちこい組技寝技主体で流れていった。ここで脱ぎNGとの約束ではあったが、新宮は何かと水着に手をだしてくるヤラシイ曇川に切れ、思いっきりマジなけさぎり空手チョップをお見舞いした。バシン! 思わずド迫力の轟音炸裂に場内がどよめいた。そこで火がついたのか曇川も激しいチョップで反撃、そしてしばらく二人のチョップ合戦が続いた。そこからさらなるお互いのプロレスらしい技と技がステージ狭しと披露されていった。エロス見たさのお客さんはすっかり置いてけぼりであったが、中にはがぶり寄りでプロレス技に食い入るお客さんもいた。ロメロスペシャルで吊られる新宮はここで最大のピンチを迎えたが、そこはなんとか気力で耐え忍んだ。そして新宮の十八番、逆襲の逆エビ固めが極まると、腰痛持ちの曇川は「イタイイタイ、死ぬう!」と堪らずにギブアップ。「ピュー、ピュー、」と口笛混じりの喝采を受け新宮の勝利が称えられた。曇川「ふふっ、あんたはまだ若いから注目され輝いていられるけど、いずれアタシのように醜く老いていき、需要がなくなり寂しく生きていくことになるのよ! 逃げられない女の運命ってやつさ、それだけは覚悟しておくことね」と今更因縁めいた捨てゼリフ。これに対し、新宮「私はプロレスを続けている限り、輝き続ける。きっと、多分。この自信の根拠はたった今、バラバミアン曇川さん、あなたという先輩レスラーを見て思いました。曇川さんがこの試合で、後半からプロレスラーの顔をしたときはちゃんと輝いていたから。だから私も歳を取ってもプロレスラーでい続ける限り、輝いていられると思う。少なくとも自分の中ではいつまでも。もう一度言いますけど、今の曇川さんあなたが今、そうであるように……」 「ふん、……ありがとよ、アタイが今日輝いていたかどうかは別として、今日のファイト楽しかったよ、久しぶりにパンチの利いた技をぎょうさんもらったわよ、それで若い日のプロレスラー時代を思い出しちまってサ(笑) いつになくハッスルしちまったよ……」 すると会場からしみじみとした拍手が湧き起こった。二人は握手で幕を閉じた。――劇場を後に新宮は思った。人にはそれぞれに過去があり、栄光がある。人ばかりでなく、或いはこの場末の劇場、この昭和の街並みにも……。するとなんだか温かいようなほっこりしたような気持ちになり、ふいに親友の明日香に「ラーメンでも食べようぜ!」などと言ってもみた。
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